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全日本カウンセラー協会・ポルソナーレのマスターカウンセリング
読むだけで幸せになる手紙・人が好きになれる物語 |
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私はデパートで婦人服の売り場を担当しています。 お客さまの好みや希望のデザインを予測して、「どういうお好みをお探しですか?」と言葉を引き出すことから接客を始めます。 お客さまは、迷いながら望みの服を見つけようとしています。わたしの軽い問いが耳に入っても返事の間にちょっとした空白ができます。 お客さまの言葉を待って、「これなどはいかがでしょうか?ご希望のイメージに近いでしょうか?」と二点ほど、服をお見せします。一点だけしかお見せしないと、決めてくださいと圧力がかかります。二点なら選んでいただく楽しさを味わっていただけます。 わたしは、仕事の中でお客さまとお話をするのは、自然に言葉が出てきます。お客さまとわたしの言葉の間に空白があるからです。間があるのでスムースに話せます。明るく、楽しそうに打ちとけて話せます。 お客さまからの評判もよくて、気持ちよく買い物ができましたと感謝のお言葉をいただくこともあります。これには自分でもちょっと驚きます。 わたしは、職場の中では全く話せません。同僚の女性が、帰りに軽く食事に行こうと誘ってきてもすぐに避けます。みんなと一緒にお茶をしに行くとか、ビールを飲みに行くとかなど、一度も行ったことがありません。 行きません、ということだけのこともなるべく話すまい、話しても用件を伝えるだけの言葉しか言えないのです。 ほんとうは、みんなと一緒にどこへでも行ってたくさん冗談を言いたいのです。明るくておもしろい人だと思われたいのです。 男性社員には、気楽に話せる可愛い女性だと見られたい。 でもそれができません。 同じ職場の女性がおもしろいことを言うとまわりの人がどっと華やかに笑います。みんながいっせいに話しかけて可愛がります。そういう同僚の女性を見ると全身から力が抜けて、くずれ落ちそうに悲しくなります。 そして、いいなあとうらやみます。わたしもあんなふうに話せたらいいのにとじっと見ています。悲しみの暗い気持ちの中に筋違いの憎む気持ちがこみあげてくるので目をそらします。この妬みの気持ちがわたしにヤル気をなくさせるのです。 山田春子さん(仮名、34歳)のお手紙です。 山田春子さんは、日本語の重要なしくみのひとつの内扱い、外扱いという日本語の使い方を知らないので困っていると言っています。日本語の内扱い、外扱いは中学校の国語の教科書にもさりげなく説明してあります。高校入試の試験に出ることはないので、ほとんどの人が忘れてしまいます。 日本語の内扱い、外扱いは、奈良時代からつづいている日本人の暗黙のルールです。黙契(もっけい)といいます。法律に定められていないけど、日本人なら誰でも知っている隠れていて見えない掟(おきて)です。 外扱いとは、分かりやすいところでは、学校、職場の中の言葉のことです。 人間関係では、言葉を自分から言い表すことが日本語の暗黙のルールです。 家の中の人間関係は「内扱い」です。家の中では親など年上の人が年下の人に話しかけます。これが内扱いの暗黙のルールです。 外扱いでは、年下の人、地位の下の人が上の人に話しかけるのが暗黙の掟(おきて)です。 山田春子さんは、日本語の暗黙のルールが分からなくて困っているといっています。 わたしは、このままでは恋愛もできないと心配になりました。会社の帰りにネットで見た有名な占い師のところへ行きました。私の性格をズバリと言われたので驚きました。もっと驚いたのは「父親の性格が影響している」という話です。 父親は、たしかに自分から話さない人です。自分から話さない父親は、家庭の中の人から好意をもたれない。だからあなたの「話そうとしても言葉が出てこない」「話せる人は数人に限られる」という性格は一生、治らないと言われました。 諦めれば、毎日、気力がなくなります。本当に心の病気にもなってしまうかもしれません。 ポルソナーレに相談しました。 「お父さんは、あなたの話を聞いて、すぐに返事の言葉を話しますか?」 たしかにすぐ返事をします。でも、私の話すことを否定します。 「それが男性の内扱いの話し方です。あなたのことを否定しているのではありません。男性は、自分の行動が可能なことしか外扱いができないのです」 そうだったのか。男性は、ふつう、自分から自分のことを話すって、できないんだ。わたしは、父親のことを誤解していました。 自分から、自分のことを話さないだけで、私のことは好きだったんだと分かりました。 わたしは、中学生のころのように、心が晴々して足元も、お腹も軽くなりました。 日本語の内扱いは「親愛」という関わり方があります。「自分のことを話す」のが「親愛」です。職場では、「自分のことを話す」のが「外扱い」の「敬愛」というのだそうです。 家の中で自分から話せば「親愛」、話してみると、父親にすごく親しみを感じます。懐かしい子どものころを思い出して優しい気持ちになりました。 職場で、自分から話せば「敬愛」です。 先輩も後輩も、話の間に空白がなくなって温かい空気が通い合います。ニガテだった主任さんの人柄も好きになりました。 |
谷川うさ子さん |
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