■相談の事例
「私は、高校もやっと卒業して、専門学校もすぐ辞めて、ブラブラしているうちに、誘われて付いていっているうちに結婚しました。あれよあれよと思う間もなく妊娠して二人の子どもがいます。でも、毎日、めんどくさい、何もしたくないと思っています」
(宮地登美子。37歳。主婦。東京都江東区)
(注・人物は仮名です。実在の人物とは無関係です。地域、職業、団体も特定のものとはかかわりはありません)。
■相談の内容
私は、結婚している主婦です。結婚して5年になります。子どもは長女4歳、長男1歳です。夫は、45歳です。
結婚してから一年もしないうちに、いつも身体の調子が悪くなりました。頭の中がボーッとしていて、右の耳のつけ根のあたりがいつも痛んでいます。夫からちょっと何か言われると「生きていてもしょうがないだろ」と言われているような気がして、いつまでも気になります。
長女が、何か悪いことをすると、すぐに殴ります。口ごたえしてもやはり殴ります。後で反省しますが、私は、小さい頃から本当の友だちがいません。主婦になっても、他の人は「友だちがね」とメールや会って話した時のことを話題にしますが、私にはどういう付き合いをしている友だちが一人もいないのです。
小さい頃に、遊びに来る子には居留守をつかったり、おもちゃを貸してあげたりはしませんでした。
今、友だちがいないのは、そのせいでしょうか。見ていると、長女も私の小さい頃とそっくりなことをしているのです。私の娘の将来は、たとえ結婚しても毎日が淋しい人間になるのでしょうか。
私は、自分に誇れるものは何もなく、まともに出来ることは何もありません。友だちもいないし、結婚してはいても毎日が淋しいのです。
高校も、やっとの思いで入ったのですが、友だちらしき人とはろくな話もできずにいつも一人ぼっちでした。
私は、今、思うと15歳の頃から「うつ病」らしきものにかかっていたのではないかと思います。高校の頃に、なにかやりきれない思いがして、マジで死ぬと思い、精神科にかかったこともあります。
高校を卒業して経理の専門学校に入ったのですが、一年もしないうちに辞めて家でブラブラしていました。
成人式の後で、生まれて初めて始めたアルバイトも途中で辞めて21歳まで家に閉じこもっていました。
このとき、毎日、「死にたい」と思っていました。
母親の妹がやっている店で働くようになったのですが、毎日、数字はまちがえるし、品物の名前も憶えられないし、勝手に別の商品を渡したりして迷惑のかけどおしで辛かったです。そのうち、朝になると起きられなくなって辞めさせられてしまいました。
こうなったら消えてしまうしかないと思い、江の島に行って海に飛び込もうと思いました。その前に、インターネットの出会い系サイトで誰かに「いなくなってしまおう」と思ったことを聞いてもらうとあれこれと書き込みをしたら、今の「夫」と出会ったのです。
「僕も毎日、死にたいと思っている」ということなので、会ってもいいか、と思い会いました。頭も、だいぶマヒしていたと思います。食事をして酒を飲んで、カラオケに行ってホテルにも行きました。妊娠したので結婚することにしたのです。
結婚式には、私の友人らしき人たちに連絡したのですが、誰も来ませんでした。「夫」の友人は、たくさん来ました。私は、とても淋しい思いをしました。一体、何のために結婚するんだろう?と思いました。このままいなくなりたいと思いましたが、妊娠していることを思い出してなんとか暗い気持ちのまま「夫」の決めたとおりに終わりました。
子どもは、二人産まれました。子どもが幼稚園に行くようになると、「お母さん」たちと話はするのですが、何か話にピントが合っていないらしくて、次からは話しかけてきません。
そのせいか、長女は幼稚園に行くのを嫌がるようになりました。
このあたりも昔の私とそっくりです。いつも家の中で一人で遊んでいるのです。二人の子どもも、私のような母親をもって嘆くのではないかとそれが心配です。
私は、この頃では食事のしたくや買い物に行くのがおっくうで、めんどうになっています。
そうじも、めんどうでヤル気が起きません。いつも思うことは、ただ寝ころんで楽になっていたいということばかりです。食事も店に行って買ってきたものばかりを食べさせています。私は、こんな調子で、この先どうなっていくのでしょうか。何か、脳のどこかが腐っていて、人間らしいところがなくなっているような気がしています。
●ポルソナーレの「指示性のカウンセリング」とは、こういうものです
事例の女性は、結婚して二人の子どもが生まれています。また、結婚したので食事のしたくをしたり、家の中をそうじしたり、あるいは洗濯などを日課としておこなう責任をになうようになりました。「夫」は、会社員ですので働きに行き、夜になれば帰宅して、事例の相談者が用意した食事を摂る、といった生活をくりかえして、4人の生活を支えています。
このような生活の中で、「うつ」になるとは、どういうことをいうのでしょうか。相談者の「女性」には、「夫」「二人の子ども」「自分」の4人をつなぐものとしてそれぞれの人間がいつも意識されていなければなりません。4人の人物の顔なり、全身像なり、目や表情なりが、「右脳」に思い浮べられていなければならないのです。
夫が、午後7時か8時ごろには帰宅してくるとしましょう。時計を見て7時か8時になると、家の玄関に「夫」の「姿」がイメージされる、という思い浮べ方です。4歳の長女についても、3時になると、幼稚園から帰宅してきて玄関の前に立っているという「思い浮べ方」でイメージされます。一歳の男の子は、まだ家の中で過しているので、家の中の遊べる空間にいる、というイメージのされ方です。
このイメージ(心像)を思い浮べることを「表象」といいます。表象とは、実物の人間なり物なりが、今、目の前になくても、そこにあるかのように思い浮べることをいいます。これは、右脳の働きによるものです。「右脳」の「ブローカー言語野」の3分の1の視覚の中枢神経の域で、大きく、クローズアップされたイメージ(心像)として思い浮べるのが日本人の女性です。「夫」ももちろんそのような心像(イメージ)を「右脳」のブローカー言語野の「3分の1」のゾーンに思い浮べます。
日本人の女性の「うつ病」とは、このイメージ(心像)がキレギレにしか思い浮ばなくなる、もしくは、全く思い浮ばなくなることをいいます。
それは、どのようにして思い浮ばなくなるのでしょうか?
思い浮べられる心像(イメージ)はどういうものでもいいというわけではありません。
「自分」の気持ちが喜びに感じられる「笑顔」とか「喜んでいる目の表情」といったものでなければならないのです。これが「思い浮ばない」というときに「うつ病」になります。
あなたの目の前に、ぬいぐるみの人形があるとします。正面向きのぬいぐるみです。正面の顔や身体の前の部分が見えます。あなたは、目の前のぬいぐるみには、背中も、足の先も、頭の後部も「ある」ことが分かっています。なぜ分かるのかというと背中も、頭の後ろも、足の先も「心像」としてイメージすることができるからです。つながっている部分として目に見えないところも「立体的なイメージ」を構成するものとして思い浮べられています。この「立体」を視覚のイメージとして下支えするのが「右脳・ウェルニッケ言語野」の触覚の認知です。
このような「心像」(イメージ)が女性に思い浮ばなくなることがあります。それが「女性」のうつ病の直接の原因です。
目の前の人物(夫、子ども)の心像(イメージ)が思い浮ばないということとは、どういうことでしょうか。
例えば、空の白い雲を見たとき、「うさぎ」とか「アイスクリーム」といった形象に見えることがあるとします。このとき、自分は「うさぎ」と言い、別の人が「アイスクリーム」と言ったとします。そこで「アイスクリーム」というコトバを中心に見ると「うさぎ」の形象が消えて「アイスクリーム」にも見えてくるでしょう。これと同じで、「笑顔」とか「喜び」といった言葉が消えてしまい、もしくは、別の不安な感情の言葉が先にあって目の前の対象を見るとそのとおりの心像に変わります。このように「クローズアップ」を形成する心像を否定したり、打ち消したり、疑う言葉があることで「主婦のうつ病」は本格化するのです。 |