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「個人べつの病気と症状の傾向」 No.136

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■「主観」を表現する日本語の文法を、「客観」を表現するためにこれだけは必要です

みなさん、こんにちは。
全日本カウンセラー協会・ポルソナーレの谷川うさ子です。

●日本語の文法は「主観」を表現するメカニズムになっています

国語学者・大野晋によれば、日本語は、「主観」を表現して、「主観」で答える、ということを「文法」の特性にしています。

具体的に文例をあげると次のようなものです。

◎日本語の「主観表現」の文例・1

「あの本、どうした?」
「読んじゃった」

■解説

主観とは何でしょうか?
「自分だけで思うこと」です。
他の人が同じように思ったり、考えているかどうかとはかかわりなく、自分が見たとおりのこと、自分が思ったとおりのことが「本当のことだ」と確信するというのが「主観」です。
これにたいして「客観」とは、何のことでしょうか?
ある個人がどう思うかとは無関係に独立して存在するもののことです。
また、誰が見ても「そのとおりだ。最もだ」と思われる立場でものごとを考える仕方のことです。

文例では、話し手と聞き手の二人がいます。話し手が「あの本」と表現しています。しかし、具体的に何という本のことか?著者は誰なのか?の表現が省略されています。これは聞き手には「何という本」のことか?が分かっているはずだ、という了解の成立が前提になっているので、省略されています。
「聞き手」も「本を読んだ」(何という題名の本か)を省略しています。
「話し手」も「聞き手」も、いわゆる「主語」といわれているものを省略しています。「省略」しても「何という題の本か?」が「伝わる」というのが日本語の「文法」の「主観」の特徴です。
大野晋は、この「省略」しても伝わるということをさして日本語の主観表現の最大の特質だとのべています。

さらに、次のような「省略」の文例があります。

◎「省略」の文例

  1. 「はじめてお目にかかります」
    (初対面のあいさつの場面で。外国人は、「あたりまえじゃないか」と言う)
  2. 「私は、夜一人で音楽堂へ行ってみた。そこには誰もいなかった」
    (ドイツ語では、この文は不十分だという。「私以外には誰も」と言わなければ間違って聞こえるという)
  3. 「お尋ねいただいた本は、ございませんでした」
    (書店の主人が、本を求めに来た客の問いに答える、という状況で。ここでは、「本が無い」とは「現在」のことだから「ございません」とだけ言うべきで、「でした」とわざわざ過去のことのように話すのはおかしい、という説がある。
    この文例では、「お求めいただいた本は、当然、私どもは用意しておくべきところを、それを怠っていたようです。私どもの不注意で用意しておりませんでした」という意味が「ございませんでした」と表現されている、とする。このような意味の内容が「省略」されているという文例である。(金田一春彦『日本語』下巻。岩波新書による))
  4. 「涼しくなりましたね」「そうですね」
    (「涼しくなった」では、「気温が」が省略されている。日本人は、この文では「省略されている」とは感じない。初めからこういう表現の仕方を意図しているからだ。「そうですね」の文は、「あなたの言うことは」と「あなたのとらえた気温の変化は」の二つが「省略」されている)

●日本語の文法が「省略表現」で主観を成り立たせる理由

■このような「省略」がなぜ、成り立つのか?また、日本人は「省略した文」を初めから目的にして言いあらわしたり、書きあらわすのはなぜか?
国語学者・大野晋の研究と考察によれば、次のような理由によります。

  1. 日本人は、「主語」に相当する語句が分からないというのではない。「主語は要らない」という考えが働くのは、これを成立させる日本語の文法の構造があるからだ。
  2. それは、「省略しても理解が可能な人間関係」が前提になっている。必ずしも、「省略された主語」を誰もが明確に理解する知性があるということではない。
    「省略されても理解が可能な人間関係」としか会話しないというのが日本語の文法の特性である。
  3. このような人間関係を「内の人」(うちの人)という。「内」とは「村」という共同体、家の中という「血縁関係がつくる構成体」のことだ。現代では「うちの会社」というように「企業の内部」も「内(うち)」意識の対象である。女子中学生や女子高校生では「グループ」が「内」(うち)になる。
  4. 「省略しても理解が可能な人間とだけ話す」ということは、「外」(そと)の人間とは「話さない」「人間関係をつくらない」ということだ。
    すると、「省略された言語」の、「事実を正確に伝える」「誰が動作、行動をしたのか」「誰が言ったのか」、「なぜその行動を起こすのか」などは「説明しなくてもいい」という文章体が成立する。
    それは、次のようなものだ。

◎日本語の「説明しない」ことを目的にしてつくられた文体の例

  1. 「山路を登りながら、こう考えた。智に働けば角が立つ…」(夏目漱石『草枕』)
    (「登った」「考えた」のは誰か?『草枕』の本文を先まで読むと「余」ということがようやく分かる)
  2. 「秋冬風全く凪(な)ぎ、天に一片の雲なき夕べ、立って、伊豆の山に落つる日を望むに、世にかかる平和のまた多かるべしとも思われず」(徳富蘆(ろ)花『自然と人生』の中の「相模灘の落日」)
    (この「望む」の「望む人」は誰なのか?は、最後まで読んでも明かされないことで有名な文章である。それでも「名文」といわれている)
    (金田一春彦『日本語』(下巻)より)

●日本語の主観表現が人間関係を壊すメカニズム

すると、日本語の文法が、初めから「主観」(事実を説明しない、自分の行動の理由を説明しない、誰が行動したのかを区別しない、などが『主観』です)を前提にしているということは、次のような現実問題では解決が不能ということになります。

◎『ハーバード流交渉術』(三笠書房。ハーバード大学交渉研究所。フィッシャー・ユーリーより)

■質問の仕方・1

「私の事実確認が正しいか、どうか、二、三、質問してもいいですか?」

◎解説

  1. 日本人の日本語の文法は、話す相手(聞き手)を「内の中にいる人」と見なすので、事実についての質問そのものが成り立たない。
  2. 聞き手を「内」(うち)の人と見なすと、「自分の行動のこと」だけを言えばよい、と考える。ここで、自分の行動が伝わらないというときは「外(そと)の人」という扱い方になる。それまでの人間関係がどんなに長いものであっても、その取り決めは放棄される。
    とくに、「恋愛関係」「夫婦関係」「友人関係」で、解決すべき事実をテーブルに乗せて話し合うということはない。自分の「行動を伝えれば、それですむ」という延長で破綻しやすい。

■質問の仕方・2

「あなたがおっしゃっていることを、私が十分に理解しているか、どうかを確認させてください」

◎解説

  1. このハーバード流交渉術の原則は、十分な意思の疎通を必要とする。
    すると、相手の話したことを正しく、概念のとおりに記憶することが求められる。それは「事実は何であるのか」あるいは「何であったのか?」「自分の主張は何であり、相手の主張は何であるのか?」などのことだ。
    しかし、日本語の文法は「過去・現在・未来」という行動の時間と場面の移りゆきの事実を曖昧にして、その人の「主観」の中で、その人が確認すべきものと認識する。だから「意思疎通」のために必要な「事実」は省略されて、説明されることはない。
  2. 人は、自分の言い分が理解されていると感じれば緊張を解き、相手の言い分にも耳をかたむける。
    ここから交渉という話し合いが可能になる。
  3. 日本語の「文法」は「省略」をもってよしとする文体を伝統のものとしている。
    『自然と人生』のような文章の書き方、あるいは話し方は、「どのようにでも、好きなように読んでくれ」という「投げ出しの話し方」になるので、「相手は自分のことをどう思っているのか?」という推測による不安が生じる。
    これが、日本人の分裂病の「人の目が気になる」「人から見られているのが気になって恐怖になる」などの原因だ。

■質問の仕方・3

「あなたがしてくださったことには感謝しています」

◎解説

  1. ハーバード流交渉術では、「人」と「問題」とを分離する、という交渉の仕方をおこなう。ここでは、交渉の相手を個人的に支持して、攻撃するものではないことを表現している。
  2. 「認知的不協和の法則」という認知心理学の用語がある。人間は、二つの相反することを一度に頭の中に思い浮べることはできない、という法則のことだ。原則として、社会的に価値が高い方のイメージを選んで思い浮べる。
    ここでは、この「認知的不協和の法則」が働く。
  3. しかし、日本語の文法は、「内(うち)の人間」は評価して、「外(そと)の人間」は人間的な関係をむすぼうとはしないことを思想として抱えている。したがって、「外(そと)の人間」と見なした人間を「あなたがしてくださったことには感謝しています」などとは言えない。
  4. 日本人は、ものごとを「否定語句」によって「肯定表現」をおこなう。

●「否定語句」による「肯定表現」の例

「雨が降るかもしれない」
「4時にならなければ、帰って来ない」
「あら、ステキじゃないですか」
「これ以上のことは知らない」
「どうすればいいか分からない」
「やろうと思うが、いつになるか分からない」
「見捨てないで」
「やりたくない」
「仲良く話したくない」

この思考パターンを相手に向けると、「相手が自分にしたことの中で、否定的なこと」だけしか思い浮ばないということだ。
この相手への否定的なイメージが、「過去のトラウマが今も昨日のことのように思い出される」という分裂病の離人症にともなう「神経症」の原因になる。

■日本語の文法は、「主観」を表現させることがお分りのことと思います。すると、文法の主観の作用を改善することが、日本語を使っている現在のあなたにも必要です。

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