[3925-2] 谷川うさ子 2016/07/05(火)14:10 修正時間切れ
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《例》
A・貴様(音読み……きさま。尊い方。社会的に身分の高い人への呼びかけ方) 御前(音読み……おんまえ。神様の前)
B・貴様(訓読み……キサマ。ののしり言葉。相手を罵倒したり、見下したり、対等に扱うときの言い方) 御前(訓読み……オマエ、テメエ、オメエ。相手を支配したり、従属を強いるときの言い方)
漢語のもともとの読み方が「音読み」です。二つの語(漢字、ないし名詞)をくっつけて語の原義を説明します。 日本人の使う「訓読み」とは、ヤマトコトバ(和語)による解釈のことです。 この解釈は、表音(ア、イ、ウ、エ、オの発声音)がおこないます。
国語学者・大野晋は、次のように説明しています。
日本語の代名詞の特徴はコソアドの体系をもっていることである。 コ系……「ココ」「コッチ」「コナタ」……話し手がいるところ。自分の「ウチ」と見なすところを指す。 カ系……「カレ」「カシコ」「カナタ」……話し手にとってウチという輪の外のものを指す。 ア系……「アレ」「アソコ」「アナタ」「アッチ」……身の埒外(らちがい)にあるものを指す。忘れたもの、意外なこと、隠されているものを目にしたときに指す。 ソ系……「ソコ」「ソレ」「ソナタ」「ソチ」……相手と自分が共通に知っているものを指す。
日本人は、発声する「音」を、「コソアド言葉」として用いるとき「代名詞」(名詞の代わり)になるという説明です。 ものごとの名称(名詞)について発声するときは「訓読み」という読み方でその名称(名詞)を「解釈」すると説明されています。 「訓読み」とは、単なる読み方ではなくて、「貴様」とか「御前」のもともとの音読み(字義、語義)を「解釈する読み方である」ということです。 するとここでは、《例》の「A」のカテゴリーの「音読み」(もともとの字義、語義)は「無いもの」として扱われるということが発生します。 「貴様って、もともとは殿様に呼びかける言葉なんですよ」と言っても、「そんなことはない」と受け付けないか、拒否を当り前におこなうということです。 これは、「貴様」「御前」を概念としてみるとき「社会秩序」を「無い」とみなし、現実の中の社会秩序を「壊す」根拠になります。 これが古市憲寿(社会学者)にみる「N・I・S人間」(社員)の「性格」のつくられ方です。 そして、「東京台東区・女子高校生による母親殺害事件」(平成28年2月26日)に見る「母親を殺してはいけない」という倫理を破壊する根拠です。 「倫理」とは、家族、恋人、学校の友人、地域の人々と共生して生きていく、共存して生きていくための行動の秩序のことです。 山登りと同じで、力の弱い人、体力の未熟な人を助け合い、互いに支え合って、共同の関係の中で生活していくというときの「行動秩序」が倫理です。 母親を殺害した高1の長女は、「ソファで寝ている母親」の無防備な状態を襲って首を絞めているので、「倫理」(モラル)を破壊したことになるのです。
《例》にあげた「貴様」「御前」の日本語(ヤマトコトバ)の「訓読み」は、多くの日本人の「学習障害」の証拠にもなります。
「英語は、書かれた文字(単語)と発音との対応関係が複雑です。そこでディスレクシア(読字障害)が起こります。日常生活の中の話すこと、聞くことには何の問題もありません。 しかし、書かれた文、言葉を読むことに障害が起こります。 ギクシャクとつっかえて読む、読み飛ばす、デタラメに読むのがディスレクシア(読字障害)です」(井原裕、精神科医。平成28年6月・日刊ゲンダイ)。 |
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