■ 相談の事例
「会社を辞めて独立して自営で仕事を始めました。夢いっぱいの生活のはずが、薬漬けの毎日、顔の左半分がマヒしている、というおかしな自分になりました」
(白井正浩。45歳。男性。設計事務所自営。岐阜市京町)。
(注・人物は仮名です。特定の人物、地域、団体とは無関係です)。
● 相談の内容
私は、5年前に電気工事会社を辞めて独立しました。自宅の二階を仕事場にして電気設備の工事などの設計、見積り、施行図面などを書いています。建設事務所からの仕事は少なくて、電気工事屋さんが、建築事務所の営業サービスのために私のような自営業を使っている仕事が大半です。仕事をくれるのはおもに電気工事屋さんです。そのほか、自分で設計見積りができない電気工事屋さん、また、自分でやる暇がない電気工事屋さんです。
仕事は、いずれも厳しい期限付きです。この期限を守るために、そのつど苦労しました。毎日、朝2時から3時まで仕事をしました。もっと遅くなる時は、朝の5時、6時になりました。徹夜の仕事が2晩つづいたこともしょっちゅうありました。日曜、祭日も働きました。がんばれば、いつか楽になる日がくる、と信じて夢を見ていました。まじめに、ちゃんとした仕事さえすればきっと認められる、信用がついて仕事も増えるし、収入も増える、と信じてきました。
いつもいつも仕事のことが頭にあって、たまに遊ぶということもできませんでした。
会社に勤めている時には気がつかなかったのですが、同居している姉と私の妻とのいさかい、妻と両親とのいさかいなど、家庭内のゴタゴタが耳に入ってくるようになりました。
姉は、離婚して家にいます。この姉は、母親とも仲が悪く、しょっちゅうモメ事を起こします。
朝会のときにゴタゴタの話を聞かされるので食欲もなくなります。だから、独立して5年間、ろくに朝会を摂ったことがありません。もっと強い性格だったらなんとかなるのでしょうが、そこが私の甘いところで、姉、妻、母、父の4人からいろいろなことを言われると、自分が何か悪いことをしたかのように気分が暗くなるのです。
こういう家の中の人間付き合いの中で不眠症になりました。立っていられない状態になったので精神科にかかり、薬をもらって飲むようになりました。
つい最近は、顔の左半分がしびれて、ジーンとしたシビレ感が感じられるようになりました。医者は、自律神経失調症だと言います。頭の上もジーンとしてしびれています。以前は全く無かった肩コリもひどくなりました。眼に力が入り、目の下にくまができてシワができて、目がつぶれているかのように重く感じられます。眼が半分しか開いていない感じです。半分眠って、半分目が醒めているようなどんよりした眼になりました。
昼間は、家の中の人間関係に付き合わされてあっという間に時間が過ぎていきます。仕事の打ち合わせや現場調査に出かけなければなりませんが、家の中の人間の顔色や、持ちかけられた話が気になって、非常に疲れます。それやこれやで仕事に掛かれるのが夜の9時頃になります。
仕事にかかっても以前のようにサッと集中して取り組むことができなくなり、ラジオを聞いたり、CDを聞いたりしてボンヤリすることが多くなりました。
私は、今、会社勤めの頃とくらべて別の世界の人間関係の中にいるような不安な感じにとらわれています。
● ポルソナーレの「指示性のカウンセリング」とは、こういうものです
日本人は、「左脳」を働かせていないということの病理の事例をご紹介しました。この事例の中のどこが「左脳」を正しく働かせていないことになるのか?がお分りでしょうか。
日本経済は、グローバル競争の中に立たされています。20年前と比べて、世界の労働人口は4倍に増えていて、先進国の労働分配率が低下しています。世界的に所得格差が広がっています。この中で「左脳」を使って、「左脳」のもたらす合理性や普遍性のつくる価値を手に入れた人が「超過剰余価値」の所得を手に入れて、「収益」を急上昇させています。これが世界が一つの「経済社会」になった「グローバル化」の実体です。
事例のケースは、「家の中」で生活しています。「家の中」で仕事をしているという意味での「生活」です。
ここは、非社会性の世界です。社会の「秩序」が全く不問にされるという日本人に特有の、非社会性の世界が形成されています。
広い世界の中で「日本という一国だけの経済社会」とよく似ていて、「家の中」だけに固有の人間関係や時間の秩序(自然時間の秩序)がつくられています。これが日本人の「右脳」だけが生み出す内容です。
この中に立つと事例のような自律神経の症状(うつ病の症状)が起こることはごく当り前の自明のことなのです。
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