みなさん、こんにちは。
全日本カウンセラー協会・ポルソナーレの谷川うさ子です。
●「我が子を餓死させた事件」
◎事例・「大阪市西区・23歳母親による、3歳と1歳児の育児放棄・餓死事件」
- 平成22年7月31日の日本経済新聞の報道によれば、大阪市西区で、「23歳の母親」が「3歳の長女」と「1歳の長男」の育児を放棄して餓死させる、という事件が起こっています。
- この23歳の母親は、昨年(平成21年)の5月に離婚して、母子3人で生活していました。そして、今年、平成22年1月より「風俗店」で働き始めました。
この「風俗店」に働き始めた直後から「育児放棄」の「バッド・イメージ」が表象しはじめています。
「2人の子どもに、ご飯をあげたり、水をあげたり、風呂に入れたりするのが嫌になった」(23歳の母親の話)。
- 「23歳母親」は、平成22年6月下旬ごろに、3歳の長女と1歳の長男を、マンションの自室に残して家を出ました。そして「友人」の家を転々と泊り歩きました。
「ご飯も水も与えなければ、2人の子どもは生きてはいけないということはよく分かっていた。
その後、自宅に戻ってみると、2人の子どもはすでに死んでいた。助けなければならないという気持ちは全く無かった。だから何もしなかった。
家を出たのは、2人の子どもがいなくなればいい、と思ったからだ。子どもを殺すために家を出た。」
2人の子どもは、水も食べ物もなく衰弱死しました。
●「23歳母親」の脳の働き方
■現在の日本人のこのような事件を考える時は、「脳の働き方」のしくみから理解しなければ、何も本当の真実は分からない、というように、現在の日本人の心・精神の病理は進行しています。
なぜか?というと、この「23歳母親」は、「2人の子どもがいなくなればいい」「水も食べ物も与えなければ、2人の子どもは生きられないということはよく分かっていたし「家に戻ったら2人の子どもは死んでいた。助けなければならないという気持ちは、全くなかった」等と話しているからです。そして6月中旬から7月いっぱいまで、「2人の子どもの遺体」を遺棄して放置しています。
客観的に見ると、この「23歳母親」の話す言葉だけを見ると、「自分が今、考えていること」「自分の今の行動」をよく自覚しているし、よく理解もしているということになるのです。
●今の日本人の「自己崩壊」のメカニズム
すると、この事件をモデルにしてみると、現在の日本人の「心・精神の病理」とは、「脳の中」に「二つの思考」が同時に、並列して思い浮んでいるという特徴があるということが分かります。
「二つの思考」とは、「全く正反対の思考」ということです。
一般的に誰もが考えることは、「人間は、二つのことをいちどには考えられない」というものです。
しかし、現在の日本人の多くは、この「二つの相反することを一度に考える」ということをおこなっています。
「大阪西区・2人の幼児を餓死させた事件」では、「2人の子どもに水や食事を与えて、風呂にも入れる」ということと、「2人の子どもに、水や食事を与えないままにして放置する」という両極端の「考えたこと」が、同時に、脳の中に思い浮べられつづけています。
そして、「2人の幼い子どもを餓死、衰弱死させる」という「考え」を実行に移しています。
さらに、家を出て数日後、自宅に戻って2人の子どもの遺体を見て、「助けなければ」という気持ちも考えも思い浮んでいません。
この「23歳母親」はどういう脳の働き方をしていることになるのでしょうか。次のとおりに説明することができます。
●右脳・前頭葉の「虚像」
- 二つの「思考」が思い浮ぶのは、「右脳・前頭葉の『虚像』」です。
- この『虚像』には、通常は「言葉の意味」が「像」の形象になって思い浮びます。
- この『虚像』の「言葉の意味の像」は、二通りの経路で表象します。
A・一つの経路は、「左脳・前頭葉」に表象する「言葉の意味」が表象させる「像」です。
B・もう一つの経路は、五官覚の知覚の情報が、上向システムの回路を通って、「大脳辺縁系の欲求の中枢神経」にやって来ますが、この「欲求の中枢神経の記憶の内容」が『虚像』に表象して思い浮ぶという場合の「像」である。
- Aの経路は、「一般化された日本語」の言葉とその意味がつくる「像」です。「23歳母親」は、この「一般化された日本語」で、結婚し、子どもを産み、そして育てました。
しかし、その言葉の「正常な意味」は『虚像』に表象していなかったのです。
- 「子育てのための日本語」の基本型は、「敬語体系」の「内扱い」の言葉です。
●日本人の「内扱い」の対人意識のメカニズム
◎日本語の「敬語体系」の「内扱い」の言葉の例
- 親愛…相手が喜ぶから自分も喜ぶという関わり方のこと。
- 気分…相手のことを知的に理解して、相手の立場に立って考える。
- 心情…相手を励まし、勇気づけて、相手の成長を喜ぶことを考える。
- 感情…相手の生理的身体に直接、気持ちのいいことを一方的にやってあげることを考える。
- 愛狎(あいこう)…なれなれしくすること。遠慮や気兼ねがなく、自分の感情や欲求をあからさまに押しつける、という関わり方のこと。
- 軽蔑(けいべつ)…自分の期待や欲求のイメージにそぐわない相手の言葉、行動をののしり、バカにする考えや行動をあらわすこと。
- 侮蔑(ぶべつ)…相手を無価値のものと扱う。社会的な評価や自分が果すべき責任、相手から受け取った恩義などの考えを破壊するための考えや行動をあらわすこと。
日本の原神話の『瓜子姫』では、「内なる関係の相手の殺害」がモデルになっている。つまり、日本人は、相手をいったん「内扱いの対象」にすると、「相手を殺害する」まで「侮蔑のバッド・イメージ」を表象しつづける、という「敬語体系」の形式を誰もが持っている。そして、「外扱い」の敬語は知らなくても、「内扱い」の敬語の形式は、よく知っていて、よく学び、身につけている。
■「23歳母親」の右脳・前頭葉の『虚像』には、上向システムを通って、大脳辺縁系の中の「線状体」の好き・嫌いの感情や、「中隔核」の性的な記憶のエピソードを「右脳系の海馬」から表象させたのです。
これらの表象させられた記憶の「像」は、「内扱い」の敬語体系の形式に乗せられて「バッド・イメージ=主語の像」、「美化のイメージ=述語の像」という統一した像として構成されます。
●「23歳母親」の「バッド・イメージ」と「美化のイメージ」および「美化の妄想」
■「23歳母親」の「右脳・前頭葉」の『虚像』に表象した「バッド・イメージ」(主語の像)と「美化のイメージ」(述語の像)とは、どういうものでしょうか。
◎「23歳母親」の「バッド・イメージ」(主語の像)の内容
- 20歳前後で結婚して、子どもを産んだことに必然的にともなう「子育て」「育児」など、社会性の知性(=社会化教育の学的な知性)の言葉の欠如と貧困。
- 離婚」に必然的にともなう、相手の男性の「社会的な責任」や「道義的責任」の破壊の体験が表象した。
このことは、そのまま自分の子どもの社会化や社会的成長の破壊に反映する。
- 離婚後、「風俗店」で働くことにより、「一対一の性的な関係の社会性の能力」を破壊した。これは、「日本語の敬語体系」の『内扱い』の「親愛」の関わり方の破壊として突出する。
「心情の能力」という「女の能力」を破壊して「女一般の世界」から転落して孤立した。
◎「23歳母親」の「美化のイメージ」(述語の像)の内容
- 社会参加せずに「引きこもり」と同義の「恋愛」や「結婚」によって、他者に、自分を保護させて無為な安心と安定を享受する。
- 2人の子どもを出産することで「自分は女としての価値がある」という意識をもち、他の社会的な知性や社会的能力を不当に見下して、倒錯した優位感を抱く安心と楽観のイメージをもった。
- 社会と関わらずにすむ「非社会の状態」の中で暮らし、社会的な秩序にシバられないことが、自分を高く評価させることになるという錯誤した優越感のイメージを表象させた。
■「バッド・イメージ」とは、「物を壊す」「関係を壊す」「秩序を壊す」「自分の責任や義務を壊す」「自分の発言を壊す」「自分の知性を壊す」「自分の理性心を壊す」「自分の生きる能力を壊す」「社会的な関係を壊す」「自分の健康を壊す」「正しい認識を壊す」、という『虚像』の中のイメージのことです。その「材料」は何であってもよく、自分の過去の記憶のエピソードに合致するものならどんなものでも「材料」になります。
「23歳母親」にとっては、「恋愛」も「結婚」も「子どもを産んだこと」も、「子どもを育てたこと」も、全てが「バッド・イメージ」の「材料」になりました。
●「美化のイメージ」と「美化の妄想」
■「美化のイメージ」とは、何のことでしょうか。これも『虚像』に表象します。「美化のイメージ」の生成のされ方は、「バッド・イメージ」によって破壊された「現実」が、全て「美化のイメージ」になります。
「23歳母親」にとっての「美化のイメージ」とは、「恋愛して性の関係をもったことで、社会に背中を向けて社会秩序から自由になったと思ったこと」「結婚して、子どもを産んだことで社会性の知性の習得から自由になったと思ったこと」、「離婚して家庭を壊して、男性(夫)の社会的な義務や責任を壊して無責任性の安心を得たと思ったこと」、「離婚して、風俗店で働いて、トカゲの脳の性の快感を至上とする快楽のイメージを恒常的に思い浮べること」などです。
「子どもに水を与えることや食事を与えることが嫌になった」というのは、美化のイメージを美化の妄想に変えるための「材料」にしかすぎません。ここでは「風俗店」で体感した「トカゲの脳の快感のイメージ」が「自分にとっての唯一、決定的な安心である」とむき出しの「自我」が表象されているので、このイメージと不整合の「子育て」「子どもの生命を守ること」などの現実は排除する、と思考されているのです。
■「23歳母親」は、「右脳・前頭葉の虚像」に「バッド・イメージ」(主語の像)と「美化のイメージ」(述語の像)を表象させて、「2人の幼い子ども」と「離婚した夫」の心身の生命や社会的な生命を破壊して「美化の妄想」を実現させた、というのがこの事件の本質です。この本質は、「脳の快感原則」にもとづいて、「これは良いことだ」と確信されています。
その直接の動機は、「左脳・前頭葉」に、「日本語の敬語体系」の『外扱い』の「敬語」の内容を全く知らなかったことが原因と理由です。そして、今の日本では「中学校で弁証法の思考の仕方を勉強している」けれども、この「弁証法」の「命題を証明すること」「証明の仕方は、演繹法か、帰納法であること」を、中学校の義務教育で全く身につけてこなかったことによる「社会参加の能力の自己破壊」がもう一つの原因と理由です。
例えば、「帰納法」が分からないとは、「離婚する」=「子どもの社会化はない」=「自分の社会からの孤立は決定的になる」という推論による知性の脳の働き方が退化している、ということです。
●あなたとの共通点とは何か?
この事件は、女性を対象とするとき、「清心女子高校事件」や「兵庫県・宝塚市中3女子放火殺傷事件」と軌を一にして、この二つの事件の延長点で起こっている事件です。
現実の日本の社会を成り立たせている二つの「日本語」(和語と弁証法の思考の仕方の二つの日本語です)にたいしての「不適合」ではなく、「二つの日本語と、二つの日本語がつくっている日本の社会の現実を破壊している」ということに本質があります。そしてこの本質は、全ての日本人に共通しています。ここが重要なところです。
この事件をとおして個別に当てはまる教訓と、「他者から学ぶ」という客観的な意義をくみとりましょう。
■ポルソナーレは、日本人の脳の働き方の解明をふまえて、「左脳・前頭葉」への「二つの日本語の正しい習得」のテキストを開発中です。ぜひ、ご期待ください。 |