■ 相談の事例
「私は41歳の男性です。大学院も出て研究職で働いています。収入もよくて生活は安定しています。しかし、女性関係は非常にニガテで、ケッコンどころか、一度も交際したことがありません。仕事も辞めたいとひそかにそればかりを考えています」
(鈴川五郎。41歳。男性。仕事は光学関連の研究職。神奈川県横浜市)
(謹告・人物は仮名。特定の人物、地域、団体、職業とは無関係です)
■ 相談の内容
私は、一年くらい前から近くの総合病院の精神科に通って薬をもらって飲んでいます。
あまり薬の効果はなく、この一ヵ月くらい仕事を休んでいます。ノイローゼの一種の「性格神経症」だと言われました。
薬の名称から本で調べてみると、うつ病の薬が二種類、分裂病の薬が三種類です。副作用の便秘をおさえる薬、そして睡眠薬が一種類です。なんとか、薬を止めて正常な社会生活を送りたいと思っています。医者は、「治るには、長い期間が必要だ」と言いました。私は、今、41歳で独身です。このまま「長い期間」の月日が過ぎていくと何のために生きてきたのか、何のために生きていくのかが分からないと思っています。なんとか貴全日本カウンセラー協会・ポルソナーレのカウンセリングの「教育力」にすがって自分の本当の人生を取り戻したいと思っています。
私の症状についてご説明させていただきます。これからお話することは、私がずっと長い間悩んできたことばかりです。
(1) 「理解力」が極端に悪くなりました。仕事で専門書を読んでもなかなか理解できなくて、本を読んでいるフリ、レポートを書いているフリをしているだけで、何も頭の中に入ってきません。
(2) 「記憶力」がひどく悪くなりました。会社に電話がかかってきます。「A社のBという者ですが、Cさんをお願いします」という相手の話を、Aを忘れて、Cか、Bしか憶えていません。いつもというわけではありませんが、とくべつ急いだり重要なところで忘れる、憶えていない、ということが起きています。
(3) 自分が、今、何をしようとしていたのかをよく忘れます。認知症というか、痴呆になっているのか?と不安になります。
(4) 講演、講義を聞いていても、何をメモしているのか、何が話されているのかがよく分かりません。話の内容がボンヤリとした感じられず、何のイメージも記憶に残りません。
(5) 大量の文書を読みこなすことができません。ここから要点をとり出して、脈絡を組み立てて簡潔なレジュメをつくることができなくなりました。企画書とか、提案書などが全く作れなくなりました。一日中、ボーッと机に座って、パソコンの画面を意味もなく動かしている自分が多くなりました。
(6) 自分から他者にはたらきかけることができなくなりました。ものを借りること、大声を相手を呼ぶこと、メールや電話で話しかけること、などです。なんとかムリにでもおこなおうとすると、非常に勇気がいります。とても辛く感じられます。そして直前に呼吸が止まるようなストレスを感じます。
また、なんとか実行しても、頭の働きがついていけず、キレギレになったり、語尾が曖昧になって言葉が出てこなくなって空気が抜けたように消えてしまいます。
仕事や会社の中だけではなく、ふだんの人間関係の中での悩みは次のようなことです。
(1) 他人の話していることが全く分からなくなることがあります。テレビの番組で小学生が学級会で意見をかわし合っている場面を見ました。小学生なのにすごいなあ、と驚きました。しかし、話している小学生の男の子の話が何を話しているのかが理解できなくなり、自分がおかしくなったのではないかと思いました。
(2) 上司から、「話がくどすぎて、ズルズルと言葉がつづいていくので、何を言いたいのか、何が言いたいのか、なぜ話しているのかがよく分からない」としばしば言われます。自分でも、話しているときにだんだん息苦しくなってくることがよくあります。頭の中が空白になりそうなときがよく起こります。
(3) 最近は、相手と話している時に、相手の言ったことが頭の中にスッと入ってこなくて、相手の話した言葉を頭の中で何回も何回も、ぐるぐるとくり返していることが非常に多くなりました。
女性については、他の男性がよくやっているように自分から言葉をかけることがどうしてもできません。自分から先に話しかけて、会話を維持するということができないのです。
女性が、近くに来て、話しかけてほしいそぶりを見せても、不本意ながら話しかけられないのです。
勇気を出して、何かを話そうと思っても、言葉が思い浮びません。
また、女性の方から話しかけてきたとき、なんとなく言葉を返してはいるようですが、頭の中では何も考えていない状態になっています。
そんな私の状態を見て、相手の女性は気持ちの交流が全く無いことを察知して、次からはもう話しかけてこなくなります。
私は、長い間の自分のこんな現状について、「まあ、いいか」と妥協し、諦めてきたことが病状を悪化させてきたと考えています。まわりに「人の悪口を言う人」「偉ぶる人」「イバる人」がたくさんいますが、こういう人たちにたいしていつも心の中で腹を立てて憎んでいます。いつも一人で怒っていて、一人の時に、ひとり言で文句を言ったり、怒りの言葉を思い浮べたり、ひとり言で話したりしているようです。
● ポルソナーレの「指示性のカウンセリング」とはこういうものです
ここでご紹介している相談者は、省略していますが、大学から大学院にかけて、ある特殊な分野の研究活動を一人でやっていました。趣味といえば趣味ともいえるものですが、一人である何ごとかの「勉強」をつづけてきました。それが、社会生活とは直接、関わりも接点も無いものでした。ここから、脳の働き方として、「右脳・ブローカー言語野の3分の1」の記憶の中枢域に何のイメージも思い浮ばない、という「聴覚障害」がつくられたのです。
音楽や絵画、物作りなどの脳の働き方は、部分だけを拡大して背景や脈絡などの「全体」から孤立するという聴覚障害をつくり出します。
相談者のケースのような聴覚障害は、「丸暗記」や「ひたすらむずかしい本を読む」「ムリに仕事のコトバを憶えこむ」といったことをやった人たちに共通する聴覚障害です。「右脳・ブローカー言語野」の「3分の2」の抽象の記憶のゾーンに「抽象の形」だけを思い浮べて、「右脳・ブローカー言語野」の「3分の1」の記憶のゾーンにリアルな形象のイメージが思い浮ばない、という「関係性の不成立の障害」が発生しているのです。
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