みなさん、こんにちは。ポルソナーレの谷川うさ子です。
平成20年5月11日の日経の「読書」欄に、浅野智彦(東京学芸大学准教授)が二つの本をとりあげて解説しています。
『ロストジェネレーション』(朝日新聞取材班)と『日本溶解論』(三浦展、プレジデント社)です。
「ロストジェネレーション」とは、今、「25歳」から「35歳」までの人々のことです。約2千万人いるとされます。卒業の時に「景気の低迷」と「日本の雇用構造の転換期」にぶつかっていたために、「企業」からも「国家」からも「見捨てられてしまった」と意識している、ととらえます。
身近な人間関係だけを大事にするあまりに、距離のない対人意識のための「関係意識」をつくっている、と説明します。
「空気を読む」「キャラを立てる」などがそのスタイルです。
「空気を読む」とは、「優しい関係をつくり、そのような雰囲気になるように気遣い、相手をキズつけないようにしながら、自分の存在をアピールする(キャラを立てる)」ということです。
「ジェネレーションZ」とは、「22歳から35歳」くらいまでの幅の年齢の人々のことです。「自分は見捨てられている」という思いをつよくしている、という年齢層だと三浦展は「定義」しています。
人間関係の距離をよりつよくちぢめようとする「見捨てられ意識」がつよいとされます。
その「距離を縮める」という願望と想いを「スピリチュアル」に求めて「身近な人をしょっちゅうホメる」(リスペクト男子)「つながりをつねに求めつづける」(mixi男子)「空気をよく読むこと…マンザイのようにツッコミをよくする」「ケータイ電話に出ない、アドレスを消すことで人間関係を整理するリセット男子」などの「人間関係の意識」をもつ、とされています。
浅野智彦は、今の日本の「若い世代」は、「人間関係」が「身近な人間」「学校のクラスの中」「地元」だけに限られるので「社会的に不利な状況を生む」「互いの共通の権利や利益を生み出すには至らない」「社会を生き延びるための対人関係の能力になるには至っていない」などが「弱点」であると指摘します。
しかし、ポルソナーレの「脳の働き方のソフトウェアのメカニズム」の解明から「日本人の病気の生成のしくみ」を明らかにしてみると、三浦展らが論じている「キャラを立てる」「空気を読む」「ケータイで人間関係をリセットする」「スピリチュアルな想いにとらわれる」という「対人関係の在り方」は日本人に特有の「心の病気」を生成する「脳の働き方のメカニズム」がつくり出してきているものです。
日本人の「対人意識」は、昭和の初めの頃から今に至るまで、ずっと「自分と父親」「自分と母親」との「負の感情」によって言いあらわされてきています。次のようにです。
I期…家を出る。親から離れて「自立する」。
II期…「母親が嫌い」「父親がキライ」
III期…学校や職場で「イジメられる」「学校や職場に行きたくない」「家の中で暴力をふるう」「家で精神科のクスリを飲みつづける」
浅野智彦がとりあげている「ロストジェネレーション」「ジェネレーションZ」の年齢と世代とは「III期」に相当する人々のことです。
ここには、共通する病理の特徴があります。
1.「社会経済的から見て、自分にとって不利、かつ、不利益な状態をつくり出している」
2.「自分の権利、尊厳を正しく守るためには機能していない」
3.「現代の日本の社会を生き延びるための対人意識と対人能力にはなりえていない」
(浅野智彦の指摘より)。
これは、「社会不適応」という病理の症状ということになります。
では、病理の実体とはどのようなものでしょうか。
■相談の事例
「私は、35歳の女性です。これまで働いたことがありますが、いつも、仕事の上でミスをして、そのことにひどいダメージを受けます。
自分ではちゃんと仕事をしているつもりなのに、明らかにおかしいことをしでかすのです。それで、いたたまれなくなって辞めます。
今は、仕事をしていません。
何もせず、家族に依存して、廃人のように暮らしています。私は、このまま腐ったように生きていくのでしょうか?」
(土岡裕子。35歳。主婦。京都市左京区岩倉)。
(注・人物は仮名です。特定の人物とは無関係です。また特定の職業、団体、地域とも無関係です。相談の内容もいくつかの内容を合成して再構成してあります)。
■相談の内容
私は、小さいころから父が嫌いでした。母親に暴力をふるい、暴言を吐くような人だったからです。母親は体調をくずし、家事らしいことはできなくなりました。私は、一人っ子です。父親の機嫌をとるように母親の代わりに家事のようなことをしてきました。私は、今も、家事は嫌いです。
自分にとって楽しいことだけにしがみつく生活を中心に生きています。宝塚を見るとか、歌手の追っかけをやるとかです。仕事はいくつも転々としてきました。人が見て、常識では考えられないようなミスをして、そのたびに怯えて、みんなが私のことをバカにして、悪く言っている気もしていたたまれなくなって、辞めてきました。
私は、結婚しています。無理に結婚を迫って、押しかけ的に住みついてそのまま成り行きで結婚しました。一人で生きていくことも、家族と一緒に生活することもできないので、ノラ猫がどこかの家にすみつくように入りこんで、世間体もいいので結婚した、というところです。性の関係もなく、子どももいなくて、家事もしないので、友だち以下のような関係です。毎日、自分が腐ったリンゴのように腐っているような気がします。メールとインターネットだけの毎日です。人の目が怖いので、家の外に出る気もしません。家の中は、私が腐っているのでいつも生ゴミのような臭いがしみついていることに時々ですが、気づきます。
私は、このままどうなってしまうのでしょうか?」
●ポルソナーレの指示性のカウンセリングとはこういうものです
「グレーゾーンの中の新しい病気」のタイプ「離人症」で「もうろう状態」「乖離」「意識狭窄」という分裂病が広がっています
ここにご紹介している病理は、「働かない」「主婦とは名ばかりで家事をしない」「性の関係もない」「夫とも、家族との関係もない」「友人との関係もない」という現象が特徴です。社会犯罪を犯しているわけでもないので、「社会秩序」を毎日、崩壊させているということでもありません。
では、社会的に健全か?というと、決してそんなことはなく、ただ「入院していない」「薬を服用していない」「治療を受けていない」というだけのことにしかすぎません。相手のために、あるいは自分のために、もしくは「社会のために」「自分の血縁のために」、価値あることは一切、何もなく、ただ、浪費と消費の日々を送っている、という状態です。
さらに、大きな特徴は、自分のこのような状態にたいして、「これはよくないことだ」という自覚をもてずに、そのための学習、および改善のための社会性のある訓練にも取り組むという「理性心」やその「思考」をもてないところが最大の特徴です。
語られているのは「何が不安だ」「何ができない」「何をやれない」「何を楽しみにしている」といったことです。これを整理すると、次のようになります。
- 「離人症状態」……自分の現実にたいして無感覚。自分の身体の機能や能力が「言葉」のとおりに動かせない無能力の状態になっている。
- 「乖離」(解離ともいう)……社会的な行動や社会的に意味のある行動や思考から、「感情」が切り離されて「認知バイアスのイメージ」をつくり、この「認知バイアス」を認識した記号性のコトバとその行動を意識して、「現実的なこと」から思考が遊離している。
- 「投影性自己同一化」……自分の負の「感情」を中心にしてつくった「認知バイアス」のイメージと、触覚的な認識でつながっていくために、たえず「気分のいいことのイメージ」をコトバや行動にあらわして、演繹的にふるまい、現実の人間関係に悪意や攻撃的な言動を向けて、これを快楽の源泉にしている。
脳は、「言葉」を生成します。行動には、言葉が必要です。すると脳は、「行動」も生成します。
その生成のメカニズムの説明は省略しますが、ポルソナーレは、この生成のメカニズムを論理実証的に明らかにしました。
すると、「脳」は、「病気の言葉」と「行動」も生成します。
相談の事例は、「病気の言葉」と「病気の行動」が生成された結果の目に見える現象のことです。本人は、健全かつ、健康な「言葉」と「行動」のつもりなのです。不安や恐れは感じられてもそれは、「動機」に変わっています。
「病気の言葉」は「認知バイアス」と「認識バイアス」としてつくられて記憶されるのです。
これが「記憶のソースモニタリング」のたびに社会的な場面での「半行動停止」から「行動停止」へと移行して本格的な「うつ病」と「分裂病」の病状を生産するに至るのです。
●ポルソナーレの「脳の働き方」を学習して、この日本の現実を生き延びて、豊かな人生を送りたい方は、こちらをどうぞ。
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