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会社の経営者だから、…… 会社の管理職だから、…… 技能の資格をいくつも 持っているから…… だから、心の病気には ならないし、なってもいない、 と信じている人は多い。 日本人の仕事の能力とは、 ほとんどが 「日光サル軍団の サルの次郎」のモノマネと 同じである、と 証言するのが 吉本隆明の『母型論』 (贈与論、思潮社)なのだ。
●男性の相談の事例
わたしは経営者。人前でしゃべる言葉が出て来ない。ムリにしゃべると身体が震える。 (男性、48歳、会社経営者。匿名、再構成)
わたしは会社の経営をおこなっています。 従業員もいます。 経営を始めて10年近くなります。 会社は不動産、建築が事業内容です。業績は順調です。 わたしの悩みは、人前でしゃべることができない、声が出なくなる、ムリにしゃべると身体もガタガタ震えてくることです。 わたしは、社員の前とか、家族の前では驚くほどよくしゃべります。話題豊富と思われています。 人前とは、ゴルフコンペのスピーチ、結婚式のスピーチ、祝いごとの席で自己紹介とか祝いの辞を話すことなどです。 知り合いの神経科の医師からリラックスできる薬を処方してもらいました。 薬を飲むと、こんどは頭がもうろうとして息苦しくなってしゃべるどころではなくなります。
●本物の有能な経営者だけが知っている「有能さ」とは?
ポルソナーレは、ハンナ・アーレントの『人間の条件』(ちくま学芸文庫)をテクストにして『谷川うさ子哲学入門』(レジュメ版)を特別講座としてレクチュアしました。 この中に、「労働」「仕事」(工作)についての哲学上の説明があります。 労働についていうと、それは「始まり」「労働過程」「終わり……製品・生産物」の三つの段階があると説明されています。
経営者(支配する人)とは「始まり」と「終わり」を支配する人のことであると説明されています。 労働とは、「労働過程」の中に従事することです。ここは、ただ身体運動だけを憶えて反復して動かすだけの世界です。だから共同性とか共同体といった他の人について思考する言葉は無い(無世界性の世界)であるとハンナ・アーレントは説明しています。 |