① 雑誌や本などで、ミスとか失敗について取り上げられているのをたまに見かける。
そこで説かれている内容を読んでみると、ミスとか失敗を本質から説き明かすのは案外難しいんだな、ということを思う。
たいがいは、ミスは回避するもの、二度とくりかえしてはいけないもの、という常識的なことを前提にして書かれていることが多い。
② 私の場合、ミスは回避するのではなくて、むしろ好んで向かっていくという姿勢でいる。
③ たとえば、勝負事の中で、自分の犯した一回のミスに引きずられ、そのままずるずる負けてしまうことがある。ミスに囚(とら)われ、そこから抜け出せなくなって自滅してしまう。そうならないためにはどうしたらよいのか。
④ 自分の犯したミスによって大なり小なりダメージは必ず生じる。
それはそれとしてあるがままに受け止める。「自分だけじゃない。相手も必ずミスをする」というふうに思えばいい。
自分だけがミスをするわけではない。ミスは相手もするものだから、自分のミスをなるべく小さくしようと努(つと)める気持ちが大切なのだ。
⑤ ミスは誰もが犯すもの。だからミスを悔やんだり、非難するのではなく、傷口を広げないようにする。そうすればひとつのミスに囚われることもなくなる。
⑥ 病院で受ける注射にたとえると分かりやすいかもしれない。
注射を好きな子どもはあまりいない。だから注射をされると大泣きに泣く子どもがいる。
だが大人で注射を受けて大泣きしている人はあまりいない。子どもは、注射の痛みよりも先に、恐怖感や不安感に囚われてしまっているから痛さが二倍にも三倍にも増してしまうのだ。大人は、「注射の痛さはだいたいこんなもの」と分かっている。
⑦ ミスも注射と同じで、対処法というのがある。痛みを精神的に抑えるように、ミスもそれ以上広がらないように精神で抑えていく。
痛いのは当り前、ミスも当り前。それは誰でも同じ。
そう思って、その痛みやミスが、それ以上大きくならないように気をつければいいのだ。
⑧ ミスをしたときに「まずい」と思わず、ミスをしてしまった「おもしろさ」を感じられるようになった時、初めてそのミスが生きてくる。ミスを「まずい」とだけ思っているうちは、その後にさらに大きなミスをする可能性がある。
「おれ、ミスしちゃった。おもしろいなあ。おれ、こういうことやっちゃうんだなあ」というくらいの余裕を持ってやっていると、それは後でよい結果をもたらしてくれたりする。
⑨ そもそも、ひとつのミス自体はたいした問題ではない。重要なのはミスによってできた傷口を広げるか、広げないかだ。
ミスを隠そうとしたり、人のせいにするとその傷口はどんどん広がっていく。ミスをしたことの言い訳や言い逃れもやらないほうがいい。言い逃れや言い訳をくり返しているとそのミスを、今度は嘘(うそ)という大きなものに変えていってしまう怖さがある。その嘘はやがて敗北を招くことにもつながる。
⑩ ミスを小さくするには、まずそのミスをしっかり受け止められるようにしなければならない。ごめんならごめんでシンプルに反省する。そうやってシンプルに済ませて、早めに次のことをやっていくようにするのだ。
ミスをしっかり受け止めず先延ばしにすると、同じことが怖くなってできなくなってしまうことがある。
ミスから逃げることは、逆に、ミスの連鎖にはまっていくきっかけとなってしまうのだ。こうしてミスから逃げる人間は、どんどん弱くなっていく。
ミスを犯した後に勝者と敗者の分かれ道がある。あくまでも「ごめん、悪かった。もう一度やらせて」という感覚でミスを受け止める。
「同じミスはもう二度としません」などと言ってしまうと、そこにプレッシャーや緊張が入ってきてけっしていい結果には結びつかない。 |