「ハーバード流交渉術」(ハーバード大学交渉学研究所・フィッシャー&ユーリー)の中に、次のような「交渉事例」があります。
●相手方がこちらをだます、足をすくうという行為や話し方をする、あるいは、合意が成立するという間際になって条件を変えてくるといったような場合がある。このような「相手が汚い手口を使っている」という場合はどう対処すればよいのだろうか。
◎「ハーバード流交渉学研究所」のアドバイス
① このケースは、嘘や心理的策動、圧力を加える、法律に触れるもの、モラルに反するもの、単に不快感を与えるものなど、手口は千差万別である。これらは、原則にもとづかない「意思闘争」によって実質的な利益を勝ち取ることにある。このような戦術は「計略的駆け引き交渉」と呼ぶことができよう。
② 日本人は、このような局面では「ガマンする」という態度をとる。
波風を立てるのを好まないからだ。そして「相手」という人間を善意に解釈する。もしくは、身近な人間に話して相手に腹を立てているという感情を聞いてもらい、憂うつさを解消する。そして、二度と関わりをもつまいと「沈黙」する。
③ もう一つの日本人のとる態度は、「相手と同じ手口で対応する」というものだ。相手がだませば、自分もだます。欺瞞(ぎまん)的に対応するのだ。日本人は、相手の感情に反応して同じような感情で自分の正当性を主張しやすい。そして交渉の再開まで、相手の態度を反復して表象しつづけやすい。
④ このようなケースでは「交渉」という話し合いの進め方を交渉することが大切である。そのためには、相手の戦術を見分けること、その戦術を問題として取り上げること、そして、そうした戦術が望ましいといえるかどうかを話し合う、という三つの段階をたどることだ。次に、「不当と思える戦術」を使っているからといって、その者を個人的に攻撃するのは得策ではない。いったん守りに回った相手は、自分の戦術の正当性にこだわり、逆に個人攻撃の口実をもつことにもなる。
◎エクササイズ・ポルソナーレの分裂病と会話する学習モデル
?日本語の文法は、話し言葉を成り立たせるためのものである、ということをふまえる必要があります。「話し言葉」とは、「その人の主観」を表象する情意や感情に裏付けられている「語句」が言いあらわされる、ということです。
すると、その「相手の語る言葉」の中から「自分」も「同意」できる言葉を見分けて、それを取り上げて、「概念化すること」が重要です。とかく、日本人は、自分の話す言葉に客観的な正当性があれば、その言葉を相手に向けて認めさせようというように話します。
しかし、相手は「他者の話す言葉」は、全て、「遠いもの」「遠ざけるもの」「成り行きにまかせるもの」と扱います。疎外している、ということです。
?このような局面で重要なのは、相手には分かっている言葉を「概念化すること」(正しい定義づけ。客観的な評価の基準を明確にすること)が最も「合意しやすいものである」というように理解しましょう。
「この言葉の意味は、こういうことでいいですか?」と問い、「そのとおりだ」という「同意」が成り立てば、さらに、「この言葉のとおりに、このように行動しませんか?」と「行動のルール」を「合意」することが日本型の交渉の仕方です。これが、また、日本型の分裂病から自分と相手が離脱する方法です。
◎例
相手「明日、会うと約束したけど、都合が悪い。いつになるか分からないよ」
自分「分かりました。お会いしていただく日時を合意できないのは残念です。
でも、お会いしていただくことは承知していただいていると理解していますが、このとおりの意味で間違いありませんか?」
■このパターンのように「会う」ことを定義して同意を得れば、「会う」ということの行動の相互了解はルールとなります。次は、「会う」というその日まで、さまざまなコミュニケーションを交流させて、この会話の中で有益な「同意」を増加することが可能になります。 |