ポルソナーレ 新・脳の働きと心の世界 「個人べつの症例とカウンセリング」 その2 |
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ポルソナーレには、この30年間くらい、たくさんの心のトラブルにかんするご相談をいただいています。 そこで、日本人の心の病いとはどういうものか? その脳の働き方とは、どういうものか? このインターネットの時代で、ひとりひとりの心の世界はどうなっているのか? を個別の相談に即してのカウンセリングをご紹介します。 ※ なお、ご紹介する個別のご相談はいくつかの相談を合成しています。ある特定の個人とは無関係です。住所、年齢、職業もつくり変えられています。連載に先立ってあらかじめお断りいたします。 |
No.10 「母親をどうしても憎む私」へのイメージ療法 |
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■ 相談の事例 「私は高校生の女の子です。いつも母親とぶつかってケンカします。許せないという気持ちと憎む気持ちがいっぱいです」(下川恵理。高3、女子。北海道函館市時佐町)。 (お知らせ・人物は仮名です。特定の人物、地域、団体とは無関係です) ■ 相談の内容 ◎ ポルソナーレの指示性のカウンセリング ● ポルソナーレのカウンセリングへのご招待 みなさんは、高校3年生の相談者の女の子の相談のあらましを読んで、どういう感想をもたれるでしょうか。おそらく、相談の内容をイメージして二つの印象をおもちになられることでしょう。一つは、「日記を黙って読むことはいけないことなので、娘の怒りもよく分かるよな」というものでしょう。もう一つは、「娘は、男友だちをつくったり恋人をつくることに関心があるようだ。学校の勉強とか、これからの人生に役に立つ知的な活動や社会的な能力は後回しにしている。母親にやりこめられてばかりいる父親を頼りにしているふうでもないし、母親への反撥を動機にして恋愛の道をまっしぐらに突っ走っていきそうだぞ」という印象でしょう。 ● 「イメージ療法」こそが日本人に残された最後の救出方法 「イメージ療法」は、この二つの「意思」、二つの「自分」のせめぎ合いをどんなふうに、どちらを支援するか?が療法のテーマになるのです。あなたは、どちらの人格(もうひとりの自分)を支援すべきであると考えますか? ● イメージ療法・ステップ1 まず、「母親が日記を手に取って読み、性にはタブーがあるのよ!! 高校生の身分でそういうことに興味をもちすぎるなんて、一体、何を考えているのよ、とお説教をしている場面を思い浮べましょう。そこには、あなた自身が当事者として立っています」と指示します。これが指示の1です。 ● イメージ療法 回答・1 「場面はとても明るいです。母親の顔が大きく見えます。怒って、憎んでいるような形相です。私の身体は、ヒミツを見つけられてとても驚いて、恥ずかしさと怒りで身体がふるえています。バカにされているようでミジメな気分でいっぱいです。とても荒々しい感情がどんどんこみ上げてきて、暴力をふるいたい気分です」(下川恵理さんの答え)。 ● 日本人の身近な人へ病理を感染させるしくみ あなたご自身もきっとご経験がおありになるにちがいありません。たとえば恋人、あるいは夫と妻の中で、10数年来の付き合いのある友人、そしてきょうだいなどから「軽い批判」や「ケチをつけられる」などという経験です。 ● 脳の働き方が痴呆や脳梗塞をつくるメカニズムとはこういうものです 自律神経がなぜ、過緊張の状態をつくるのかといいますと、脳の防衛機序の働き方は、必ず逃避先を用意するからです。逃亡先といってもいいのです。それは、脳幹に「A9神経」というドーパミンを分泌させる神経伝達の回路が起動します。ふだんは、「A6神経」とセットになって「A10神経」がドーパミンを分泌します。「A10神経」は「右脳・聴覚野」にドーパミンという脳内麻薬を分泌させます。おもに言葉によるイメージが思い浮んだ時に分泌するのです。 ● あなたの脳が「逃避・逃亡」に向かって誘いこまれるメカニズム この中隔核がある脳の部位は「トカゲの脳」とも呼ばれています。「うまい話にダマされる」とか「短期利益を欲して、株のデイトレードをくりかえす」というのは、「トカゲの脳」で「幸福のボタン押し」がひんぱんにくりかえされているからなのです。この「トカゲの脳」に血流が集中して集まると自律神経の交感神経が過緊張状態になるのです。すると、「心拍が低下する」とか「無呼吸症になる」とか「胃が痛くなる」などの過緊張にともなう症状がひきおこされます。これが自律神経の症状です。すると、脳の中の「血流」は、「トカゲの脳」ばかりに集まることに気がつきませんか。 ● 親がつくる子どもの「社会不適応」のしくみを教えます 下川恵理さんは、「恋人と別れた」と書いています。これは、「左脳・前頭葉」が全く働かなくなったためなのです。高校生や大学生の恋愛は、「学校の勉強がなかなかうまくいかない。学校という社会性の世界から孤立しそうだ」という動機がおこなわせるのです。学校の勉強は左脳のブローカー言語野で憶えますが、暗記中心の教育の中では、憶えた教科書の言葉の意味を「右脳・ブローカー言語野の3分の2の記憶のゾーン」にイメージをつくりません。イメージがつくれないとは、「A10神経」がドーパミンを分泌させないということです。すると、「A6神経」の神経伝達物質のノルアドレナリンの作用で、全身が緊張状態になり、学校の勉強がそこで止まります。このような事態を防ぐために「恋愛」による快感物質のドーパミンの分泌が欲求されるのです。下川さんは「恋愛」を止められたので自動的に「学校の勉強」との関わりも形ばかりのものになってしまったのでした。すると、「恋愛をする動機」も失ったのです。 ● イメージ療法・ステップ2 下川恵理さんへの「イメージ療法」は、こういう脳の働きの事情を分かったうえで、「母親の表情とその日記をもつ手のクローズ・アップ」を後退させることがテーマになります。「母親を憎み、憎悪して、ひょっとして殺すかもしれない」という「もうひとりの自分」(人格)が、脳の働きをコントロールして支配することに制限を加える「イメージ療法」です。次のように「指示」します。 ● イメージ療法・ステップ3 そこで、下川恵理さんへの「イメージ療法」は、さらに次のように指示されます。 ● 日本人の脳の働き方を変えるにはこんな工夫とテクニックが必要です 「自分を枠の中に入れて白黒にしましょう。そして、また枠の外に出して自分をカラーにします。これを合計、3回くりかえして、最後は、自分を枠の中に入れて白黒にしてください」。 ● 過食症・拒食症を治すイメージ療法 「過食症」を治す時は、「食べ物」を白黒にする、手を伸ばした「自分の手」を白黒にするというテクニックとして用いても効果は同じです。ちなみに「拒食症」の場合は、過食症と正反対です。その人のイメージでは、「食べない自分がクローズ・アップされている」「食べ物が白黒」になっています。そこでこの記憶のイメージを逆転させることで拒食症が治るのです。 ● イメージ療法・ステップ4 「次に、右の上の枠つきの白黒の画面を、もっと上の方に遠ざけてください。ちょうど、空にタコをあげたときのようにどんどん高く遠ざけて小さくしましょう。そして、枠のついている白黒の画面をバターが溶けるようにボンヤリとにじませてください。かすかにしか見えない、というようにしてください」。 ● イメージ療法・ステップ5 これで下川恵理さんへのイメージ療法は完成したのか?というと、まだ完全ではありません。「殺したい」「憎い」という言葉がありました。これは、視覚のイメージではありません。「聴覚」です。人間は、コトバによって意思をあらわします。「殺したい」「憎い」というコトバをあらわす意思(主体)がまだ脳の中に形成されています。 ● あなたの脳の中の「もうひとりの自分」との対話の仕方のイメージ療法 すると、「母親はキライだ。顔も見たくない。ぜったいに許せない」などの声が聞こえます、という回答になります。 ● 誰でも体感できるこの劇的な効果 ここまできて、「テスト・チェック」をおこないます。プログラムはこれで終了したからです。指示はこんなぐあいです。 |
No.11 赤面、人の目が気になる、過食と拒食、人から悪く言われている、などいくつもの悩みをかかえている私の脳の働きはどうなっているのでしょうか? |
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■ 相談の事例 ■ 相談の内容 中学一年生のころ、クラスの女の子から「あんたのことキライやいうとる男の子がおるんよ」と言われたことがきっかけでした。ショックでした。 高校になっても「ガス症」は治りませんでした。それと、突然、過食症になったのです。ものすごくガマンできなくて夜に、食べ物を探してお腹いっぱいに食べたのです。食べてから、トイレで吐きました。一年間くらい食べては吐く、ということをくりかえしました。お菓子を食べれば、ガマンできなくて10袋くらいいっぺんに食べて、それから吐くのです。 あるとき、インターネットで誰かが、誰かの悪口を書き込みしているのを見ました。すると、私のことを悪く言われているのではないかとすごく気になりはじめたのです。肩は痛くなるし、頭がしびれているような変な感じになりました。気になると夜も眠れません。勉強もできなくなりました。 ひとりで家にいるとき、クラスの男の子から「変なやつだ」と思われていないか?と想像していたら、顔が赤くなりました。一歩、家の外に出ると周りの人の視線が気になりました。すれ違う人が「私のことを見ている」と思ってしまうのです。 家でも、母とおばが話をしていると、とても気になるのです。「私のことを話しているのではないか?」と少し離れた所でじっと隠れてこっそりと何を話しているのか?と聞いていることもあります。 私は、食べることがいけないことのように思えて吐いていました。身体が細くなったらみんな私の悪口を言わないだろうと思っていました。でも、今は、誰と話しても赤面するので自信がなくなり、トイレに行けばやせられると思ってしょっちゅうトイレに行っています。男子とちょっとだけ話すと「私のこと、好きなのかしら」と瞬間的に考えてしまいます。「でも変な奴だと思われていないか」と思うと身体がふるえてくるのです。髪の毛を長くして顔を見られないようにしているのですが、「見られている」ようで気になってしかたがありません。 女子と話しても、ちょっと明るくて優しそうな子には打ちとけるのですが、こんどは、その子から変に思われていないか?と気になります。するとその親しい子ともしゃべれなくなり、下を向いて沈黙します。このときも「変に思われていないか」とそればっかりを気にしているのです。 ポルソナーレのゼミのニューズレターを友だちに読ませてもらったら、脳の働き方が問題だと書いてありました。病院で安定剤とかもらいましたが、全然治らないので止めました。大学に行っても、自分に自信がないので行きたくないと思っています。私の脳の働き方はどうなっていますか?学校に行けない、仕事にも行けなくて家にいる人が多いって聞きますが、私は、家にいてもいても立ってもいられない気持ちになります。家にいれば安心、という人がうらやましくてしかたがありません。 ◎ ポルソナーレの指示性のカウンセリング 今から約10年くらい前までは、このような心身の不安は、少しずつ治っていく道をたどっていました。ここでご紹介している相談者は、今、高校生ですから、こんなふうに自分の心身の悩みがまだ言葉に言いあらわせているのです。高校を卒業して大学生になるとか、もしくは就職して社会人になるなどの「社会性の世界」へ入っていくという現実の道が意識されているからです。 ● 「A9神経」にスイッチすると「トカゲの脳・人格」に変わります 人間の脳は、「快感報酬」を原則にして働いています。快感とは、ドーパミン分泌のことです。通常は、「A10神経」によって右脳・前頭葉に分泌されます。「A6神経」が左脳の前頭葉から頭頂葉や側頭葉、後頭葉の全域で働いて、現実とのかかわりをなり立たせて、その成り立ちの報酬として「A10神経」からドーパミンを分泌させるのです。相談者の女性は、「大学に行く」とか、「仕事の世界に行く」などの現実参加の道を歩いているので、「A10神経」が働いていて、「A10神経」もドーパミンを出すというように働いています。 しかし、お気づきのように、相談者の女性は、「あの男の子は、私のことが好きなのかしら」とか「拒食症」が治って「食べること」のみに集中する「過食症」に変化しています。 ● 自分の気持ちを安心させるものは、人とのかかわりを止めるものか?それとも、密度を深めるものか? 人は、この楽しみさえあれば辛くてもがんばれる、というものをもって自分の心の支えにします。音楽が好きな人は「音楽を心の支え」にするでしょう。文学を愛好する人は、文学を心の拠り所にするかもしれません。このような場合も「右脳・ブローカーの3分の1」で「ヒモ」の記憶になります。「気持ちの安心の経路」でいうと「気分」の経路に当ります。また、「恋人」や「友人との語らい」「学的な知性」を橋渡しにしての仲間とのコミュニケーションは、「心情」の経路をとおして気持ちを安心させます。 ● 「トカゲの脳・人格」への転落かどうか?の判定の基準とはこういうものです この快感があるから「人との関わりを止められる」「この気持ちの満足があるから、社会参加などの行動を止めても危機感を感じない」「この快美感があるから、話しかけたり、対話したり、出かけたりするという行動を止めても孤立感を感じない」というものが「トカゲの脳・人格」を主体とする脳の働き方といえるものなのです。相談者の女性は、「父親不在という社会性の欠如」(パーソナリティの欠如)、「女性ばかりの生活環境の中で、社会意識の柱の秩序意識の欠如」(パーソナリティの不全)の中で、なお、インターネットやケータイによって「ものごとをクローズ・アップさせて視覚のイメージにする」という「右脳・ブローカー言語野の3分の1の記憶のゾーン」のみを働かせることを強化させています。これが「トカゲの脳・人格」をよみがえらせるというように、触覚の認知のための「ヒモ」の記憶の対象を招き寄せ、強化させているのです。 ● パーソナリティの発達のための学習ができなくなると、誰でも「トカゲの脳」(人格)に支配される 「パーソナリティ」とは、「左脳・聴覚野」でつくられて発達させられる「社会的な人格」のことです。 |
No.12 私は、心身の症状を抱えている看護婦です。 お見合いで婚約中ですが、打ち明けるべきかどうかで悩んでいます。 私は、このまま結婚してもいいのでしょうか? |
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■ 相談の事例 ◎ 相談の内容 婚約してからしばらくして、私は自分の脈が飛ぶことに気がつきました。脈が飛ぶというのは分かりづらいかもしれませんが、4回正常にトントントンと打ち、一回休んで、トントントンと3回が正常で、ここで一回休んで、トン、というような脈の打ち方です。少し運動をすると、トン休み、トン休み、トントントン、休み、というように脈がそろわないのです。どういうふうに分かるのかというと首の喉のあたりで、脈が飛ぶときは脈の打ち方が強くなるのでドキッとするので分かります。胸が詰まった感じがして、ドクッと大きく脈打ちするのです。いつも一分間に5,6回、多いときは10回くらい脈が飛びます。ふだんは一分間に、2,3回飛んでいます。一日の脈拍数は10万回くらいで、脈が3000回くらい飛んでいることになります。寝ているときや、安静にしているときは飛んでいる回数も少ないようです。 自律神経の問題で、心筋梗塞とか動脈硬化による不整脈ではないという医師の話です。スポーツをしてもよく、結婚生活に支障がでるというものでもないということです。仕事の夜勤にもさしつかえはないと言います。脈が飛んでいるから夜勤の仕事がしんどくなることはなく、しんどいとするとそれは、仕事じたいのためだとも言います。薬は、飲んでも飲まなくてもいいが、副作用を気にするなら飲まなくてもいいとつけくわえます。 しかし、不快感はあります。この不快感は経験してみないと説明がつかないものです。 母親は、「みんな、そういうことは結婚してしまってから打ち明けるものだ。結婚したら、受け容れるしかないじゃないか。結婚したら、その前に病気でも介護でも、看護でもせざるをえないんや。精神に問題があっても同じやろ」と言います。「そういうことは、お互いさまなんやで」とも言います。 ◎ ポルソナーレの指示性のカウンセリング この相談では、恋愛や結婚についての二とおりの考え方が交錯しています。一つは、「結婚とは、恋愛の過程をふくめて心の関係が重要だ」とするものです。相談者の女性がこの考え方の立場に立っています。 ● 母親と密着しすぎると、心臓と脳にダメージをつくっていく ここでは、「結婚」について、娘と母親の両方の女性のものの考え方がぶつかって錯綜しています。娘の考えとは、自律神経が原因で心身症ふうの不整脈がひんぱんに起こるという欠陥が自分にはある、と負い目を背負っているというものです。もともとは、母子関係があまりにも密着しているので、女性としての気持ちの世界の能力が正しく発達していないので、ストレスにたいして抵抗力がなくなり、ハイパーリラックスの状態に陥っているというところに不整脈の原因があります。この女性以外の人ならば、ちょっとしたことで緊張しやすくて、すぐにドキドキする、こわいイメージが思い浮んで呼吸困難になる、という症状になるのかもしれません。パニック障害や強迫性障害の症状と共通しています。すると、現在の日本では、大なり小なり、この相談者の女性と同じような症状を抱えている人は多いということに気づかれるでしょう。 ● 自分の秘密を、恋愛の相手に打ち明けるべきか?どうか? ここでは、何が問題になるのでしょうか? ● 「結婚してしまえば、相手の男は、何でも受け容れざるをえない」という母親の考えは正しいか? 母親が「いったん結婚すれば、相手は、どんな病状でも受け容れざるをえなくなる」と言うのは、本当のことでしょうか?これは、本当のことなのです。「右脳・聴覚野」とは、擬似血縁関係の相手(自分が、距離がないとみなした相手)をクローズ・アップして大きく見る、と了解しています。このクローズ・アップは、「右脳・ウェルニッケ言語野」の触覚の認知で生理的身体と同化します。ちょうど「そうじ器のコロコロ」にゴミがくっつくような感じの同化です。ここには、会話とか対話のコミュニケーションはありません。 ● パーソナリティとの関係を喪うと、自分は非社会性の世界へと沈んでいくという心配が悩みの核心です では、この相談者は、性の関係に入ることをためらい、自分の欠陥の症状を打ち明けることを、なぜためらっているのでしょうか。 「もし、相手に、パーソナリティという人格がしっかり確立されていなければ、相手の男性は、キャラクターという右手と左手の関係だけを強いてくるだろう。 |
No.13 「私は対人緊張がひどくなって、大学も、仕事も辛くなっています。 死ぬしかないと思っていますが、こんな私にも未来はありますか?」 (23歳。女性。大学生) |
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■ 相談の事例 ◎ 相談の内容 私も『続・性格と心の世界』のMOさんふうに自分の状態を箇条書きにしてまとめてみます。
◎ ポルソナーレの指示性のカウンセリング この相談者の女性の相談の内容には、家族構成から生育歴の中の母親との関わりや、父親との関係がくわしく説明されています。その内容は省略しています。小学5年生の頃までは好きなアニメやマンガと楽しくかかわっていて、人間関係に悩むことは全くなかった、とのべられています。事態が変わったのは中学2年生になってからだ、ということです。 いつものように、数人の友人の集まりの中に加わって話しかけようとしたとき、なぜか、頭の中がまっ白になり、言葉が思い浮ばなくなったことがそもそもの始まりだった、ということです。 みなさまに注目していただきたいのは、この相談者の脳の働き方です。人と向かい合い、会話をしようと思っている局面で、「しゃべらなくては!」と意思している主体と、「あっ、何をしゃべればいいのか?」と困惑している意思の主体の二つが同時に並んで並列して立っていることがよくお分りでしょう。 お友だちと会話したり、学校に行って勉強する、ということを意思する主体を「パーソナリティ」といいます。社会的な人格のことです。デカルトは、「理性を主体とする意思だ」とのべています。 いっぽう、「人の言葉が分からない」「命じられた仕事のコトバを忘れた」「もう辛いからこの場から逃げ出さなくっちゃ」と意思する主体を「キャラクター」といいます。デカルトは、視覚や聴覚を中心とする「感覚」を主体とする意思だと定義しています。脳の働きで感覚をつかさどるのは「右脳」です。「右脳」の聴覚野に「キャラクター」という人格はつくられているのです。 「キャラクター」は、視覚と聴覚の感覚がつくる人格です。「この人はこわい」「学校に行くのは今日もやめよう」というように考えるのは「視覚の中枢神経」ではありません。 「おら、おら、あっちに行け」という追いやりは、「友人」「学校」「学校の勉強」「仕事を命じる人」との関係性の糸をパッと離した瞬間に起こっています。「関係性」という意識がつくるのが「パーソナリティ」なのです。この「関係性」という意識が乏しくなり、稀薄になると、「左脳・聴覚野」に出かけていって「コトバを借りてくる」ということもなくなります。このなくなる、ということの最初のあらわれが「人が怖い」「嫌だ」「辛い」といったワンパターンの言葉のくりかえしです。ワンパターンの行動がくりかえされます。「行かない」「避ける」「放置する」「忘れる」「ミスを起こす」などがワンパターンの行動です。これを「常同症」といいます。ふつう、「強迫性障害」ともいわれています。 この常同症が起っているときが「人格」の変わり目です。「コトバのない人格」に変質します。「右脳・ウェルニッケ言語野」の触覚の認知を意思の主体にした「人格」に変わります。ここが「トカゲの脳・人格」なのです。ここまで「人格」が変質すると、「死ぬしかない」と思うようになります。人間は、デカルトのいうように「理性」(パーソナリティ)をこわしては生きてはいけなくなるからなのです。 この相談者の女性は、ポルソナーレの「イメージ療法」で脳の働き方を変えて「パーソナリティ」を回復させました。 |
No.14 「私は、外出しようとするとトイレに行きたくなります。いつまでもトイレに入りっぱなしになっています。外出先でもトイレに入って、いつ出ればいいのか分かりません。私の脳の働きは一生このままでしょうか?」(43歳。女性。主婦) |
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■ 相談の事例 「私は、高校の頃からひんぱんにトイレに行くようになりました。トイレにいったん入ったら、いつまたトイレに入りたくなるか?が心配で自信をもてるまでトイレに座りつづけます。薬を飲んでも治りません。私は、なぜこんなにもバカげたことが止められないのでしょうか?」 ◎ 相談の内容 私の悩みは、人から見るとたいしたことはないと思われるかもしれません。じじつ、夫に話してもそんなふうに言われます。 私は、どこかへ出かけようとすると、神経が働いてお腹の具合が悪くなります。痛くなって、下痢みたいになります。とくに、仕事、病院、子どもの学校などに行くときは、出かける直前に気持ちも悪くなるのです。 出かけることが決まっているときは、何回もトイレに行きます。いったんトイレに入るとなかなか出てこれません。これでトイレに行きたくはならないという自信がなく、きまりもつけられず、出かける時間のギリギリまでトイレの中にじっと座りつづけています。 ことの始まりは高校2年生のときです。 こんなことをくりかえしてはいけない、体のためにもよくない、体がおかしくなってしまうと思い、何度も止めようとしました。でも、外出の場面になると止めることができません。トイレに行けない場所があるかもしれない、いったんトイレに入ったらなかなか出てこれなくなると困る、と思いトイレに行きます。 でも、行った先で緊張するとやはりトイレに行きたくなります。トイレに行って、もう出ないというまで無理に出してしまいます。でも、まだ出るような気がしてくるのです。もうだいじょうぶと思い、きまりがつけられません。早くトイレから出なくてはと焦ります。もうどうしていいか分からなくなります。 最初の頃は、トイレに行くのは尿を出したいからでした。しかも、空になるほど何回も無理に出していました。 最近は、身体の具合も悪くなっています。 痛くて、辛くて、悲しくてたまりません。いつになったら抜け出せるのでしょうか。このまま治らないのではないか、この痛みとともに生きていかねばならないのかと思うと、あまりにも辛くて生きていく希望も自信もなくなります。私よりももっともっと辛く苦しい思いをしている人がいるということは分かりますが、今の私には何のなぐさめにもなりません。 ■ ポルソナーレの指示性のカウンセリング この女性の相談者が、最初にトイレに行きたいという生理的な欲求をガマンできなかった場面は、高校2年生のときの「卒業式」です。高校3年生の先輩の卒業式でした。どうしてもガマンできないと思い、式を抜け出します。これは、「社会性の世界」の「知的な形式」との関わりを切断したという意味をもつのです。 なんどもなんどもトイレに行く、くりかえしてトイレに居つづける、というのは初めにお話した「ピック病」の症状の一つによく似ています。「ピック病」というのは、「学習性の絶望」とも呼ばれています。びっくりしたときに身体が凍りつき、固まって動かないといった最も原始的な反応のことです。人によって、何にたいして「ピック病」の症状をあらわすかはそれぞれですが、「一瞬にして超リラックス状態を求める」という行動パターンが共通しています。 くわしい脳の中のメカニズムは、なんどもポルソナーレのゼミの中で説明していますので、ここでは、簡単に脳の働き方をお話します。人間が、理性を働かせて、なお知的に活動するというのは、「前頭葉」がつねに働いている状態のことです。「A6神経」が前頭葉で正常に働いています。 今、ポルソナーレのゼミでレクチュアしている「脳の働き方」に即していうと「キャラクター・人格」が「トカゲの脳・人格」に移行する過程で「ピック病」の症状が発現します。 お分りのように「トイレに入ってじっと尿なり、便なりを出しつづける」というのは「快感行為」といいかえることができます。原始的な「幸福のボタン押し」を押して快感のドーパミンを分泌しつづけようとしています。学校とか仕事というものとの「関係性」を切断して「超リラックス状態」の中に逃げこんでいるということがよくお分りでしょう。 「ピック病」というのは、「脳の働き方」でいうと「関係性の病気」です。「関係性がなくなることの病気」です。 |
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