■相談の事例
「私は、体調が悪くなったので仕事を辞めてずっと家にいます。すると、体調はもっと悪くなって、家族にも緊張するようになりました」
(黒沢秀子。女性。32歳。広島市)
(注・人物は仮名です。特定の人物とは無関係です。また特定の地域、職業、団体とも無関係です。相談の内容は、いくつかの内容を合成して再構成しています)
■相談の内容
私は、誰と話しても胸が詰まるような緊張感があります。メールでも、電話でも、いざコミュニケーションをとると思うと、胸にざわっと暗く重い感じがこみ上げてくるのです。人と話しても、相手の話を聞いているようで聞いていない、ということがいつもあります。
昔、ポルソナーレで教えてもらった「自分のことを考えている」ということだと思います。
疲れやすくて、夜も眠りにくくなって仕事を辞めました。今32歳ですが、辞めたのは25歳の時です。休んでいれば元気になってまた働けるだろうと思っていました。でも家にいて何のストレスも感じなくなると至福の時のように思えて、ネットをやったり、ゲームしたり、マンガを読んでいるうちに、ちょっと歩いても息切れするようになりました。外に出ると体にアレルギーが出て、薬を塗ったり、飲んでいるうちにもっと体調が悪くなったのです。体重も10キロ増えました。
服のサイズも合わなくなって外に出れなくなりました。
今、私のいちばんの悩みは、自分に自信がないことです。それと人の目を見ながら話せて、大笑いしたり、ジョークも言えるようになることです。心に余裕があれば、自信もつくと思います。今は、家族と顔を合わせてもドキドキするので、避けて部屋に閉じこもっている状態です。
私の悩みについてですが、こんなものでよろしいでしょうか。よろしくお願いします。
●ポルソナーレの「指示性のカウンセリング」とはこういうものです
ポルソナーレが解明した「脳の働き方」のメカニズムが明らかにする「病理」とは、人間は、誰であっても「行動が止まる」と、その人がすでに記憶している不安や緊張、恐怖などのイメージが「右脳」に思い浮びます。
最初の不安のイメージは、「オペラント条件づけ」というメカニズムで起こるのです。オペラント条件づけとは、目の前に起きたことと自分の行動とは因果関係がある、と思い込む条件反射のことです。人間の脳は、「行動」を起こすことを本質的な目的にしています。オペラント条件づけは、「目の前の対象」が原因で、自分の「行動」が結果である、という認知の仕方のことです。
ある人は、「目の前の対象」について、自分が関わるべきものかどうか?の判断を保留することがあります。しかし、別の人は、「自分の行動と関わりがある」と判断することがあります。この両者の違いは、自分の「行動」に「いつ」「どこで」「何を」「どのように」という言葉をむすびつけられているか、どうかの違いによるのです。
相談者の場合は、「どのように」という言葉が無いので、「対象との関わりはすでに成立している」という認知の仕方がおこなわれています。
「行動が完結している」という脳の働き方になるのです。するとオペラント条件づけは、「目の前の対象」との関わりはすでに終わっているというイメージを「右脳」に思い浮べさせます。このときのイメージを「負の行動のイメージ」といいます。大脳辺縁系の「線状体」が記憶している不安とそのエピソード記憶を「海馬」から想起させるのです。
「負の行動のイメージ」は、誰にとっても「自分は不快だ」「自分だけが損をしている」といった内容になるに決まっています。
このような脳の働き方を「全般性不安障害」といいます。オペラント条件づけはつねに「負の行動のイメージ」を表象させつづけていて、「不安」を深めたり増大させるので、「誰かが私を狙っている」とか「あの人は、私に辛い思いをもたらしている」という敵意や悪感情も、副次的に表象させつづける日々になるのです。 |