みなさん、こんにちは。
全日本カウンセラー協会・ポルソナーレの谷川うさ子です。
●分裂病は「統合失調症」か?
平成21年9月19日の日本経済新聞に「統合失調症の母を描いたマンガ家、中村ユキ氏(36)」という記事が載っていました。記事の内容は、こんなふうです。
- 中村ユキはマンガ家だ。昨年11月に「コミックエッセー」に「わが家の母はビョーキです」というマンガを出版した。
- 2007年ごろ、有名人が「うつ病」を公表するなどの頃、夫に「統合失調症のことも知ってほしい」と話した。夫は、「マンガ家だから、自分で描けばいい」と後押しした。
- 中村ユキの母親(59歳)は、中村ユキが4歳の頃に「幻聴の症状」があらわれた。「夫のギャンブル」に苦しんだことが契機になった。
- 2002年に「統合失調症が脳の病気」「脳機能の障害」であることを知り、「母親への対処の仕方」が分かってきた。
- 「病気のことを早く知っていれば母の症状は改善されたかもしれない、と後悔がある。早期回復すれば普通に暮らせる病気だ。身近な病気だ。もっと関心をもってほしい」(中村ユキ)。
- 日経のコメント。
1.「統合失調症」は、脳機能の障害だ。10代、20代に発症することが多い。
「幻覚」「幻聴」「思考の混乱」が初期の症状だ。
「原因は不明」だ。
2.
厚生労働省は「推定患者」は「人口の1%」にのぼる、という。
ここでは、「精神分裂病」が「統合失調症」といいかえられています。なぜ、「精神分裂病」が「統合失調症」という記号概念に言い換えられたのでしょうか。
『こころの科学』(105・平成10年3月号。日本評論社・刊)では、「病名と告知を考える」という企画テーマの特集でそのいきさつが語られています。
●「統合失調症」賛成派
●青木省三(川崎医科大学精神科学教室教授)
- 「日本精神神経学会」は「人格を否定するような響きをもつ精神分裂病という病名を、統合失調症に変更する」と発表した。
- 病名の告知は、本来は、「患者自身の情報を知る権利」である。「当人と家族にとって、どうにもならないという絶望を言い渡される宣告である」ことも少なくない。
- 心の病気は、意思の弱さ、心の弱さが原因とされている。当の本人の責任が問われやすい。
- 慢性の精神分裂病は、「やる気のなさ」のように見える。
- だが、その人の「意志」や「性格」が原因で起こっているのではなくて「病気によって起こっている」。
このことを説明する必要がある。
だが、このまわりの人の言う「やる気がない」「横着をしている」などが「全くの誤り」か?というとそうでもない。
「自分の病気は治らない」と思えば、絶望して「病気は本当に治らなくなる」ことがあるからだ。
- 「精神分裂病」の「発病の初期」は、病名や説明は患者を脅かすものにしかならないことが多い。
そこで「疲労の蓄積」と説明する。すると「治療への合意」に至る。
- 「このようなやり方はおかしい」という人もいるかもしれない。
これは、「がんの告知」をされたことを考えればよく理解できるのではないか。「がんの告知」は「それまでの日常の世界から非日常の世界へと投げ出される危険性がある」のではないか。
- 「インフォームド・コンセント」とは、「治療するもの」と「されるもの」ができる限り対等な立場でそれぞれの責任を果そうとする「治療を共同作業」とするためのものではないか。
「精神分裂病」を「統合失調症」とか変えることには、こういう意義がある。
●「統合失調症」に異議あり
●東京武蔵野病院・江口重彦
- 「精神分裂病」を「統合失調症」と名称を変えることは、この病名告知が当事者を失意に追いこまないことが配慮されている。
- 「家族会」からの要請を受けた「日本精神医学会」は、一般市民にアンケートを募集した。有効回答数「2,368」のうち「1,010」が「統合失調症」と回答した、というものだ。この「統合失調症」は、「病名の診断書」でも「診断症状名」でも「責任病巣診断書」でもなく、「本態」を何も説明しない「名称」だということだ。
- 昨今の銀行の合併で生じる問題を「統合失調症」と呼んでいる。すると、精神分裂病を「システム障害」と呼び変えても何らの問題がないほど実質的な意味をもたない。
- 私は、今日の精神医療をおおっているニュートラルな「観察言語」ややわらかい表現による「婉曲語法」の流行に危機感を抱いている。
「DSM‐Ⅳ」以降の「精神障害」の名称変更や、一連の「呼称変更」はその典型である。
- こうした「ラベルの変更」で、「隔離」「拘束」「強制治療」「慢性化」という問題が生み出されている。さらに、精神病者の犯罪といったネガティヴな側面がある。
精神分裂病の問題は、医療ではなく「福祉の問題だ」と言い換えられている。アメリカ型医療が理想化されて、機械的な治療や電撃ショック療法がおこなわれているが、これを精神医療の貧困と考えている。
- 「トーリー」(Torrey. E. F)の著書、『ニューヨーク・タイムズ』を読むと、アメリカの精神医療は機能不全をきたしている。
病院から出された精神病者は、数万人の単位でホームレスと拘置生活の間を行き来している。「医療抜き」の放置状態に置かれている。
「社会復帰施設」のはずのニューヨーク市の「アドルトホーム」の惨状が、三日連続の署名記事で紹介されている。
アメリカの「精神医療」そのものが解体している。
- アメリカは、「精神医学の教科書」「診断マニュアル」「主要雑誌」のほとんどを独占して世界各地に「輸出」している。しかし、そのアメリカで精神医療は、ほとんど機能していないように見える。表層で流通している言語とその理論と現実が大きく異なっている。
- 統合失調症」という名称は、2002年に、日本で開催される「世界精神医学会」で宣告されるという。だが、日本の精神医療のリアルな現実、現状への無関心に、私は疑問をもつ。
「精神病院」が「精神科病院」に変わった。これは現状を覆い隠すアメリカと同じイメージ戦略いがいのなにものでもないだろう。
●精神医学史から見た定義
■「精神分裂病」がなぜ「統合失調症」という記号概念に変えられたのか?の背景と問題点、そして「動機」にかんするところをご紹介しました。
「精神分裂病」は、簡単にいうと、「目、耳、手、指」などの五官覚の知覚神経が「麻痺・マヒ」して廃用萎縮を起こす、という病気です。目、耳、手、指は、「事物」と関わって接触するという「行動」をあらわすと同時に「言語の学習や習得、長期記憶」にも関わる器官です。その目、耳、手、指の知覚神経が正常に働かなくなる、という病気が「精神分裂病」です。だから、「精神医学史」を見ると、「進行していく麻痺」とか「自閉にともなって離人症が深まる病気」というように記述されています。
何が原因か?といえば、こうです。
- 「連想という思考のイメージによって弛緩をつくり出す病気だ」(E・ブロイラー)
- 「その時、その時代の最も高度な知性の言葉が曖昧であるか、もしくは、曖昧にしか憶えていないことが、分裂病の原因だ」(ドイツ、H・ミュラー)
●日本人の精神分裂病とはこういうものです
日本人の分裂病とは、どういうものでしょうか。
昭和24年に発表された村上仁の「分裂病の変遷(へんせん)」の臨床観察を見ると、日本人の分裂病は、「第一期」「第二期」「第三期」と三つのエポックをたどります。
第一期の分裂病は、「離人症」と「強迫観念」「恐怖症」「パラノイア」などです。典型例はこうです。
離人症…「自分のことだけを一方的に話す(バーバリズム)」
強迫観念…「電話が怖い。電話に出ない」
マイナス行動(負の行動)…「約束の時間に必ず遅れる」
パラノイアの言葉、行動…「恋愛依存症、共依存症」
躁うつ病のヒステリー症…「不安や抑うつを動機にして話しはじめると話が止まらない」
心気症…「まじない、占いの言葉を信じて言葉のとおりの行動をする」
これらの原因は、「H・ミュラー」のいう「その時代、社会の最も知性の高い言葉との不適合にある」とすると、日本人は、「日本語」そのものを曖昧に憶えていることにあります。
●日本人の対人意識が日本語の文法をつくった
日本人は、人間関係を中心に、ものごとを、自分の内(ウチ)のものか、外(ソト)のものか?を区別します。
これは、人間関係の「秩序」であると同時に、日本語(和語、やまとことば)の文法秩序にもなっています。これを説明しているのが国語学者の大野晋です。そして傍証的な証拠を社会言語学者の鈴木孝夫が証言しています。
分裂病の「第一期」の症状の例をごらんいただいて、これがなぜ分裂病なのか?と思う人は多いでしょう。
全て「主観」で成り立っていることが病気なのです。日本語は、「主観を表現する言葉」です。「主観でなぜ悪い?」とお思いでしょうか。
「主観」のもたらす実害は、こうです。
- 痴呆に行きつく。
- 社会の中での行動が止まる。仕事の中にいられなくなる。
- 口、耳、目、指などの五官覚の器官を中心に、脚、腰、内臓の機能が止まる。
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