◎個別の相談の事例
「私は、中学、高校からずっとゲーム、ケータイにはまりこんで、学校にも行けなくなりました。今は、スマホにはまり、寝る直前までゲーム中心のアプリを見続けています。働きにもいけず、生活は親に頼りきっています。なんとかスマホを手離したいと精神科に行きました。
アルコール依存症と同じで、断酒界のような断スマホ会に行った方がいいと言われました。私の人生は、どうなっていくのでしょうか」
(富岡江津夫・35歳(仮名)、無職。岐阜県可児市中恵土)
(謹告・相談者は仮名です。住所、地域、職業、団体も仮名です。相談の内容も合成し、再構成しています。特定の個人の相談、悩みとは一切、無関係です。)
①私は、大学を卒業した身ですが、いちども社会に出て働いたことがありません。せっかく高い授業料を出して大学に通わせてくれた親には心から申し訳なく、すまない気持ちでいっぱいです。
高校、大学と学校に行けたのは、今思うと不思議です。
私は、大学に在学中から神経科、心療内科に通っていました。
そこの
医師から言われたことがらいます。
「あなたは、悩みをもてあそんでいる」「中学生くらいの精神年齢である」「この世の中では、男性も女性も、自然に結婚できる人、結婚できない人、結婚してはいけない人に分かれていく。
あなたは結婚してはいけない人の部類に入っている。
自分のことだけしか考えていないからだ。それは、そらおそろしいくらいに徹底している。あなたのような男性は、結婚すると、自分のことしか考えないので家族に苦痛だけを与える。
家族が苦痛で苦しむと、それを自分への愛情だと取り違える」。
その医師の話では、両親に過度な愛着をもって育った人が大人になると、依存心の強い人になるといいます。
「
依頼心が強くて、すぐに不満を感じる。
不調になると、両親からもらった保護を、他人に求める。他人が依頼心を満足させてくれないと、ゲームとかスマホとか、人によってはギャンブルだし、人によっては脱法ドラッグだし、または、他国ではテロで、日本では、長崎・佐世保事件のA子のように破壊によって依頼心の対象に同化するかもしれない」と言います。
②私の両親は、とても明るい性格でした。母親は私に甘く、とても可愛がってくれました。しかし、父親は私と同じで、とても無口でした。私が母親にわがままばかりを言うと、父親は私を家から出したり、狭い部屋に閉じこめたりしました。父親についてはそういう記憶があります。
小学3年生から4年生の頃、私は、急におとなしくなりました。
それはゲームのせいでした。
朝から夜までずっとテレビゲームばかりをやって、友だちと遊ぶということがなくなりました。
③中学生になっても、ゲームにのめりこむという毎日がつづきました。クラブ活動は、とても体力がなくて、バスケット部に入ったのですが、体をこわしていつも見学ばかりしていました。
そのためか
先輩にいじめられて、対人恐怖になったのです。体力がなくなり、毎日体がだるくて、勉強もやる気がしません。
そこで、テレビゲームばかりをやって、学校をよく休んで家でゴロゴロして過すような日がつづきました。
④高校生になると友だちができるのではないか、テレビゲームばかりの毎日と縁が切れるのではないか?と期待しました。
しかし、
友だちの言うことや話の内容に全く興味をもてないのです。
それどころか、友だちの話すことを聞いていると、突然、右の耳が聞こえなくなっているのです。相手が右側に座ったり、立つと、相手の話は全く聞きとれません。
それで
あやふやな言い方や話をすると、相手は不快そうな表情をして、何も言わなくなります。しかし不思議なことに
自分が話す時には、相手の返事はよく聞こえるのです。それで、
自分だけが一方的にしゃべると、いつまでも話すことが止まらないので、気まずい思いをすることがよくありました。
⑤大学に入ってからも、ゲームに依存する毎日がつづきました。友だちと、女の子と遊びに行こうと誘われても、
無口なために女の子と話せないと思い、気まずくなるとか、相手に話しかけられても何も答えられない、そのときはどうしようと思い、
いつも断ってきました。学校から帰っても、頭の中には悪いことばかりが思い浮んで、そこでインターネットのゲームにのめりこんでやっとその日を終わるという毎日でした。
⑥大学では、「卒業後研究会」に入りました。
「2008・秋・リーマンショック」以降、世界の経済状況は極端な格差が起こっていて、しかもこれが現実の本当の姿だという教授のレクチュアを元にして作られた研究会です。
学生が20名ほど集まり、企業研究や、仕事の模擬研修などを研究しました。
私は、この中で友だちをつくろうと思い、参加を申し込みました。
しかし、いつも誰とも話すことができず、金融問題となると言葉の意味もさっぱり分からず、大学に行くのが辛くなりました。大学に行くのがつまらなくなり、
たくさんの学生の中で孤独の毎日をすごすのが苦痛になりました。
教授のところに行って、私は何をすればいいのでしょうか?と尋ねました。教授には、「今ごろ、何を言っているんだ。君が何もしないから他の人にやってもらっています」と言われました。
その日から大学に行っても、何もすることがないと思い、家に帰ってゲームをしたり、オンラインゲームで暇をつぶしてごろごろする毎日になりました。
自分はもうダメだ、一生この性格のままだ、とばかりを考えて、とうとう大学にも行かなくなりました。
しかし、試験だけは、友だちのノートを見せてもらって受けて、形だけは卒業できたのです。
⑦大学を卒業してからは、ずっと家にいます。働きに行こうとか、家の外に出ようとか、高校時代の友だちに会いに行こうとかは
思うのですが、何も実行しません。テレビゲームかネットのオンラインゲームか、スマホのアプリのゲームばかりをやりながら、
自分はどうしてこうもふがいないのか?自分は、どうして人並に人間関係をつくれないのかと、胸が痛みます。毎日、ゲームをやっても気力の充実というものがなく、
孤立の淋しさと、焦りだけを感じています。私の周りだけ灰色のよどんだ空気が流れているという思いでいっぱいです。
神経科の先生から、「ゲーム依存症だ。アルコール依存症と同じだ」と言われました。「その性格は直らないだろうが、態度は治せる。しかし、態度を治せるのは自分だけだ。他人になんとかしてもらおうとすると、そこで依存の対象が変わるだけだ」という指摘を受けました。
私のこの努力しない病は治るものでしょうか。
(
謹告・相談者は仮名です。地域、職業も特定の職業、団体、地域とは全く無関係です。相談の内容も合成、再構成しています。熊野クマ江)