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ポルソナーレ式イメージ切り替え法 NEWSLETTER 第234号
11期18回め平成21年10月24日
脳の働き方と言語の学習回路/浅見鉄男「井穴刺絡・免疫療法」

脳の働き方のメカニズム・おとなと子どもの脳の発達のさせ方
日本語の「分裂病表現」の対策とアドバイス
「ハーバード流交渉術」・III
(ハーバード大学交渉学研究所・フィッシャー&ユーリー)

エクササイズ:日本型の分裂病と会話する学習モデル

はじめに

 ゼミ・イメージ切り替え法、中級クラス、スーパーバイザーカウンセラー・認定コース、Aクラス、№44のゼミをお届けします。
 ポルソナーレは、日本型の分裂病の克服をテーマにして「日本語の文法」のメカニズムを明らかにしています。学的な根拠は国語学者・大野晋の研究と論理実証に拠っています。ここで明らかになるのは、「日本語の文法」は、「話し言葉」の「表現の仕方」を「書き言葉」に表記したものだ、ということです。すると「日本語」は、「話し言葉」にウェイトをかけると「通じ易く」、「書き言葉」にシフトすると「不適応」や「不適合」が生起しやすい、ということです。今回は、「ハーバード流交渉術」をケースにして、このことをご一緒に考えます。

ポルソナーレ代表田原克拓

本号の目次

  1. 日本語の「文法」は、「話し言葉」のための「言葉の法則」です
  2. 日本語の文法は自分が中心の表現の仕方
  3. 日本語は、いつ、どのようにして成り立ってきたのか
  4. 原日本語
  5. 中国語を学習した
  6. 漢字・漢語で日本語をあらわしはじめた
  7. 「ひらがな」はこうしてつくられた
  8. 「ひらがな」で文章をつくって社会化した
  9. 日本語は、「話し言葉」の文法を秩序づけた
  10. 日本語は、「内なる人間」に通じればいいという成り立ち方である
  11. 誰もが自分の主観を交流させ合うという文法
  12. 日本語の正しい使い方の基準
  13. 分裂病を防ぐ日本語の表現モデル
脳の働き方のメカニズム・おとなと子どもの脳の発達のさせ方
日本語の「分裂病表現」の対策とアドバイス
「ハーバード流交渉術」・III
(ハーバード大学交渉学研究所・フィッシャー&ユーリー、三笠書房・刊よりリライト・再構成)
日本語の「文法」は、「話し言葉」のための「言葉の法則」です

 前回までの本ゼミでは、金田一春彦の『日本語』(上・下巻、岩波新書)から「日本語の特性」というものの具体的な事例をご紹介しました。

 ひきつづいて『日本語』(下巻)より、次のような事例をご紹介します。

① 代名詞や指示語の類いは、話し手が誰であるかによって、さされるものが違う。B・ラッセルは、こういう語彙(ごい)は「自己中心的特殊語」であって、物理学や心理学では用いられない単語だ、と言った。

② 代名詞、指示語とは「あれ」「あそこ」「あちら」に加えて、「どれ」「どこ」「どちら」を加えたものだ。佐久間鼎(かなえ)以来、「こそあど体系」と呼ばれてきた。
1.「これ」「それ」「あれ」
2.「ここ」「そこ」「あそこ」
3.「こちら」「そちら」「あちら」
松下大三郎は、「話し手に近いもの」が『こ』、「相手に近いもの」が『そ』、「話し手からも相手からも遠いもの」が『あ』だ、と言った。

③ このように、話し手の位置からどのようにでも使われる言葉を、三上章(あきら)は「境遇性のある語」と呼んだ。日本人は「今」「さっき」「きょう」「きのう」「先日」「あした」などの語も「境遇性のある語」として用いる。
◎文例
「もっとも今日は、刻限が遅いせいか烏(からす)が一羽も見えない」
「下人は、さっきまで、自分が盗人になる気でいたことなぞは、とうに忘れているのである」
(芥川竜之介『羅生門』)
G・ショウは英訳して、「今日」「さっき」をon this day, a little before とか訳している。
たしかに、その方が正しい。

日本語の文法は自分が中心の表現の仕方

■「境遇性」とは、「そのものをとりまく社会の中の状況、めぐり合わせ」といった意味です。
 代名詞、指示語について、国語学者・大野晋は、その意味を次のように解析して説明しています。

?日本語の代名詞の特徴は「こ・そ・あ・ど」の体系をもっていることだ。

?「こ・そ・あ・ど」は、古典語では多少、語形が変わっている。「こ」「そ」「か」「い」「で」の体系になっている。

?「ここ」「これ」「こなた」「こち」という「こ系」の言葉は「話し手が居る所」を指す。そして「話し手」が「内(うち)」と見なす所を指す。

?「かしこ」「かれ」(彼)、「かなた」(彼方)という「か系」の言葉は、「内」(うち)という「輪の外」のものを指す。

?「そこ」「それ」「そなた」という「そ系」の代名詞は「我」と「汝」とが共通して知っているものを指す。
文脈(話し言葉では、すでに話されて先に示されているもの)では、話題として表現されているものを指示するという機能をもっている。

?「学校文法」では「こ・そ・あ・どの体系」を「近・中・遠・不定」という四つの体系と教えることが多いらしいが、日本の古典語を調べると、どうも「そ系」の代名詞をそのように説明することには問題がある。「そ系」(「それ」「そこ」「そちら」など)は、「近」「中」「遠」の「中」を示すものではなく、むしろ「我」と「汝」がすでに知っているものを指す、と考えた方がよいと思える。

?日本語には、こうした「自分の居場所」を中心にする指示代名詞の組織がある。それはじつに整然としている。

?日本人は、弥生時代のその前の縄文時代の「アウストロネジャ語」の一つの語を使っていた「ヤマトコトバ」の時代から自己の周囲に輪を作り、その輪の内(うち)にあるものを「こ系」で指示していた。
「こ系」とは、「親しい」「親密」と扱うという意味だ。
一方、輪の外のものは「か系」「あ系」で指示していた。
「かれ」(彼)、「かなた」(彼方)、「かのじょ」(彼女)、「かしこ」(彼処)などだ。

?この「こ・そ・あ・ど」の体系は、日本語の「感動詞」にも用いられている。用例は次のようなものだ。
「こら」…自分の身近な領域が侵犯されたときに、相手の注意を喚起するのが根本の意味だ。方言によっては、夫が自分の妻を呼ぶのに使う。それは、妻を、自分の領域、内(うち)の存在とみなすことから生じた用法と思われる。
「そら」…相手がすでに知っているところを指し示して促す言い方だ。
「あら」…自分の身の埒外(らちがい・ものごとの区切りの外にあるもの)にあるとして、忘れもの、意外なことに感じた時に用いる。
「どら」…未知のものを覗き込んだりする場合に発する声だ。

?日本人は、「我」と「汝」の間柄についてこう考えていた。
「相手と自分の間には深い谷があるとは考えていない」「相手と自分の間の深い谷を超えることは非常に困難なことだとは考えていない」ということだ。人間と人間の間には、相手と自分というそれぞれの「観念」がある。そのそれぞれの「観念」が有する「意思」「思考」「感情」はもともと不一致なもので、つねに「利害が相反する」とは理解してこなかった、ということだ。

日本語は、いつ、どのようにして成り立ってきたのか

■日本人の対人意識は、自分を中心にして他者を「内の人」か「外の人」か?にふるい分けて、区別するという「とらえ方」であると説明されています。

 この「内」か「外」かの対人意識が、日本語の「文法」の骨格であらわされています。

 このような「文法」の成り立ち方は、いつ頃、どのようにしてつくられたものでしょうか。大野晋の書いた『日本語の年輪』(新潮文庫)によれば、そのあらましは次のとおりです。

原日本語


1.日本列島で「日本語」として使われていた言葉は、南太平洋の一帯で話されていた「アウストロネジャ語」の一つだった。
四つくらいの母音で成り立っている話し言葉だった。

2.弥生時代になって、北九州に、南インドの「タミル語」がやってきた。タミル人は「稲」を持って来た。
布を織る道具の「機織り」(はたおり)や「金属」も持ち込んだ。
原日本人は、これらの「文明の物」といっしょに「言葉」も学んだ。
この「タミル語」は、「アウストロネジャ語」の一つを日本語(やまとことば)としていた話し言葉に取り込まれて言葉の数を増やして新しい日本語となった。

3.弥生時代の次の時代の古墳時代に朝鮮半島から「渡来人」がやって来た。なぜ日本に来たのかといえば、朝鮮半島には30くらいの国があって、しょっちゅう戦争をしていたので、逃げてきたのだ。
気候も厳しくて生活するにも困難が大きかったので、日本で安全に暮らそうと思い、やってきた。

4.渡来人は、中国から学んだ「漢字・漢語」も持って来た。この「漢字・漢語」と一緒に「仏教」「政治」「法律」「医学」といった「文明」も持ってきた。このころの日本人(やまとの人々)は「文字」を知らず、自分たちで作るということもしていなかった。そんな状態のところへ、「漢字・漢語」がやってきた。

中国語を学習した

5.弥生時代の日本人(やまとの人々)は、「漢字・漢語」を読んだり書いたりできるように学んだ。「国」をつくり全国統一の「社会制度」をつくるためには「漢字・漢文」の読み書きの能力が必要だったからだ。しかし、中国語としての「漢字・漢文」は日本語と違って発音の仕方が違っていることや、中国語としての文法も全く違っていたので、習得は困難だった。それでも、なんとか中国語どおりの「漢文」を書けたり読めたりできる日本人があらわれた。このようにして、日本人(やまとの人々)は、初めて「文字」を手に入れた。それは、「法律」や「社会制度」、「仏教」をとおして「国づくり」のために活かされた。

6.やがて、日本人は、もともとの日本語(アウストロネジャ語を原型としタミル語で膨化した話し言葉の文法体系)を「書き言葉」であらわしたいと考えるようになる。「漢字・漢文」は中国ふうの文法体系になっているので、習得は難しく、中国じたいも国の体制が変遷して「中国語」の言葉も変化した。そのつど学びに行くとか、新しく学び直すという困難もあって、「日本語」とは別の遠くにある存在だった。そのために、中国語の「漢字・漢文」は日本人にとって「権威」だった。

漢字・漢語で日本語をあらわしはじめた

7.だが、日本人は「話し言葉」としてだけ流通していた日本語の発音や発声、その仕方の順序に合わせて「漢字・漢語」を解体しはじめる。漢字の「音」だけをピックアップして日本語の順序どおりに並べはじめる。
このようにして、「漢字・漢語」の日本語化が始まった。
これが、話し言葉しかもたなかった日本語の「書き言葉」の始まり方である。

8.日本語とは、「ひらがな」および「カタカナ」のことだ。
まず、「カタカナ」から始まった。仏教の僧がつくった。
経文は「漢字・漢文」で書いてある。その読み方を仲間うちで教え合ったこと、手紙を書くときに文字を使うというのが動機になっていたといわれる。
奈良時代の末期には「カタカナ」が使われていたと考えられている。
現在、確かめられるのは「平安時代」に入ってからのものだ。
「カタカナ」は、「万葉仮名」を省略して生み出された。次に「ひらがな」がつくられて使われはじめている。
「西大寺本」の『金光明最勝王経』(こんこうみょうさいしょうおうぎょう)には、お経の正確な読み方を弟子に伝えるために、その読み方が書き込まれている。もっとも古いものは『成実論』(じょうじつろん。天長五年・八二八年)のものだ。「カタカナ」とは、次の例のとおりにつくられた。

  1. 万葉仮名の偏(へん)を取る…「阿」を「ア」、「伊」を「イ」、「加」を「カ」にした。
  2. 旁(つくり)を取る…「伊」を「尹・イ」、「奴・ヌ」を「又」、「利」を「リ」にした。
  3. 上部を取る…「宇」を「ウ」、「己」を「コ」、「曽」を「ソ」、「牟」を「ム」にした。
「ひらがな」はこうしてつくられた

9.奈良時代から平安時代の初めにかけては、「漢詩」「漢文」が流行した。「遣唐使」の選抜の基準であったことと、「官吏」(かんり)の採用の条件の技能の一つだったからだ。しかし、女子の世界ではそのような必要性はなく「漢文の規則」にしばられることもなかった。貴族社会の女子たちは「恋の手紙」「歌のやりとり」のために「書く文字」を必要とした。
その必要から生まれたのが「万葉仮名」をくずした簡便な文字だ。次のようにつくられた。

 1.「安」を「あ」
  2.「以」を「い」
  3.「宇」を「う」
  4.「衣」を「え」
  5.「於」を「お」
  6.「加」を「か」
  7.「幾」を「き」
  8.「久」を「く」
  9.「計」を「け」
  10.「己」を「こ」
  11.「左」を「さ」
  12.「之」を「し」
  13.「寸」を「す」
  14.「世」を「せ」
  15.「曽」を「そ」
  16.「太」を「た」
  17.「知」を「ち」
  18.「川」を「つ」
  19.「天」を「て」
  20.「止」を「と」
  21.「奈」を「な」
  22.「仁」を「に」
  23.「奴」を「ぬ」
  24.「祢」を「ね」
  25.「乃」を「の」
  26.「波」を「は」
  27.「比」を「ひ」
  28.「不」を「ふ」
  29.「部」を「へ」
  30.「保」を「ほ」
  31.「末」を「ま」
  32.「美」を「み」
  33.「武」を「む」
  34.「女」を「め」
  35.「毛」を「も」
  36.「世」を「や」
  37.「由」を「ゆ」
  38.「与」を「よ」
  39.「良」を「ら」
  40.「利」を「り」
  41.「留」を「る」
  42.「礼」を「れ」
  43.「呂」を「ろ」
  44.「和」を「わ」
  45.「為」を「ゐ」
  46.「恵」を「ゑ」(え)
  47.「遠」を「を」

■これらの文字は、「女手」(おんなで)と呼ばれた。これらの文字は省略と簡便で成り立っていたから「仮り名」(仮名・かんな)と称された。「漢字・漢文」は「真名・まな。本当の文字」と呼ばれた。
「名」とは「文字」の意味だ。

10.「藤原氏」が「摂関政治の勢力」をとらえつつある頃、「律令制・りつりょうせい」が崩壊しはじめる。海外派遣や官吏(かんり)登用の道も閉じられていく。「漢文詩への関心」の後退、「和歌」の復活が起こる。「後宮の女性」たちが重要視される。暇と時間をもてあました世界での「遊び」の「歌合・うたあわせ」が、日本語の発展に大きな役割をもちはじめる。

「ひらがな」で文章をつくって社会化した

11.「紀貫之」(きのつらゆき)は、『古今集』を編集した一人だった。『古今集』は、「仮名・かりな」で書かれた歌が「勅撰・ちょくせん。天子の命令で選ぶこと。反対の言葉は私選」の歌集に載った。「仮名」が日本の社会で初めて社会的な位置に立ち、「仮名」が公式の文字となった。

12.紀貫之(きのつらゆき)は、『古今集』から30年後に『土佐日記』を書いた。『土佐日記』は「女手・おんなで。仮名」を使って書かれた「散文」(さんぶん。詩のように定型や韻律をもたないふつうの文章のこと)だった。紀貫之は、『土佐日記』を「漢文」を手本にして書いた。
だから「漢文読み」に独特の言葉が遣われている。

◎例(奈良時代の漢文調の言葉)
?豈(あに)…「あにはからんや」(意外なことには)
?曰く(いわく)…「言うのには」
?蓋し(けだし)…「ひょっとして。思うに」(推定の文語表現)
?為べからく(すべからく)…「当然」「なすべきこととして」(副詞)
?無けむ(なげむ)…「無さそう」「なおざり」「心がこもっていない」
?如し(ごとし)…「似ている」「同様だ」「…らしい」「…のような気がする」「…の通りである」(形式的な形容詞)
?互いに(たがいに)…「双方が」「双方が一緒に」
?甚だ(はなはだ)…「非常に」「ひどく」「程度が激しい」(副詞)
?密かに(ひそかに)…「他人に知られないようにする」「人目を避けること」

この『土佐日記』は、「後宮」(こうきゅう・后妃、奉仕する女官たちの住む宮殿)の女性の社会で歓迎された。
『土佐日記』の成功を見て「漢詩・漢文」の才能をもっていて、「藤原氏」に血縁関係のない中流の学者たちが「文筆の世界」に加わった。
『竹取物語』『宇津保物語俊蔭の巻』(うつほものがたり・としかげのまき)だ。「仮名文字」で書かれた。皇族、貴族の少女たちが社会的に重要視されていたので、その少女らのために書かれた。

13.「漢字」と「カタカナ」を混用した文章があらわれた。
『今昔物語』がある。
文例は次のようなものだ。

今昔、世ノ中ニ大水出タルケル時、近江ノ国、高嶋ノ郡ノ前ニ、大ナル木流出テ寄タリケリ。
郷ノ人有リテ、其ノ端ヲ代取タルニ、人ノ家焼ヌ。
亦、其家ヨリ初テ郷村ニ病発テ死ヌル者多カリ。
是ニ依テ、家ニ其祟ヲ令占ルニ、只此ノ木ノ故世ト占ヘハ、其後ハ、世ノ人、皆其ノ木ノ傍ニ寄ル者一人モナシ。

日本に「漢字・漢語」という文字が入ってきて、五世紀が経った。文章は、「漢字の訓読み」「記録体の変態漢文」の系統と、「歌語り」「歌物語」「和文」からの系統が発達した。
『枕草子』『源氏物語』はこのような流れの中で、「仮名文字」の発達の頂点を示すものとして生まれた。

日本語は、「話し言葉」の文法を秩序づけた

■大野晋の説明するところから「日本語」の成立の仕方のあらましをご紹介しました。ここで分かることは、次のとおりです。

① 日本語は、もともと母音が4つくらいの話し言葉として発生した。ここに、南インドの「タミル語」が入ってきて、食糧生産を中心とする生活語が広がり、話し言葉の流通性に安定度が加わり、日本語として定着した。

② 日本人は、日本語を「話し言葉」として役立たせていたが、「文字」は発明しなかった。だから文化はつちかわれたが、現実と葛藤するための「文明」は生起しなかった。
その日本語は「原神話」の『瓜子姫』に見るように、「家の外・内」を基準にした「遠い・近い」を区別する「文法」を骨格にしていた。

③ その後、日本に中国の言語の「漢字・漢詩」が入ってきた。
中国文明を説明するものだったので、日本人は「漢字・漢語」を中国人の「話すとおり」「読むとおり」「書くとおり」に学んだ。それは、中国文明を摂取することが目的だった。

④ やがて、日本人は、もともと話し言葉としてだけ存在していた日本語を、文字で表記することに取り組む。それは「漢字」を日本語の「発音」に合わせたり、話し言葉の「語」にあてはめるというやり方だった。
ここでは、話し言葉の語順のとおりに「漢字」が組み立てられた。「漢語」の名詞、動詞、形容詞は、そのまま「日本語の一つ」として利用された。

⑤ このような経過を経て、「漢字・漢語」は、一般の人が読む、書くという状況になった。ここで、その読み書きの学習のために、カタカナがつくり出された。
同時に、「万葉仮名」という中国ふうの読む音を日本語ふうの発音に適合させる「漢字そのものの仮名」から、簡便化と簡略化の作業をとおして「仮名」(ひらがな)がつくられた。この「仮名」を使って、「歌」「物語」「日記」「手紙」「散文」などの文芸作品が生み出された。日本の文学とは「仮名」であることが公に認められ、社会的に流通するようになった。
そのことを証明するのが『土佐日記』『徒然草』『源氏物語』である。

日本語は、「内なる人間」に通じればいいという成り立ち方である

■日本語とは、「ひらがな」を中心とする「文法体系」であることが分かります。具体的には次のとおりです。金田一春彦の『日本語』(下巻)よりご紹介します。

?昔々、あるところに山がありました。その山は木のよく茂った形のいい山でした。その山には一匹の狐が住んでいました。その狐は人間に負けないほど大変賢い狐でした。

?この文では「は」と「が」の使い方の特徴がよくあらわされている。まず、「山」や「狐」が初めて出て来た時には「が」がついている。二度目に出て来たときには「は」がついている。

?このような話をするときは、語り始めは、相手の頭の中には何もない。その時は「山が」と「が」をつける。そして、「相手の頭」の中に、「山」が入ったなと見定めておいて、今度は「山は…」と言うのである。
「狐」についても全く同様だ。

?「は」は「話の題材」を表わす。相手に話をする場合、主題には、相手の頭の中にあるものを選ぶのがいい。いきなり、「きれいな山の中に住んでいた一匹の賢い狐は」と言ったのでは相手はストレスを感じる。

?「…が…」の文は、相手に予備知識を与えるために短く言う。登場人物の紹介や、場面設定のようなものである。そういう知識を与えて、そこで話を始めようというわけである。

?日本語には、いわゆる形容詞と同じような意味をもち、機能を果す言葉がある。「静かな」「見事な」など「な」で終わる形の単語だ。「勇ましい」と「勇敢な」とは意味、機能は全く同じである。「貧しい」と「貧乏な」も同様だ。「白い」「赤い」の類だけを「形容詞」と名付けたのは「大槻文彦」以来の「学校文法」の規定だ。
しかし、「静かな」「見事な」の方が形容詞というのにふさわしいと思えるものだ。

?また、日本語は、おびただしくある「擬態語」の類も形容詞の代わりに使われる。
「ガタガタの椅子」「ツルツルの廊下」の類だ。

?さらに、「動詞そのもの」および「動詞プラス『た』」の形が「形容詞」として使われる。
 1.「こいつはいささか驚くね」
 2.「こりゃ、困ったな」
1では「驚く」の主格は何か?「私は」が省略されていると思ってはいけない。「こいつはおもしろい」というセンテンスがあれば「おもしろい」の主格は「こいつ」である。同様に、「驚く」の主格も「こいつ」である。驚いた気持ちを表わすべき形容詞が無い。そこで「驚く」とか「困った」とかいう「動詞」をかりてきて「形容詞」として使っているのである。

誰もが自分の主観を交流させ合うという文法

■日本語(やまとことば)は「話し言葉」の文法を基軸として発達してきたということの特性が説明されています。「擬態語」は「ものの状態」から受け取る印象と「自分の発声する音の印象」から、ものごとを身体の感覚にむすびつけて表現するというものです。

 自分自身の情意や生理的な感覚を、概念としては定まらない未分化な観念をあらわしているというところに特性があります。「驚くね」「困ったな」の表現は、「対象」を客観的にとらえるのではなく、「自分自身の行動の範囲」にあるものとしての認識をあらわしています。

 助詞の「は」「が」は、すでに大野晋が解析しているとおり、「遠くのものか」「近くのものか」を区別する観念をあらわしていました。

 「我が君」「象は鼻が長い」「あなたは、ずいぶん意地が悪いですね」「あんなかしこい人はめったに見たことがない」などが用例です。「遠いもの扱い」と「未知扱い」をあらわすのが『が』です。「近いもの」と「既知扱い」をあらわすのが『は』です。

 脳の働き方の「言語の生成のメカニズム」に即していうと「X経路」(ブローカー言語野・3分の1のゾーン)の認知と認識の対象との関わり方のための文法体系が日本語の「文法」のメカニズムです。いいかえると「家の外」(他者、社会、相手の心や心情、相手の将来や未来などのメタファーです)について関わりをもち、その内容を正しく客観的に、普遍的にとらえるための「文法の体系」には成っていないということです。脳の働き方の「言語の生成のメカニズム」に即していうと「Y経路」の認知・認識をあらわす概念は一つも無いということです。

日本語の正しい使い方の基準
  1. 「どのように近づいていくか?」「どのように近づいて来るのか?」(距離にかんする概念)
  2. 「どのような方向に進んでいくのか?」「どのような方向から進んで来るのか?」(方向にかんする概念)
  3. 「どういう位置から、どの方向に進んでいくのか?」「どういう角度から、どの位置に向かって進んで来るのか?」(角度を包括する概念)

 このようなY経路の認知と認識をもたないのが日本語の文法です。いいかえれば、このようにして理解される対象から孤立していて、その孤立に気づかずに、曖昧に「なんとなく」という分かり方の理解のイメージを表象(ひょうしょう)するのが日本語の「文法」です。この「曖昧性」と「なんとなく」を思考するのが「日本型の分裂病」の実体です。古代の日本人は、「Y経路の認知・認識の対象」を「漢・漢語・漢文」で理解して自らを社会化させてきました。

 日本語(和語・やまとことば)を文字化するにつれて一気に「X経路」の認知と認識の「語」が深化して日本人の全体に広がったというところに、「日本型の分裂病」の土壌が出来上がったと理解することができます。

分裂病を防ぐ日本語の表現モデル

 「ハーバード流交渉術」(ハーバード大学交渉学研究所・フィッシャー&ユーリー)の中に、次のような「交渉事例」があります。

●相手方がこちらをだます、足をすくうという行為や話し方をする、あるいは、合意が成立するという間際になって条件を変えてくるといったような場合がある。このような「相手が汚い手口を使っている」という場合はどう対処すればよいのだろうか。

◎「ハーバード流交渉学研究所」のアドバイス

① このケースは、嘘や心理的策動、圧力を加える、法律に触れるもの、モラルに反するもの、単に不快感を与えるものなど、手口は千差万別である。これらは、原則にもとづかない「意思闘争」によって実質的な利益を勝ち取ることにある。このような戦術は「計略的駆け引き交渉」と呼ぶことができよう。

② 日本人は、このような局面では「ガマンする」という態度をとる。
波風を立てるのを好まないからだ。そして「相手」という人間を善意に解釈する。もしくは、身近な人間に話して相手に腹を立てているという感情を聞いてもらい、憂うつさを解消する。そして、二度と関わりをもつまいと「沈黙」する。

③ もう一つの日本人のとる態度は、「相手と同じ手口で対応する」というものだ。相手がだませば、自分もだます。欺瞞(ぎまん)的に対応するのだ。日本人は、相手の感情に反応して同じような感情で自分の正当性を主張しやすい。そして交渉の再開まで、相手の態度を反復して表象しつづけやすい。

④ このようなケースでは「交渉」という話し合いの進め方を交渉することが大切である。そのためには、相手の戦術を見分けること、その戦術を問題として取り上げること、そして、そうした戦術が望ましいといえるかどうかを話し合う、という三つの段階をたどることだ。次に、「不当と思える戦術」を使っているからといって、その者を個人的に攻撃するのは得策ではない。いったん守りに回った相手は、自分の戦術の正当性にこだわり、逆に個人攻撃の口実をもつことにもなる。

◎エクササイズ・ポルソナーレの分裂病と会話する学習モデル

?日本語の文法は、話し言葉を成り立たせるためのものである、ということをふまえる必要があります。「話し言葉」とは、「その人の主観」を表象する情意や感情に裏付けられている「語句」が言いあらわされる、ということです。
すると、その「相手の語る言葉」の中から「自分」も「同意」できる言葉を見分けて、それを取り上げて、「概念化すること」が重要です。とかく、日本人は、自分の話す言葉に客観的な正当性があれば、その言葉を相手に向けて認めさせようというように話します。
しかし、相手は「他者の話す言葉」は、全て、「遠いもの」「遠ざけるもの」「成り行きにまかせるもの」と扱います。疎外している、ということです。

?このような局面で重要なのは、相手には分かっている言葉を「概念化すること」(正しい定義づけ。客観的な評価の基準を明確にすること)が最も「合意しやすいものである」というように理解しましょう。
「この言葉の意味は、こういうことでいいですか?」と問い、「そのとおりだ」という「同意」が成り立てば、さらに、「この言葉のとおりに、このように行動しませんか?」と「行動のルール」を「合意」することが日本型の交渉の仕方です。これが、また、日本型の分裂病から自分と相手が離脱する方法です。

◎例
相手「明日、会うと約束したけど、都合が悪い。いつになるか分からないよ」
自分「分かりました。お会いしていただく日時を合意できないのは残念です。
でも、お会いしていただくことは承知していただいていると理解していますが、このとおりの意味で間違いありませんか?」

■このパターンのように「会う」ことを定義して同意を得れば、「会う」ということの行動の相互了解はルールとなります。次は、「会う」というその日まで、さまざまなコミュニケーションを交流させて、この会話の中で有益な「同意」を増加することが可能になります。

ゼミ・イメージ切り替え法 NEWSLETTER 第234号 一部掲載

関連
日本型の分裂病の構造・II 最強の文章表現のための「文法」理解の仕方


連載
前回:日本語の主観表現のメカニズムと対策 「ハーバード流交渉術」・II
次回:日本語の文法理解と教育法 「ハーバード流交渉術」・IV

参考:脳の働き方の学習のご案内

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女性向けカウンセリング・ゼミ、男性の「女性」対応・ゼミ

ゼミ・イメージ切り替え法

プロ「教育者」向けカウンセリング・ゼミ

カウンセラー養成ゼミ

脳と心の解説

教育方針は「教える・育てる・導くカウンセリング」です 。
「女性」「子ども」のこんな心身のトラブルならあなたにもすぐ解消できます。

「女性向け」、「男性の“女性”対応」のカウンセリング・ゼミです。
女性は「相手が喜ぶ」という共感がないと、ものごとを正しく考えられません。

女性と心を分かち合える「脳」を、最高に発達させる!!が教育の狙いと目的です。女性を「見る」「見たい」、女性から「見られる」「見られたい」関係をつくる、カウンセリング術です。

女性の「脳を健康を働かせる」!安心と安らぎを分かち合う、が教育のテーマと目標です。「気持ちが安心する。だから、知的に考えられる」という女性の本質を支えつづけるカウンセリング術です。

女性の脳の働きが伸ばす「人格=パーソナリティ」を目ざましく発達させる!が教育の方針です。 女性が社会性の世界(学校・仕事・社会の規範・人間関係のルール・合理的な思考)と、知的に関われる!を一緒に考えつづけるカウンセリング術です。

ストレスを楽々のりこえる女性の「脳」を育てる!!が教育の人気の秘密です。女性は、脳の働きと五官覚の働き(察知して安心。共生して気持ちよくなる)とぴったりむすびついて、一生、発達しつづけます。


脳と行動の診断

人の性格(ものの考え方)が手に取るように分かる「心の観察学」

心の病いに感染させられない「人間の関係学」がステキに身につきます。

心の病いを救出する、心と心をつなぐ「夢の架け橋術」

相手に好かれる「対話術」がまぶしく輝くので、毎日が心の旅路。

相手の心の働きのつまづきが正しく分かって、「正しい心の地図をつくれる」ので、損失、リスクを防げます。

性格のプロフィールが分かるから正しく「教え・育て・導く」ができる本物の社会教育の実力が身につきます。


よくある質問

学校に行くとイジメがこわいんです。私にも原因ありますか?

怒りっぽいんです。反省しても、くりかえしています。治りますか?
脳と心の解説

「仕事・人生・組織に活かすカウンセリング」です。他者の心身のトラブルを解消できれば、自然に自分の心身のトラブルも解消します。

プロ「教育者」向けのカウンセリング・ゼミです。
人間は、誰でも「気持ちが安心」しないと正しく「ものごと」を考えられません。

「脳を最大限に発達させる」が教育の狙いと目的です。「指示性のカウンセリング」とは、 「一緒に考える」「共感し合って共に問題を解決する」カウンセリング術です。ものごとには「原因」(脳の働き方)があるから「結果」(心身のトラブル)があります。

「脳の健康を向上させる」、が教育のテーマと目標です。「指示性のカウンセリング」は、「考えたことを実行し、考えないことは実行しない」 という人間の本質を、最後まで励まし、勇気づけるカウンセリング術です。

脳の働きがつくる「人格=パーソナリティ」を育てる!が教育の方針です。
「指示性のカウンセリング」は社会性の世界(学校・仕事・社会の規範・人間関係のルール・合理的な思考)と正しく関わる!を一緒に考えつづけるカウンセリング術です。

ストレスに強い、元気に働く「脳」に成長させる!!が教育の魅力です。
「指示性のカウンセリング」は五官覚(耳、目、手、足、鼻)を正しく発達させて、言語の能力も最高に発達させるカウンセリング術です。


脳と行動の診断

「心の病いの診断学」が楽しく身につきます。

心の病いの予防と解消の仕方の「人間の理解学」が身につきます。

心の病いに気づける「人間への愛情学」が驚くほど身につきます。

「交渉術」の知性と対話の能力が目ざましく進化しつづけます。

相手の心の病理が分かって、正しく改善できるので心から喜ばれます。「心の診断術」

病気になるということ、病気が治るということが正しく分かる、最高峰の知性が身につきます。


よくある質問

朝、起きると無気力。仕事にヤル気が出ません。うつ病でしょうか?

仕事に行こうとおもうと、緊張して、どうしても行けません。治りますか?
バックナンバーの一部を9期後半分より、随時掲載していきます。
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入会も随時受け付けています。
入会と同時にご希望のバックナンバー等、ビデオ(DVD)学習で、学んでいただけます。


ゼミの見学、ゼミのバックナンバービデオ(DVD)試聴も無料です
ニューズレターと共にお送り致します。 詳しくは「入会案内」をご覧下さい。
ポルソナーレのゼミの様子をYouTubeに公開しました。

脳を発達させる日本語トレーニングペーパー 谷川うさ子王国物語

一部公開しました。
トップページ NEW! 年間カリキュラム 学習の感想と学習成果 「日本人の思考」と「谷川うさ子王国物語」と「グローバル化の恐怖」
学習内容(サンプル) 「言葉」 日本語の影響。その仕組みと感情、距離感、人間関係について
「脳を発達させる日本語トレーニング・ペーパー」の役立て方の資料
『分裂病の自己診断表と自己診断』
男性に嫌われない女性の話し方
女性に嫌われない男性のしゃべり方
を教えます

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クマ江さん

《クマ江版・おそろし》
スクールカーストと
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うさ子
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