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カウンセラー養成ゼミ NEWSLETTER 第225号
11期14回め平成21年8月22日

ハーバード流交渉術・脳の働き方と言語の学習回路
浅見鉄男「井穴刺絡・免疫療法」

脳の働き方・言葉の生成のメカニズム
言語の生成・IV

分裂病の解体学・VI
「日本語」(金田一春彦)

はじめに

 カウンセラー養成ゼミ、中級クラス、スーパーバイザーカウンセラー認定コース、Aクラス、№40のゼミをお届けいたします。
 日本語の生み出す「日本型の分裂病」についてご一緒に考えます。
 精神分裂病は、E・クレペリンの臨床の観察が土台になって研究・考察された病理概念です。「進行していく痴呆」というのが病理の全体像です。
 日本人は、日本型の分裂病によってこの「進行していく痴呆」を生成しつづけています。
 精神分裂病は、「その時代、その社会の知的な言葉に不適合であることが原因」(H・ミュラー)です。
 今回は、日本語が、どのように不適合を生成するのか?をご一緒に考えます。

ポルソナーレ代表田原克拓

本号の目次

  1. 「精神分裂病」とは、どういうものか
  2. E・クレペリンのとらえた分裂病の痴呆の内容
  3. 分裂病とは、進行し深まる痴呆のことである
  4. 分裂病は、言語がつくる「言語との不適合」である
  5. 日本人は、日本語で「日本語との不適合」をつくる
  6. 不適合かどうか?の判断の基準は新生児の脳のメカニズムにある
  7. 日本人は、「否定的表現」で他者を「殺害」する
  8. 分裂病を超える日本語の表現の仕方

脳の働き方・言葉の生成のメカニズム 言語の生成・IV
分裂病の解体学・VI
「日本語」
(金田一春彦・下巻・岩波新書よりリライト・再構成)

「精神分裂病」とは、どういうものか

 本ゼミは、これまで5回にわたって精神分裂病を精神医学史の次元でとらえて、精神医学史ののべる精神分裂病のメカニズムについてお話してきました。

 精神分裂病は、一般的に、「精神が分裂することだ」とか「ジキルとハイド氏のように、突然、人格が分裂することだ」と理解されているからです。精神分裂病は、通常の人間関係の中で、お互いの意思を疎通させ合うという会話が成り立たなくなるので、このような精神分裂病の病理像が思い描かれているものと思われます。

 精神分裂病は、E・クレペリンによって具体的に臨床的な症状と進行の経過が観察されました。このE・クレペリンの臨床観察は、現代の精神医学の基礎になっています。

 精神分裂病は、ひとくちにいうと心の病いです。原因は、心をもつ一人一人の人間の「ものの考え方」にあります。「ものの考え方」といってもあまりにも漠然としています。そこで、なぜ、「ものの考え方」が「人格の崩壊」とか「精神の分裂」といった一般的に思い描かれている病理像をつくり出すのか?と考えてみます。

 ある人の「ものの考え方」を問いかけてみると、「自分はこう思った」「自分はこう考えた」「自分は、これこれこういうことを思ったので、こういうふうに行動した」ということが語られます。説明されるということです。
 その説明は、必ず、「その人自身の言葉」で語られます。

 語られる言葉が、どういう動機やどういう目的にもとづいていようとも、「その人自身」が記憶している「その人だけに固有の言葉」です。

 心の病理とは、誰にも共通に与えられている現実の中で、その人だけが行動に支障をきたし、不都合を生じさせることをいいます。

 行動は、言葉によってあらわされます。

 だから、心の病いとは、ものの考え方をつくる言葉の記憶の仕方に原因があると考えられます。

 ドイツのH・ミュラーは、心の病いの中でもとりわけ異質に際立っている精神分裂病は、「その時代、その社会の中で最も知性の水準の高い言葉との不適合であることが原因である」と、臨床観察をとおしてつきとめました。

 「不適合である」とは、「その時代、その社会で最も知性の高い言葉が、曖昧にしか伝えられないこと」と、ある個人が「曖昧にしか憶えていないこと」の二つを含みます。

 精神分裂病とは、日本人の場合ももちろん、「日本語を曖昧にしか憶えていないこと」が原因と理由でつくられる心の病いです。

 具体的にいうと、「曖昧に憶えた言葉」とは、どういう病理をあらわすのでしょうか。

E・クレペリンのとらえた分裂病の痴呆の内容

 近代精神医学の「祖」と呼ばれているE・クレペリンの『早発性痴呆』(星和書店・刊『破瓜病』昭和53年・渡辺哲夫訳より)から「言葉との不適合」がつくる病理の観察モデルをご紹介します。

?精神的作業力の低下が目立ってくる。それは、ボンヤリとして、考えるべきことに無思慮になり、時間に遅れる、与えられた課題を忘れるなどの失敗としてあらわれる。彼は、集団の中の共同作業についていくことができなくなり、任務の目標に到達することはできない。

?精神活動の作業力の低下とともに、性格の変化が目立ってくる。「自分勝手」で「他者」にたいして冷酷、頑固な言葉、態度を向けるようになる。

?それまで親しかった人間に対しての疎遠さが目立つ。
身近な人間にたいして「どうでもいいじゃないか」という平然たる態度をとってこれを喜ぶ。自分だけの殻(から)に閉じこもる、という自閉と離人症の症状を見せる。

?それまでつづけてきた知的な努力が「もういいか」という思考感情の言葉で消滅する。
これは、将来への希望や計画への忍耐力や理解力の消滅を意味する。したがって、この日からとりくむ仕事は、全て誤ったものとなり、客観的な説明が必要なことからは身を引き、つまらないことで時間をつぶすようになる。

?患者の多くに共通する現実意識というものがある。それは、現実の変化に何の関心ももたなくなる、ということだ。自分の記憶している現実の断片を、それが現実の全体であるかのように、心気症とともに類型的に語る。それが、自らの心気症の影響であることに気づくことはない。心気症とは、臭い、痛い、不快、辛い、面倒だ、などの感情に引っかかることをつねに思い浮べるために神経症をつくって、その引っかかりには何か、現実的な因果の実体があるかのように錯誤することだ。この心気症が、現実への離人症をつくり、逃避のための新たな心気症のイメージをつくる。その行動は、落ちつきの無さ、とてつもなく長い散歩、目的のない旅行、といったことだ。

?この心気症を抱える患者にとって最も危険なのはアルコールである。彼は、アルコールの誘惑に何の抵抗もなく屈服して、日々、堕落の習慣を増やしていく。

?教育の面、職業の面でも、無能力がしだいに際立ってくる。これは、誰の目にも明らかになる。自分の無能力に気がつくことはないのは患者自身だけである。彼は、ある日突然、「どうしようもない」と見切りをつけられることになる。

?早発性痴呆は、ゆっくり進行していく荒廃を特徴とする。
もう一つの病型がある。それは、一八七一年、ヘッカーによって研究され、記述されたもので「思考、感情、行動にあらわれる支離滅裂性」だ。「児戯性荒廃」という。

  1. 全身性の神経質性の愁訴
  2. 倦怠の訴え
  3. ささいなことを拡大して止まらない怒りの感情
  4. 頭痛、目まい感、過眠、不眠
  5. ぼやっとして放心状態のまま夜を過す。あるいは、朝から昼までを連想とともにぼやっと過す。
  6. 忘れっぽくなる。
  7. だらしなくなり、疲れやすくなる。
  8. 考えをきちんとまとめ上げることができなくなる。考えは、とてつもなく貧弱になる。感情的な反射が中心となりもの分かりが悪くなる。同じことをくどくどと常同症ふうに考えつづけて、自己の感情と一致するまで、止めない。
  9. 愚直で、怠惰な印象を受ける。

?誇大観念が見られるようになる。飛躍した自己像のことだ。
裏付けも実証も、客観的な評価による信用もないこの「誇大観念」は、作為性の思考を生む。また、自己中心の感情と同一化したプライド(誇り)と相似形をなして虚偽性の言葉を、不自然さを感じることなく話すようにもなる。(注・現代の分裂病の症状の一つのミュンヒハウゼン症候群の原型をつくる、ということだ。他者から注目を浴びる、他者からの賞賛を得るためには、手段を選ばないという病理だ。動機なき大量殺傷事件として注目された『和歌山毒カレー入り殺人事件』が典型である)。

?早発性痴呆の患者の発言には、次のような特徴が見られる。

  1. どんな誇大の妄想を語るときも、冷静であり、意識は明瞭である。この時、患者は、自分の置かれている状況、語っている相手、語っている空間について、話を聞いている人間と、その認識は一致している。しかしながら、語られる言葉とその内容、そして思考そのものは支離滅裂である。飛躍が多く、自分の感情のイメージを誇大的に拡大して、連想とともに飛躍させる。
  2. 語られる言葉の内容は、幼く、退行化しており、甘えや依存を当てにして述べられる。子どもっぽくて、判断力に欠け、相手や周囲への影響は考慮されない。
  3. このような状況でも、当の早発性痴呆者が学んできた知識の記憶、職業上の知識、仕事上の体験の回想は全く障害されない。
  4. だが、早発性痴呆は、行動を支える言葉の面に突出する。「突然の動揺」「発作的な他者への攻撃」「躁的にあらわされた感情の後には、熱が冷めたような冷静さ」が出現する。「自己の誇大のイメージを満足させるものを保持しているときのみの高揚した自己満足の気分」、「特定の他者のみに向ける不信、不機嫌、横柄、粗野な態度」などが冷静さの内容だ。
  5. このような症状が見られると、当該の患者は、他者に向けて、「とるに足らないことをののしり、脅迫し、暴力的になる」。「独り言を言う」。「相手が聞いていようが聞いていまいがおかないましにおしゃべりになる」。「あらぬ所を凝視して、質問には答えない」。「仕事の能力は目に見えていちじるしく低下する」(自分の本来の責務には頓着(とんちゃく)しなくなり、ありとあらゆるでたらめを好んでおこなうようになる)、などをあらわすようになる。
分裂病とは、進行し深まる痴呆のことである

■E・クレペリン(エミール・クレペリン)は、ここで何をなしたことになるのかといえば、現在の正式名称の「精神分裂病」を『単位疾患』として確立したことに意義があります。E・クレペリンは、精神分裂病を『単位疾患』として樹立したことにより、「近代精神医学の始祖」と呼ばれています。

 ご紹介した「早発性痴呆」の病理症状は、ハイデルベルク大学で、研究グループがつくられて自然科学の手法による記述として位置づけられました。その後の歳月を経て今もなお、十分な臨床的な価値を保っています。

 この『単位疾患』としての『早発性痴呆』を『精神分裂病』の名称とともに受け継いだのがE・ブロイラー(オイゲン・ブロイラー)です。

 E・ブロイラーは、『精神分裂病』という「単位疾患」を「連想による弛緩(しかん)が病理の本体である」と定義しました。同時に、「弛緩にともなって、自閉していく」と、精神分裂病の客観的な病像を定義しています。

 では、精神分裂病は、一体、なぜ「単位疾患」という病像を成立させるのでしょうか。それは、E・クレペリン(エミール・クレペリン)が臨床的にとらえた「進行していく痴呆」というところに根拠があります。

 この「進行していく痴呆」という臨床を定義して、E・ブロイラーは「連想による弛緩(しかん)」と再概念化しています。そしてE・クレペリンが臨床的に観察して記述したさまざまな症状を、「進行していく麻痺(マヒ)とともにしだいに誰の目にも明らかになる自閉と離人症」を共通の症状として定義しました。

 すると、精神分裂病の生成の機序は、「連想すること」にあります。

 「連想」とは、「あるものごとのイメージが思い浮んだとき、そのものごとに、何らかの点で共通することを思い浮べること」という意味です。「連想ゲーム」というものがあります。「四」という数字は「よん」とも「し」とも発声するので「死」を連想する、というパターンのゲームです。

 そのものの実体とか、現実に存在する意味とは関わりなく、任意に思い浮ぶイメージが「連想」です。

分裂病は、言語がつくる「言語との不適合」である

 H・ミュラーは、この「任意に思い浮ぶイメージ」の中で、特に、「その時代、その社会の中で最も知性の高い言葉と、不適合である」という局面で「連想」されるイメージが「精神分裂病」の機序になるとつきとめました。

 「その時代、その社会の中で最も高い知性の言葉」と「不適合」をつくるとは、どういうことをいうのでしょうか。

 ご紹介したE・クレペリンの『早発性痴呆』の病像のモデルを見ると、次のようなことが「不適合」という内容を構成します。

  • 無思慮になること
  • 自分勝手になること
  • 理解力が消滅すること(客観的な説明ができなくなる)
  • 現実の変化に何の関心ももてなくなること
  • 錯誤が生じること
  • 考えの表現は、感性的な反射の言葉が中心になること
  • 誇大観念が語られること(作為性、虚偽の言葉が表現される)
  • 説明は、飛躍と自分の感情の拡大でおこなわれること
  • 他者を脅迫し、威嚇する言葉になること
  • ありとあらゆるでたらめを、好んで行うようになること

■このように整理した「痴呆」をあらわす不適合の言葉とは、人間関係、学校の勉強、日常生活、仕事などの現実では、精神分裂病の症状の特性をあらわします。次のようなものです。

  • 放置する。
  • 知らないこと(無知)を良しとする。
  • 本当のことを言わない(言えない)で、虚偽を話す。
  • 説明すること自体を不問にする(省略したり、無視する)
  • 客観的な事実を、異なった内容として話す。
  • その場限りのつじつまの合うことを話す(その場の言い逃れの話し方になる)
  • 行動が不成立になる(現実を壊す)
日本人は、日本語で「日本語との不適合」をつくる

■E・クレペリンの『早発性痴呆』の臨床観察にもとづいて分類し、整理することができる「言葉」との「不適合」がつくる「早発性痴呆」の内容とは、以上のとおりです。では、これらの症状は、どのような「不適合」から生成されるものでしょうか。

 金田一春彦は『日本語』(岩波新書、下巻)の中で、日本語(和語・やまとことば)の文法の構成する特質を次のように説明しています。

?日本人は、日本語を使うときにことさらに「否定的な表現」を用いる。「肯定的な表現」を避ける、ということだ。

◎文例

  1. 「雨が降るかもしれない」
    It may rain.
  2. 「あなたはカサを持っていかなければ」
    You have to take an umbrella.
  3. 「私は、これ以上のことを知らない」
    This is all I know about it.
  4. 「それは彼にはわからなかった」
    It was more than he could understand.

?ここに示したものは、英語では「肯定表現」でのべるところを、日本語の表現と比較すると、日本語(和語)では、「否定語句」でのべるということを理解してもらうためだ。

?典型的なケースは、次のようなものだ。

◎文例
「四時にならなければ帰って来ません」。
小出詞子(こいで・しこ)によれば、これは、日本語に熟達したアメリカ人でも通じにくいという。
「ならなければ」と「帰りません」と二度にわたっての「否定表現」が用いられているからだ。「帰るのか」「帰らないのか」が分からなくなるのだという。「彼は、四時以降に帰ります」という肯定表現が、否定語句を用いて、否定的に表現されている。

?堀川直義は、こういう。
「日本人が否定文を用いるのは、断定を喜ばないからだ。喜ばないとは、肯定に気持ちの上での満足を得られないということだ」。
そこで「である」「という結論に至る」という表現の代わりに「…といえなくもない」という表現の仕方をする。だから、「不賛成でないということもなくはない」というような「四重否定」を日常の日本語として用いる。

?与謝野寛は『人を恋ふる歌』で、次のような徹底した「否定表現」を書いている。

我コレッヂの奇才なく
バイロン、ハイネの熱なきも
石を抱きて野に歌ふ
芭蕉のさびを喜ばず

これは、「では、あなたは何をしたくて、何になりたいのか?」と尋ねればどういう答えが返ってくるのか全く見当もつかない、意味のとりにくい歌である。

?日本人の用いる日本語による表現は、「自動詞」が多用されて、「他動詞」がしりぞけられる。
日本の辞書を引いてみると、「自動詞」と注記されている単語が多い。英語の辞書ではvt.というのがvi.と同じくらい出てくる。もともと「自動詞」を多く作ってきたという文法的な背景によるものだ。
例えば、「心の動き」をあらわす「喜ぶ」とか「驚く」などが自動詞だ。英語ではどうなるか。
to be pleased
to be surprised
のように「他動詞」を「受け身」の形式で表現する。
ドイツ語やフランス語でも、このような場合は、「自動詞」を使わずに「再帰動詞」という一種の「他動詞」を使って表現する。

  1. 日本語では「私を驚かす」「私自身を誇る」というような言い方はしない。
  2. 外界(がいかい)のことを描写する場合も日本人はやはり「他動詞」を使わずに「自動詞」を使う。

    ◎文例
    「煮える」
    「崩れる」
    もし、英語ならば、「煮られる」「崩される」という他動詞の受け身による言い方をする。

  3. 日本語でも「煮られる」という言い方はある。だが「煮える」と「煮られる」では意味が変わる。

    ◎文例
    「煮られる」…「石川五右衛門が煮られる」。
    「煮える」…「豆が煮える」
    もし「豆が煮られる」と言えば「豆が熱がっている」というイメージを思い浮べるだろう。
    また「石川五右衛門が煮えた」と言えば、「日常的に食べているのか?」と詰問されるだろう。

  4. 日本人が「自動詞」を多用する例。
    「天皇陛下におかせられてはお召しになりました」…「食べる」(他動詞)が「お召しになる」という自動詞に置き変えられている。
不適合かどうか?の判断の基準は新生児の脳のメカニズムにある

■金田一春彦が説明している日本人による「日本語の使われ方の特性」をご紹介しました。これは、何に対しての不適合を示しているのでしょうか。

 それは、脳の働き方の言語の生成のメカニズムを基準に立てなければ永久に分からないものです。

 すでに、本ゼミでは、『赤ん坊から見た世界』(無藤隆・講談社現代新書)をテクストにして、新生児、乳児、乳・幼児の「言語の生成のメカニズム」をお話してきています。

 新生児とは、「生後一ヵ月」の子どもです。目、耳、手(指)、口(喉)の五官覚が、どのようにものごとを認知して、認識をおこなうものか?のシステムを理解しています。新生児、乳児は、まだ自分では動けないので、ものごとの認知と認識は「二・五次元」の認知と認識です。自分の力で動けるようになると、母と子の関係のシステムの『愛着』の「同期」と「同調」が加わって「三次元」の認知と認識へと、「認識と認知」が相互性をもって高次化します。

 この「認知」と「認識」のメカニズムは、次のとおりに定式化されます。

◎認知

  1. 右脳(アナログ脳)の働きによる。
  2. ブローカー言語野の3分の1のゾーンの記憶の仕方である。
  3. 視覚の知覚神経の「X経路」による。
  4. ものごとに焦点を合わせる。色彩、こまかい形象像を記憶する。
  5. メタ言語(イメージスキーマ)の文法的特性は、「結果」(どうなる)、「選択、判断」(なぜならば)、「現在位置」(時制)、「主体・対象の確定」(誰が、何が?)、「基準」(ルール、決まり、定義)などである。

◎認識

  1. 左脳(デジタル脳)の働きによる(注・認知は、右脳でおこなう。右脳のブローカー3分の2のY経路である)。
  2. ブローカー言語野の3分の2のゾーンの記憶の仕方である。
  3. 視覚の知覚神経の「Y経路」による。
  4. ものごとの動きのパターンや、形象のパターンを視覚で知覚する。相似的、類形、動きの変化、動きの速度を記憶する。
  5. メタ言語(イメージスキーマ)の文法的特性は、次のとおりである。
    条件(どのように)、因果(どのような、どうなっていくのか、どうなるのか)、比較(具体的な事実は?)、前提(何が、何を、何と?)、経過(どのような変化があるのか?)、などである。
日本人は、「否定的表現」で他者を「殺害」する

■日本人が用いる「否定的表現」による「肯定文」(話し言葉)は、「肯定の対象」の「Y経路」を、「行動の対象」として説明しないということです。

 Y経路の文法の示す「前提」とか「条件」とか「因果」というものを一切、表現しないというのが「否定的表現」のメカニズムです。これは「脳の働き方の言語の生成のメカニズム」に則していうと「X経路」だけにとどまって、この「X経路」のゾーン(ブローカー言語野の3分の1のゾーン)だけで行動を完結させることに終始する文法体系をもっているということです。

 国語学者・大野晋は、日本人の使っている日本語とはどういう起源をもっているのか?を追究しています。次のように考察と解析をのべています。

  1. 日本語の「亡くなる」「おいでになる」「ごらんになる」の「なる」(「ある」「らる」も)は、自然推移の結果として、ある状態に至る、という「自発」の表現である。
    (注・自動詞の表現パターンに該当する)。
  2. 日本語の「尊敬語」の表現の「なる」「らる」「ある」は、自然的成立を意味する言葉が用いられている。
  3. 人称代名詞の体系は「うちの人」「こなた」「あちらの方」など、遠い人には尊敬語を用い、近いゾーンの人には「親愛の表現の『うち』『こっち』」を用いてきている。
  4. 日本語(和語)は、人間、物、事柄を「内」と「外」とで区別する文法体系になっている。ここに、漢字・漢語の輸入とともに「上、下の区別」が加わった。
  5. 日本語をつくった弥生時代の古代人の心性は、「遠い所…家の外のもの」は「自分は立ち入らない、手を加えない」ととらえた。これが日本語(和語)の文法を構成している。

■「遠い所」とは、「二・五次元」の対象としてみると「Y経路による認知と認識の対象」です。

 「二・五次元」でものごとを了解するのは、「新生児・乳児」です。対象は、「母親」「母親の顔と目、声」(言葉)です。

 これが、日本の古代人の心性では、「家の外の自然、現象、人間」の全てが対象となっている、と大野晋はのべているのです。

 「外のものは恐い」「外にあるものは危険なものだ」だから「敬意を表しなければならない」と無意識に考えさせるのが日本語の「文法」である、と大野晋は解析します。

 しかし、日本人は、「外のもの」をいったん「内・うち」(X経路)の中に取り込むと「否定的に表現する」と説明しているのが金田一春彦です。

  我コレッヂの奇才なく
  バイロン、ハイネの熱なきも
  石を抱きて野に歌ふ
  芭蕉のさびを喜ばず
  (与謝野寛)

この詩の例に見るように自分も否定するというところで、否定が進行します。
この「否定」は、敬語の対象にも及びます。
「貴様」(貴いご様子の方)が「内なる人間」と見なされると「きさま」という「ののしり語」に変化するのが典型例です。
日本人の日本語による「不適合」のパターンとは、次のとおりです。

◎パターン1
  「あの本、どうした?」
  「読んじゃった」
◎パターン2
  「あの人は誰ですか?」
  「隣のおじさんです」
◎パターン3
  (若い妻が夫に)「ぼくちゃん、今日、何時に帰る?」

■「外なる人間」は疎遠なる者として排除し、恐怖の対象(妖怪と同列に扱う)、人間関係をとりきめるものではない、という「無意識」が表現されています。そしてひとたび相手を「内なる存在」ととらえると、どこまでも「省略語」と「曖昧語」の対象に変わり、相手の意思も人格も人間性も「無為化に帰する」という関係づけが成立しています。この「無為化」とは、手を加えないで成り行きの自然のままに放置するということです。この「無為化」というものが「不適合」の実体です。

 この不適合を推進するのが「尊大語」(「貴様」「お前」「おい・こら」など)です。そして「尊大表現」(会社に電話するときの「今日は、お休みします」など)です。これは『瓜子姫』(民話)の説話のエピソードが示すとおり、「自分」と「相手」の「殺害」へと進行していくということは、前回の本ゼミでお話しているとおりです。

分裂病を超える日本語の表現の仕方
 日本人の日本語による不適合の対象と対策をまとめると、次のとおりです。

1.日本語は「主観的な表現になりやすい」(時制を曖昧にするのが典型)。
 ◎対策…Y経路の文法の客観性を書いて、表現する。

2.日本語は、ものごとをつねに否定的に表現する(「行かねばならない」が例)。
 ◎対策…Y経路の文法の「説明の前提」を名詞、名詞句、名詞節で説明する。

3.日本語は、省略形を用いた虚偽を表現しやすい(「あれ」「それ」「これ」など日本語のみの「自己中心の特殊語」(B・ラッセル)を用いることが原因)。
 ◎対策…「いつ」「どこで」「誰が、何が」「なぜ」「どうなる」(時間的経過)をふまえた『予測』を書き言葉で表現する。

カウンセラー養成ゼミ NEWSLETTER 第225号 一部掲載

関連
分裂病と無縁の日本語の表現術 「後藤式文章の技術」


連載
前回:分裂病の解体学・V 「日本語はいかにして成立したか」
次回:分裂病の解体学・VII 日本語の主観・客観・中立表現の構造
参考:脳の働き方の学習のご案内

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脳と行動の診断

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心の病いの予防と解消の仕方の「人間の理解学」が身につきます。

心の病いに気づける「人間への愛情学」が驚くほど身につきます。

「交渉術」の知性と対話の能力が目ざましく進化しつづけます。

相手の心の病理が分かって、正しく改善できるので心から喜ばれます。「心の診断術」

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よくある質問

朝、起きると無気力。仕事にヤル気が出ません。うつ病でしょうか?

仕事に行こうとおもうと、緊張して、どうしても行けません。治りますか?
バックナンバーの一部を9期後半分より、随時掲載していきます。
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ポルソナーレのゼミの様子をYouTubeに公開しました。

脳を発達させる日本語トレーニングペーパー 谷川うさ子王国物語

一部公開しました。
トップページ NEW! 年間カリキュラム 学習の感想と学習成果 「日本人の思考」と「谷川うさ子王国物語」と「グローバル化の恐怖」
学習内容(サンプル) 「言葉」 日本語の影響。その仕組みと感情、距離感、人間関係について
「脳を発達させる日本語トレーニング・ペーパー」の役立て方の資料
『分裂病の自己診断表と自己診断』
男性に嫌われない女性の話し方
女性に嫌われない男性のしゃべり方
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ポルソナーレのマスターカウンセリング

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クマ江
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《クマ江版・おそろし》
スクールカーストと
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受講生の皆様へ 平成25年冬版 ポルソナーレからの真実の愛のメッセージ
受講生の皆様へ 平成25年5月5日 版 ポルソナーレからの真実の愛のメッセージ 詳しくはこちら!

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