ポルソナーレのサイト内検索
全日本カウンセラー協会・ポルソナーレのマスターカウンセリング
読むだけで幸せになる手紙・父親が好きになれる物語 |
---|
わたしは、大学を卒業して6年間ほど金融機関で働きました。仕事を辞めてずっと家にいます。自分が自分ではなくなったのに疲れました。頭の中で何を考えればいいのか分からなくなっています。 こんなふうにお話すると、ちゃんと自分のことを分かっているように見える、とお思いになるでしょうね。 わたしは、中学生のころもそうだったのですが、高校生になると、いつも勉強のできる人のことを考えていました。あの人は、ここでどういう表情をするのだろう、この勉強をどんなふうに感じて、どんなふうに分かったと思うのだろう?と考えるのです。 そんな人のことを考えるよりも、目の前の勉強に集中して、書かれている言葉を書き取るなり、文章を書き写すなどして、辞書で意味を調べればいいでしょうとお思いになっていませんか。 わたしも、なんどそう思ったかしれません。 でも授業中や、家の中にいても自分の手足はひとりでに勝手に動いているようで、学校にいる、家の中にいる、という実感がもてないのです。 高校のころから大学に行っても、いつも頭の中では誰かのことを想像していました。あの人だったら、ここでこんなふうにしゃべるだろうと想像します。そしてそのとおりに話してみる、顔の表情も想像したとおりにつくってみるというふうでした。 わたしは仕事の中でも、自分の他者への感じ方、知覚の仕方を否定していました。立派そうな人、いいなあと思う人の真似をします。頭の中だけで真似をするので、実際にそのとおりに行動するのではありません。 わたしの頭の中には、とにかく違う人間に見られたい、自分もあの人のようになりたいという願望でいっぱいなのです。 頭の中で想像したとおりの人の仕事のやり方や話し方を真似しようとすると、非常に疲れます。 話すのもおっくうになります。自分じゃない感じになります。こんな自分なら何もしないほうがましと思います。 私には姉が二人います。 私と母親は実の親子です。姉二人には、義理の母です。 小学校6年生のときに聞かされました。 母と二人の姉はいつもケンカしていました。とくに長姉は母を嫌っているふうでした。それが言葉にもよくあらわれていました。次姉は、母にたいして素直な態度でした。長姉が母をうとましく思っているので、次姉は気を遣っていたのだと思います。二人の姉は、わたしにも気を遣っていました。わたしはいつも窮屈な思いで、面倒をかけないように、じっと身をこごめるように生活していました。 人間の脳は、言葉をつくります。 言葉をつくるのは、聴覚、視覚、触覚の三つです。 このことは誰にもよく知られていませんが、赤ちゃんの成長の仕方と脳の発達の仕方の研究では、ごくふつうの考え方になっています。人間の知性にとって重要なのは聴覚です。 |
谷川うさ子さん |
手紙の女性は、二月野桃子さん(31歳)です。 二月野桃子さんは、母親から、自分の手足の動きの一つ一つについての言葉がけの声と言葉を聞けなかったのです。目で見ることと言葉が一致して行動のための認知という経験が記憶されます。 母親の言葉がけも、人からじかに耳で言葉を聞くというのは、生きていくうえでとっても大切なことなのです。 人からの話し言葉を毎日のように耳で聞かないと、目で見たことを自分の言葉でこうしよう、ああしようと決めることができなくなるのです。 二月野桃子さんへは、メールと電話と面談で日々の生活のことについて実行の仕方のアドバイスをさしあげました。 私の父親は、たいへんガンコで家族にたいして親身になってくれることがないと思っていました。 話すことは自分のことを一方的にしゃべります。 家族の誰の話にも心をこめて耳をかたむけるということがない人です。長い間そんなふうに見ていました。 ポルソナーレのアドバイスをいただいてから、一日、5つだけ質問をすることにしました。 「わたしのこと好きですか」 もちろん好きさ。 「お母さんのこと好きですか」 もちろん好きさ。 「お姉さんのこと好きですか」 もちろん好きさ。 なんだ、お父さんの気持ちってそうだったのか。 耳で聞いてみないと本当のことは分からないんだね。 わたしは、メールを書いて出した人にも、電話をすることにしたのです。 メールの糸が赤い糸となって、その人の気持ちが温かく流れてくるのがよく分かります。 わたしの人真似は遠い過去の日のできごとになりました。 |
谷川うさ子さん |
←前へ 次へ→