◎個別の相談の事例
「私は看護師です。高校の頃から口臭がひどくなり、やがて体臭が気になるようになりました。家族からも臭いと言われて、一人で生活しています。職場に行くたびに、毎日、会う人会う人に『私って臭いかな?体臭がきついかな?』と尋ねずにはいられません。
みんな、笑うだけです。しかし、態度やしぐさで『変わっている人!』と見ているのが分かります。私も、結婚というものができますか?」
(松山加奈子(32歳・仮名)、看護師。岩手県二戸群一戸町西法寺字関屋)
(謹告・相談者は仮名です。職業、団体、地域、住所も仮名です。相談の内容も合成し、再構成しています。特定の人の悩み、相談とは一切無関係です)
①私は、高校の頃に、自分の口臭が気になりました。
誰かから臭いといわれたのではありません。パソコンでゲームをしている時に、左手を自分の口元に当てていました。この手の平に口臭がこもって異常な匂いがしたのです。
病院に行きました。胃の具合も悪かったので診てもらったのです。医者は、軽い十二指腸潰瘍だと言いました。薬をもらって服用しました。胃の具合は良くなり、通院しなくなりました。
しかし、口臭は治らなかったので薬を飲みつづけていました。
②すると、学校で、自分の体臭が気になり始めたのです。ふと他の女の子のしぐさを見ると、その人は顔をそむけて、臭いを避けるような所作をするのです。
タバコを吸う人が近くにいると、その人のタバコの煙を顔をそむけて避けるしぐさをしますが、その所作と全く同じです。
この日から私は、口臭と体臭とが気になる、という
二重の苦しみの日々が始まったのです。
この苦しみは、パソコンでゲームをしているときだけは忘れられました。
③私は、体臭が気になりながらも看護師になりました。よく「木の葉を隠すには林の木の葉の中に」といいますが、そんな心境でした。
ほとんど本能的に、自分の体臭、口臭を隠すには病院しかないと思いました。
高校のころ、胃の具合が悪くて病院に行ったとき、医師に、口臭がしますか?と尋ねました。内科医の医師は
ぜんぜん臭わないと言いました。
病院にはいろんな薬品の匂いがします。アルコールだの塗り薬だの消毒薬だの、です。
こういうところにいると口臭も体臭も気にせずにすむ、と思いました。この臭いがする、という神経症が一生つづくのなら、病院に勤めるしかないと考えたのです。
④看護師になってみると、今度は通勤の電車の中が辛くなりました。誰もが私のことをあからさまに避けて、遠ざかります。
満員の電車なのに、私の周囲だけが人ひとり分の空間ができるのです。
私は、生きていくことがつまらなく思えてきました。
職場に行き、「私って、臭いかな?臭うかな?」と
尋ねずにはいられなくなりました。
尋ねられた人は、ただ笑うだけでした。
それが返事だったのです。
何人かの人は、仕事を辞めていきました。私の体臭と口臭がひどいので耐えきれなかったのだ
と思いました。
⑤「発臭恐怖パーレック」という民間の治療機関に行きました。
私の被害妄想だと言われました。
高いお金を払ったのに、結局は、自分の力でしか治せないと気づきました。
しかし、
一人で生活をしていると、何をすることもなく、ただ、
パソコンやスマホやらで、ゲームばかりをして過す毎日です。
私の両親も、私の口臭と体臭を嫌がっているので、家にも帰りたくありません。
3年前に病院に出入りする業者の人で好きになった男性がいたのですが、その人は転勤で地方に行ってしまいました。
誰もいない一人の部屋でその人のことを思い出すと淋しくなり、そしてまた、ゲームにのめりこむということをおこなっています。
人間関係の能力というものが極端に劣っている気がします。
私も、恋愛とか、結婚というものができるのでしょうか。
(
謹告・相談者は仮名です。地域、職業も特定の職業、団体、地域とは全く無関係です。相談の内容も合成、再構成しています。熊野クマ江)