みなさん、こんにちは。
全日本カウンセラー協会・ポルソナーレの谷川うさ子です。
●日本語のメカニズムを正しく知る必要と根拠
言語社会学者の鈴木孝夫、国語学者・大野晋(学習院大学名誉教授)らは日本語について研究しています。鈴木孝夫は、日本語と欧米語とを比較して日本語の特性を明らかにしています。大野晋は、日本語の「語源」を追究して、ひとつひとつの言葉の語源は、どういう意味をもっていたのか?の原義について解明しています。
鈴木孝夫と大野晋らの日本語についての研究と考察を理解することは、日本人の心や精神の病気、ひいては生活習慣病というものの発生のメカニズムがよく分かることに通じます。
日本人の心や精神の病気は、ひとくちにいうと「行動が止まること」の病気です。ポルソナーレは「行動停止」といういい方をしています。「行動」が止まるとは、初めは学校に行かない、仕事に行かない、ということから始まります。やがて、フトンから起きられない、昼間は行動できずに寝てばかりいる、という行動停止に広がります。足や腰の骨、筋肉には何の異常もないのに、動けなくなります。
「生活習慣病」とは、いつ、どこで、誰がつけたネーミングかは定かではありません。このネーミングからイメージされることは、日本人ならば、ほとんどの人が治療の対象になりますよ、という日常的な病気であるというイメージです。
おおきくとらえれば、「生活習慣病」も「行動停止」という病気です。
ポルソナーレは、約30年以上も心身の病気の疾患と症状の解消の仕方を追究してきました。その結果明らかになったことがあります。
「心の病い」とは、「妄想」というイメージを思い浮べることの病いです。この「妄想」というイメージを思い浮べなければ何の問題も起こりません。
「うつ病」の妄想のイメージは、「人から孤立している」「仕事や学校から孤立している」という孤立している自分の姿が思い浮んでいます。
「分裂病」の妄想のイメージは、「なになにが恐い」「なになにが不安」「なになににたいして緊張する」という他者から遠ざけられて孤立している自分の姿が思い浮んでいます。
「生活習慣病」とは、「高血圧」「糖尿病」「がん」「脳梗塞」「心臓疾患」などのことです。
これらの身体の病気は「血管の血流」がとどこおる、ということが共通しています。
なぜ、血流がとどこおるのでしょうか。なぜ「血流障害」が起こるのか?という問題です。
血管の血流は、自律神経が動かしています。血流を速く送るときは「交感神経」が動かしています。血流をゆっくり送るときは、「副交感神経」が動かしています。
自律神経は、「首から上」と、「首から下」と二つの方向に、別々の役割りをもって働いています。「首から上」の自律神経の働き方を「上向システム」といいます。「首から下」の自律神経の働き方を「下向システム」といいます。この「上向」「下向」を「上行」「下行」と表現している文献もあります。
●日本人の心身の病理は、日本語の憶え方と学習の仕方に原因がある
生活習慣病の共通の原因は「血流障害」です。自律神経は、「上向システム」と「下向システム」の二通りの働き方をします。この二つのうちのどちらか、もしくは両方の働き方が血流障害を起こします。
「首から下」の「下向システム」は、食生活や運動、睡眠などの過不足が原因になるでしょう。「首から上」の「上向システム」は、「言葉の憶え方」が影響します。日本人の場合は、「日本語の憶え方」のことです。
鈴木孝夫(社会言語学者)は、『新潮45』(2008・12月号)の中で「日本語」の特性について次のように書いています。
- 二本後の「音韻」(音素)は23しかない。
- ドイツ語は39、フランス語は36、英語は45という音韻数がある。
- 英語を例にとると、streetは「一音節」で発音する。日本語は「ストリート」と「五音節」の発音になる。母音だけで発音する。非常に間延びした言葉になる。
大野晋(国語学者)は、この日本語の事情について次のように説明しています。
- 日本語は、今から千五百年前に漢字、漢語をとりいれた。
和語(やまとことば)の中に漢字、漢語をとりいれて融合させた。この間、約千年以上の歳月をかけた。
- 「和語」(やまとことば)という古い言語体系が確立した時代には、日本には、「文字」はなかった。「話し言葉」だけが言葉だった。
- 「和語」(やまとことば)とは、「うつくし」「あそぶ」など「平仮名」で書きあらわされる言葉のことだ。
漢字、および漢語とは「美し」「遊ぶ」の漢字のことだ。
「美し」「遊ぶ」のように「和語」(やまとことば)に当てはめて使う、という使い方が融合である。
- 日本語のベースとなっている「和語」(やまとことば)は、「話し手のいる所」を「こ」であらわした。「相手と自分が共に知っている所、物」を「そ」であらわした。
「遠くの所、物」を指すときは「あ」または「か」であらわした。「分からない所、物」を指すときは「ど」を使った。これらの「音」に方向、場所をあらわす「方向」や「場所」をあらわす接尾語の「こ」とか「ち」をつけた。これが「和語」(やまとことば)の文法の体系になっている。
「話し手」からの「近い」「遠い」「不定」という距離があらわされている。
- 距離は、話し手からみて「近い」「目の前」(中程度の距離)、「遠い」「不定」という区別になっている。
- 日本語の「三人称代名詞」といわれるものは、この距離をあらわしている。
話し手が「自分の領域内の存在」と扱う人は「こいつ」「こやつ」と「こ系」であらわす。すでに話題に出てきて、話し手も聞き手も知っている人は「そいつ」「そやつ」と「そ系」であらわす。「話し手から遠い人」は「あれ」「あいつ」「かれ」「かのじょ」と「あ系」か「か系」であらわす。
- 日本語の「二人称代名詞」といわれている言葉は、「自分の目の前にいる存在」として測定するものだ。
「おまえ」「おまえさま」「おめえ」「てまえ」「てめえ」などだ。
- 日本語の「和語」(やまとことば)では、相手を「遠くの位置」の存在として扱うことは「敬意」の表現法になる。「あなた」も「あなたさま」も「敬意」をもった表現法だった。「あんた」と粗略に発音されて「近しく、なれなれしい扱い」となり、ときには「侮り」(あなどり)の扱いもあらわすようになった。
●日本語の文法は、人間関係を距離であらわすための文法である
「距離をあらわすのが日本語の文法体系である」というところに注目する必要があります。「和語」(やまとことば)として確立されて、現代にまで脈々と継承されてきている点にも注目しましょう。
脳の中で、言葉を生成するのはブローカー言語野です。生成のプロセスには、目、耳、手、口、鼻などの五官覚の知覚とその記憶が関与します。
「言葉」として生成させて、学習し、記憶して表現するのがブローカー言語野です。
このブローカー言語野は、自律神経が働いて、記憶や学習や表現をつかさどっています。その働き方は、「認知」と「認識」というメカニズムが中心になっています。
基本的に、「左脳」が認識をつかさどります。「右脳」が認知をつかさどります。
この認知と認識の出発点は「眼」の「視覚」です。
「眼」は、「遠くのものを見る」か「近くのものを見る」かの二つの視覚の働き方が基本です。「眼」のこの二つの知覚の仕方が、手、耳、舌、鼻、身体の皮ふなどの知覚と連動しています。
●日本語と脳の働き方のメカニズムの相互関係を教えます
遠くのものを見る視覚の知覚は、「視神経の回路」の「Y経路」(アルファ細胞)がになっています。近くのものを見る知覚は、「視神経の回路」の「X経路」(ベータ細胞)です。「Y経路」は自律神経の交感神経のことです。
このY経路とX経路が、そのまま「認知」と「認識」の機能をになっています。このような認知と認識によってあらわされる人間的な意識のことを「メタ言語」といいます。
「メタ言語」とは次のようなものです。
- X経路……ものごとに焦点をあわせる。ものごとの形、色、こまかい形象像を認知する(右脳)、これを「左脳」で認識する。
- Y経路……ものごとの動き、位置を認知する。これを「左脳」が認識する。
ここでは、脳の働き方の言葉の生成のメカニズムとして、「右脳」と「左脳」の役割りを説明しています。
この「X経路」と「Y経路」のメカニズムは、「目が見る」という知覚の次元でも起こらなければなりません。なぜならば、身体の「眼」がものを見て、「遠い」か「近い」かを識別するからです。
ブローカー言語野は、知覚の次元での「遠い」か「近い」かを認知したり、認識します。これも、「右脳」が認知して、「左脳」で認識します。ブローカー言語野でY経路が働くのは、頭頂葉のゾーンに位置しているブローカー言語野です。便宜的に「3分の2のゾーン」と定義します。X経路が働くのは、側頭葉のウェルニッケ言語野に隣接してるゾーンです。便宜的に「3分の1のゾーン」と定義します。
日本人は、このブローカー言語野の「3分の1のゾーン」のX経路を中心に「言葉を学習している」ということをご説明しています。X経路とは「焦点を合わせる」という認知と認識の仕方をおこないます。焦点を合わせるとは、ものごとをクローズ・アップして大きく見る、ということです。ある一つのものをじっと見つめつづけると、そのものは大きく見えるでしょう。
さらにじっと見つめつづけると、自分の身体とぴったり同化しているように感じられます。これが日本人の対人意識の価値意識の中心になっているのです。
また、これが、日本語の発音の「音韻」の数が少ない理由にもなっています。日本人は、「自分と同化して、一体感を感じるもの」だけを分かればよいという言葉だけをつくってきたのです。「食べた」「飲んだ」「性をした」などのように、「行動が完結」したことだけをとらえる言葉とその表現だけで十分に生きていける、という言語体系を、今も抱えています。
●日本人が英語をマスターできない巨大なハードル
日本人が、このような「和語」(やまとことば)を用いて行動するとどうなるのでしょうか。
分かりやすいのは、英語の学習の局面です。
坪谷郁子(つぼやいくこ)はこうのべています。(注・坪谷郁子…イリノイ州立西イリノイ大学卒。東京インターナショナルスクール、イングリッシュスタジオなど五法人の代表取締役。米国人との間に2女)。
- 「フォニックス」とは「発音記号」のことだ。英語のアルファベットの発音は日本語で発音されているものとは、大きく違う。
- 日本語は、A、B、Cを、「えい」「びい」「しい」と、「二音節」で発音する。
「フォニックス」という英語の発音記号では、次のとおりに発音する。
A…ア(アとエの中間の発音。唇の両端を指でひっぱってアと発音するときの音)。
B…バ(日本語のバビブべボと発音するときとほとんど同じ音)。
C…ク(もしくはス)
D…デュ(この音のにごらない音がTである)
E…エ
F…フ(下唇をかるく噛んだ状態でフッと息を吐き出す音)
G…ンガ
H…ハ(マラソンの後で肩で息をする要領でハッ)
I…イ
J…ジュ
K…ク(のどの奥でカッ)
L…ラ
M…ンマ
N…ンヌ
O…オ(またはア)
P…パ
Q…クッ
R…アー(ライオンがほえるときの音)
S…ス(歯の間からそっと息を出す)
T…ツュ
U…ア(OとUのアの違いは、Oは日本語のアに近い。ユーはアッと驚いたときに発する音。あhotとhutで練習)
V…ヴ
W…ワ
X…クス
Y…ヤ
Z…ズ
これが脳の働きのブローカー言語野のY経路の言葉の現実です。この「フォニックス」のとおりに英語のアルファベットが発音できるためには、Y経路のもつ言葉の「主体意思」を日本語でも確立しなければ手に負えるものではないことはよくお分りでしょう。
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