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ポルソナーレ式イメージ切り替え法 NEWSLETTER 第233号
11期17回め平成21年10月10日
脳の働き方と言語の学習回路/浅見鉄男「井穴刺絡・免疫療法」

脳の働き方のメカニズム・おとなと子どもの脳の発達のさせ方
日本語の主観表現のメカニズムと対策
「ハーバード流交渉術」・II
(ハーバード大学交渉学研究所・フィッシャー&ユーリー)

エクササイズ:主観を改善する日本語の学習モデル

はじめに

 ゼミ・イメージ切り替え法、中級クラス、スーパーバイザーカウンセラー・認定コース、Aクラス、№43のゼミをお届けします。
 平成21年10月6日に、NHK・TVの再放送特集番組で、「日本の子どもに迫る貧困」というドキュメントが放映されていました。「朝食の無い小学生」「学費を支払えない公立高校の生徒」といったものです。家庭の経済問題が子どもにもおおいかぶさっているという実情の取材です。議論する数人の「識者」らは、「弱者のセーフティネット」を語っています。しかし、果してそうでしょうか。日本の教育は、この状況でより根本的な問題が問われています。
 それは、日本語をつかった本当の知性への投資です。

ポルソナーレ代表田原克拓

本号の目次

  1. 「日本語」の全体像とは?を理解しましょう
  2. 言語の正しい理解の仕方
  3. 日本語の文法の特色は省略文
  4. 日本人の行動パターンをあらわす事例
  5. 日本人の「内意識」のメカニズム
  6. 日本人は「内」の中でも不適応を起こしている
  7. 日本人は「行動の言葉」を必要としていない例
  8. 日本人の行動パターンの理解の仕方
  9. エクササイズ・主観を改善する学習モデル
  10. ポルソナーレ式ハーバード流交渉術のモデル
脳の働き方のメカニズム・おとなと子どもの脳の発達のさせ方
日本語の主観表現のメカニズムと対策
「ハーバード流交渉術」・II
(ハーバード大学交渉学研究所・フィッシャー&ユーリー、三笠書房・刊よりリライト・再構成)
「日本語」の全体像とは?を理解しましょう

 日本語とはどういう言語か?について、本格的な「対象言語」として追究したのは、国語学者の大野晋です。このことは間違いありません。その大野晋の日本語の取り組み方は、次のようなものです。

?日本語の文法の学問は、まだ整っていない。(だから、さまざまな文法家が、自分の研究の立場から、さまざまな考察の内容を語っている。)

?日本語の性格は、ヨーロッパの言語と非常にちがう。単語がちがうのは当然としても、文法がちがう。日本語と同じような文法の仕組みをもっている言語は、朝鮮語、満州語、蒙古語、トルコ語、ハンガリー語、フィンランド語などである。
これらの言語を比較し、文法の違いや同じところの体系を確立して、これによって日本語の文法をとらえ直す、という研究はまだ誕生していない。

?これまでの日本語の文法研究は、ヨーロッパ語の文法を学んだ人々が、ヨーロッパ語の目で見て「日本語の文法」を組み立てることが多かった。
ところが、ヨーロッパ言語の文法によって、それとは性格の異なる「日本語の文法」の大事な点を見抜くことはきわめて困難なのである。

?明治以降の日本の学問、技術は、ヨーロッパから輸入したいろいろな学問、技術によって切り開かれてきた。医学なら、医者をヨーロッパから連れてきて、お手本を見せてもらった。それを覚えて、次には日本人が自分たちでやってみるという順序でやってきた。工学ならば、橋をつくる技師をつれてきて、お手本を見せてもらった。

?ところが、言語についても、ヨーロッパからヨーロッパの学者を連れてきてヨーロッパ語を見た目で日本語を見てもらえば、日本語の性質が分かるかといえば、なかなかそうはいかない。
言語とは、その言語の中で育ち、ものを認知したり、認識したりする力を、その言語によって養ってきた人間たちの中へ、全然ちがった性質の言語で育った人間が入っていって、簡単にその言語を分析できるかといえばそれは実際には非常にむずかしい。

?このようなことは、おそらく世界のどの言語についてもあてはまるだろう。そう考えると、日本語の文法を研究するには、日本語で育った人間が、自分で自分の言語を深く、広く反省してこれを考えてゆく努力をする以外にない。

?世の中でいちばんむずかしいことは、「自分自身を知る」ことであるという。何も、日本語の文法の学問を知らなくても、日本で育てば日本語を使うことはできる。
勉強すれば、書くこともできるようになる。すると、日本語をふりかえって自分でその文法を考えるという努力は、「自分自身」を見つめて、自分で「自分」を規定しようということだ。

言語の正しい理解の仕方

■大野晋がここでのべていることは、言語は、どこの国の言語でも、その言語を使って生活し、人間関係をつくり、一生を終えるという人間の行為や営みを内包するものとしてある、ということです。言語は、ポルソナーレが解明して明らかにしたように、「乳・幼児の心身の生長と発達」に見るとおり、脳の働き方がつくる「行動の仕方」として習得されます。

 「言語」の大元は、前頭葉に思い浮べられる形象性のイメージです。リンゴならリンゴという具体的な実物と一義性をもってむすびつく、という性質の形象像が「言語」の大元です。

 この形象像が小さい形としてイメージされる時は「近づいていく」という行動が表現されます。

 大きい形としてイメージされる時は、行動は終了する、と表現されます。このように、「どのように行動するか」という行動を誰にも共通する行動の仕方として記号化した順序を秩序として表現したものが言語の「文法」です。

 「日本語とはどういう言語なのか?」と問いかけて、そこに思い浮べられる時の「日本語」を対象言語といいます。

 言語は、手に取って触るとか目で見て確かめるというようには存在していません。

 そういう存在の仕方をするものを「物理的な実在」といいます。

 言語は、「話し言葉」と「書き言葉」との二通りとしてあります。「書き言葉」は基本的に紙に書かれるので、手で触っても確かめられるように思われます。

 しかし、紙に書かれた文字なり文章は、「絵画で描かれたもの」が実物のものではないと同じように、言語の実体ではありません。

 言語の実体は、人間の脳の中に表象される形象性をもつイメージにあります。この形象性をもつイメージの思い浮べ(喚起)がどういう順序性をもったときに、その言語を使う人間の行動が可能になるのか?ととらえることを「対象言語」といいます。

 「言語」の本質は、広義の意味の「行動」をあらわすことにあります。これが言語についての本質を示す定義です。

 すると、「日本語とはどういう性質の言語か?」と問いかける時の「言語」は、広義の意味では「関わる」という「行動」を伴うので、「言語である」ことには違いはありませんが、「対象言語」のように「生活」「人間関係」「人間的な営み」の次元の行動をあらわすものではありません。狭義の行動からは遠く隔たっています。この狭義の行動にはまだ至らない、あるいは狭義の行動からは遠くに離れているということを指して「メタ言語」といいます。

 乳・幼児の脳に表象される記憶のイメージも「メタ言語」です。

 このような手順を明らかにしてその上で「日本語とは?」を問いかけてみると、「人間の行動パターン」とはどういうものか?が浮上します。その「人間の行動パターンの秩序」や「3人以上の人間」で合意されている「行動の規範」とは何か?を明らかにするのが「文法」です。

 大野晋は、厳密にいうと、こういう主旨のことを述べているのです。

日本語の文法の特色は省略文

 大野晋は、「日本語の文法」の性質についても次のように書いています。

?中学校の後半になって、英語が少し読めるようになった。英語と日本語とを比べて考えることができるようになったとき、一つの疑問が生じた。
日本語の文章には、主語のない、主語と述語の照応しない文章が非常に多い。

ところが、英語では、主語・述語が応じ合って、それが文であると習う。主語・述語が応じ合わない文は、文ではないという。
確かに、主語・述語が応じ合うことは重要である。にもかかわらず、日本語では、主語を省略した文、主語のない文が多い。
それでも日本人は日常生活をほとんど困難なしに暮らしている。これはどういうことなのか。

例えば、外から扉を叩く。
中から
「入っています」
と答えが返ってくる。日本人はこれで分かる。この表現で十分である。「私が入っています」と主語を言う必要はない。日本語はこれでよしとする。
すると、「日本語には、日本語としての仕組みがあるのではないか?」という考えが消えなかった。
(『日本語の文法を考える』岩波新書より)

日本人の行動パターンをあらわす事例

■「主語」に当る語句を省略するという日本語の特性について、金田一春彦は、『日本語』(上、岩波新書)で次のように説明します。

?日本語の語彙(ごい)は、大きく見て、和語(やまとことば)、漢語、洋語、およびそれらの混成語の四つに分けられる。
和語(やまとことば)の例……あめ(雨)、かぜ(風)、やま(山)、かわ(川)、ひと(人)、ゆく(行く)、くる(来る)、など。
漢語の例……「天地」「太陽」「立春」「風雨」「降雨」「修身」「建国」など。
和製の漢語(日本で、中国の漢語、漢字を元にしてつくられた)の例……「油断」「怪我」「心配」「体操」「盲導犬」「革命」「断交」「不動産」
ヨーロッパ語を訳するときに、翻訳のために新造した和製漢語の例……「哲学」「科学」「文化」「社会」「映画」「放送」など。

?日本人は、「和語」(やまとことば)を何でも漢字で書こうとした。
「雨」は中国でも降る。中国から輸入した「雨」という漢字を使って「雨」にかんする和製漢語をつくった。「春雨」(はるさめ)、「五月雨」(さみだれ)、「時雨」(しぐれ)、「雨間」(あまあい)、「雨やどり」、「夕立」(ゆうだち)、「菜種梅雨」(なたねつゆ)、「狐の嫁入り」(日照り雨のこと)、「集中豪雨」、「秋雨前線」(あきあめぜんせん)、「雨男、雨女」、など。

?日本人は、自然や虫や季節には関心が深いが、人間には関心が薄い。平安朝の文学作品には「体」という言葉は一つもあらわれない。その頃、「体」という日本語はなかったのかと疑われた。
「体」のかわりに「身」という単語だ。「身」と「体」は違う。
「身」…「身なり」「身づくろい」など、と使われた。「姿」も、「和製漢字」だ。「着物を着た人を、少し遠くから離れて眺めた時の印象」のことだ。
日本人は、男性が女性を見るとき(女性が、男性を見るときも)「着ているもの」に非常な関心を示す。日本の文学作品は、人物の描写では、「着ているもの」の描写が詳しい。
尾崎紅葉の『金色夜叉』では、次のように描写されている。
「円髷(まるまげ)に結ひたる四十ばかりの小くやせて色白き女の、茶微塵(ちゃみじん)の糸織の小袖に黒の奉書紬(ほうしょつむぎ)の紋付の羽織着たるは、この家の内儀なるべし。中の間なる団楽(まどい)の柱側に座を占めて、重たげに戴(いただ)ける夜会結びに淡紫(うすむらさき)のリボン飾りして、小豆(あずき)ねずみの縮緬(ちりめん)の羽織を着たるが、人の打騒ぐを興あるやうに涼しき目を見はりて、みずからは淑(しと)やかに引繕へる娘あり。」
このような描写は、『源氏物語』でもおこなわれている。日本人は、古い時代から、人物を紹介するときには、どういう「よろい」を着て、どういう「かぶと」をかぶって、どういう「刀」をもって、どういう弓矢をもって…ということを四○○字近くも事細かに書ける。この傾向は、江戸時代の「浮世草子」でも「洒落本」でも一貫している。

日本人の「内意識」のメカニズム

?日本人は、「他人」とか「よそ」という言葉をよく使って「自分の内のもの」でなければ「自分の外のもの」という区別を無意識にあらわす。

例…「他人行儀」「他人事(ひとこと)」など。これは「自分の外のものだ」という冷たい響きをあらわすために用いられる。
「よそのおじさん」「よそのおばさん」「よそのお姉さん」といえば、「怪しい」というニュアンスも加えられる。

?日本人は「世間」(せけん)という言い方をする。この「世間」は「社会」という言葉に似ているがイメージされる内容はだいぶ違う。土居健郎(『甘えの構造』)によればこうだ。
「身内の内輪の世界」…この中の人間関係は遠慮はいらない。
「世間」(せけん)…いろいろと心遣をすべき世界のことだ。「擬似血縁の人間関係」の世界だ。「上下関係」「身分」「分限」という秩序で成り立っている。ものをもらったり、恩義を受けたら必ず「義理」と感じて「お返し」をしなければならないと了解されている世界だ。
「他人の世界」…「遠慮のいらない世界のことだ。日本人の「公徳心の欠如、乏しさ」が指摘される世界である。家の外で会っても挨拶(あいさつ)をしない、無視して通り過ぎていく、顔をそむけて通り過ぎる」、「公園のような所に空き缶を捨てる」「外からかかってきた電話を家の中で受けると横柄でぞんざいな話し方をする」などが「他人の世界」だ。

◎ポルソナーレ注…大野晋が解明した「尊大表現」に至る段階とプロセスのことです。

まず、「内・うち」と「外・そと」が区別されます。「内・うち」とは血縁意識で成り立つ対人意識の世界です。
1・「恐怖」2・「畏怖」3・「畏敬」4・「尊敬」5・「敬愛」6・「親愛」7・「愛狎・あいこう」8・「軽蔑」9・「侮蔑」の9つの段階のうちで「親愛」「愛狎」「軽蔑」「侮蔑」のゾーンにある人間が「内・うち」なる対象です。「世間」はこの4つを成立させる血縁意識が家の外に拡張されたものです。この「拡張」ということを前提として了解するのが日本人の「内扱いをしているね」の「省略意識」です。
「あなたは、私と同じ村の人でしょ」「私と同じ空間に居る人でしょ」という「内なる関係である」という主語相当の語句が省略されています。
「他人の世界」とは、「客観的な社会性の世界」のことではなくて、「内なる関係にあった」ということが前提されていて、次にこの「内なる関係」が「軽蔑」「蔑視」「侮蔑」にまで進んだ「主観の中での成立」を指す概念です。日本人の「公徳心の乏しさ」は、「意思主体」や、その「意思をつくる社会的な価値」を媒介や接点にして人間関係を成立させるのではなく、日本人の「主観」が「内となる対象」か、「外となる対象に変化したのか」を基準にしていることにもとづくものです。

?日本人は、自分の仲間や郷土というものを意識して、内か外かの対象意識をつねに明確にする。
例…「夏の甲子園」の人気(郷土意識)。「相撲(すもう)の番付の○○部屋、○○県出身」(郷土意識)。「外国で生活している日本人の『県人会』」(「熊本県人会」「広島県人会」。ブラジルで)。「和食」「和服」「邦楽」「邦舞」「国文学」「国語」など、日本とそれ以外の国をいちいち区別して表現する。
「国語」を英語に訳せば national language となり、こういう表現はよほどの専門的な本だと扱われる。

日本人は「内」の中でも不適応を起こしている

?日本人は、内と外とを明確に区別するために「外のもの」には「遠ざかる」「遠くにある」(隔てられている)という意識をもつ。
そこで、自分が「外に向かう」(内から隔てられる)ということにかくべつの感情をもつ。

◎例
「旅に出る」…松尾芭蕉の『奥の細道』の「旅立ち」では、芭蕉も門人もものすごく別れを悲しむ。そんなに悲しむなら旅に出なくてもよさそうだと思うが、「旅立ち」に心細く、寂しい気持ちを味わう。日本人は、この「心細さ」「寂しさ」を楽しみにしている。
アメリカ人にとっては「旅」は二つしかない。「楽しい旅」「実務的にやむをえず出かける実践の旅」の二つだ。
日本人は、「ヨソの地を歩く寂しさ」「ヨソ者扱いをされる心細さ」を文学の基調にしている。

?日本人は、「内なる関係」になったり、恋愛などをとおして「内なる関係」が成立しても、そこには感情の交流はあっても意思の交換はないので、つねに「諦めの気持ち」、時には「捨て鉢(すてばち=希望を失って自暴自棄になる気持ち)の感情」をもつ。そのための副詞が多くつくられている。

◎例
「どうせ」(投げやりの気持ちの表現。どのように努力しても評価されない、どのように暖かく見てもらっても期待には応えられない、の意)。
「どうせこの世は癪(しゃく)の種」
「どうせ二人は、この世では花の咲かない枯れ芒(すすき)」
「どうせ拾った恋だもの」

?日本語は、「行動」にかんする言葉は少ない。その典型が「恋愛」や「喜び」を表現する言葉が非常に少ないことだ。

◎例
喜びをあらわす語句…「幸福」「幸せ」「幸甚」など(数は少ない)。
悲哀をあらわす語句のグループは多い…「不幸」「苦労」「難儀」「悲しい」「哀れ」「寂しい」「切ない」など。

シナリオ・ライターの宮崎恭子の話。
「今の若い人は、幸せにします、幸せになりますというのが結婚の決まり文句だが、昔は、おまえと苦労をしてみたい、が心を動かしていた。」

高橋義孝の話。
「日本語の心理語句で少ないものは恋愛にかんする語彙(ごい)だ。フランス語、スペイン語には愛の表現が無限にある。日本語の愛の表現の典型は、『死んでもいいわ』『あなたがいなくては生きられない』『あなたなしでは生きてはいけない』だ。」

河盛好蔵の話。
「ヨーロッパの小説を、日本人が訳す場合に一番うまいのが自然描写であり、一番まずくて不自然になるのは恋愛描写だ。これは、日本人生活に、昔から恋愛の会話がなく、恋愛小説もないからだ。」

?日本語には多くて、外国語には少ない語彙(ごい)は「死ぬ」という行為をあらわす言葉だ。森鴎外は、「心中は、その実はあれども、その名称なし」とのべる。翻訳不能の日本語として知られている。同意語の「情死」も日本製漢語だ。

◎例…「戦死」。
英語は"Smith was killed."
日本語では「戦死する」(死ぬ、投身する、と同じように自動詞の形で表現して勇ましさや悲しさをあらわす。英語では、他動詞を受け身の形にする)。

日本人は「行動の言葉」を必要としていない例

?日本語の「移動」や「行為」をあらわす語句は少なく、擬態語をつくってこまかく、くわしくする。
「歩く」…位置の移動の言葉は、ドイツ語、ロシア語に豊富である。
日本語の「歩く」…「てくてく歩く」「スタスタ歩く」「ブラブラ歩く」「ヨチヨチ歩く」「トボトボ歩く」「しゃなりしゃなり歩く」
「見る」…「じっと見る」「じろじろと見る」「しげしげと見る」「じいーっと見る」「きっと見る」など。
日本語の場合は、客観的な擬態の違いをあらわすのではなく、「歩いている人」「見ている人」の心情の違いを想像して言い分ける、というところに特色がある。

?日本人は、「自分が悲しくなること」にことのほか心を惹かれる。
「百人一首」には「恋の歌」が40首くらいあるが、このうち「38首」は「失恋を歌った歌」「添い遂げられない恋を歌った歌」、「せっかく恋を得ても、うまくいくかどうか、そもそも長続きするかどうかを心配して不安にかきたてられる歌」が多い。
「けふを限りの命ともがな」といった調子だ。
日本人は、ものごとを努力したり、工夫に工夫をかさねてねばりづよく追究する、とは考えない。「成り行きにまかせる」「自然の成り行きで、自分勝手に現れる」ととらえる。
それは、日本の古典文学によく書きあらわされている。

◎例
「あじきなく」…「味気無い」。ものごとに興味が感じられなくて味わいがない。
「うし」…「憂し」(うし)。思うようにならず苦痛を感じる気持ちのこと。
「うたてし」…「転(うたて)し」。ものごとの進み具合がはなはだしいこと。不快感を感じること。嫌、情けない、の情意表現。
「うらめし」…「恨めし」。相手の仕打ちに不満をもち、その不満の感情を不快感とともにいつまでも、その人物に向けて持ちつづけること。
「わびし」…「侘し」。失望、失意、不遇の状態で力が抜けて頼るものもなく心細く辛い気持ちのこと。

日本人の行動パターンの理解の仕方

■ここまで、日本人が「会話」の中で使っている日本語を文法から見た特色の例をご紹介してきました。
 大野晋の解析を踏まえて、ご紹介した日本語のポイントを整理してまとめると次のとおりです。

①日本語は、「内の人」と話して、「外の人」とは話さないということを特色とする。
そのために「主語」に相当する語句を省略する。この省略は、「省略された言葉の意味」を「知らなくてもよい」「分かっていなくてもいい」という構造をもつ。
このことは、「省略された主語相当」の語句の「誰が」「何が」という対象を消失する、という行動パターンを生む。すると、「恋愛」や「結婚」「子育て」の中では「誰が何をする」「何がどうなる」「何を、誰がどうする」という行動の取り決めや同意(合意)が無いので、ここで「不適応」が発生する。

②「省略」の文型は、「動詞文」だけで成立することを意味する。
大野晋は、「省略文」の典型は
「火事だ」
「火事!!」
というものだと説明する。
この文型は、「火事」という状況を伝えることを意図している。相手に、火事という状況が「伝わる」「分かっているはずだ」という事実の了解が前提にある。
しかし、紹介の事例で見てきたように、日本語には「動詞」の語彙(ごい)が非常に少ない。
この少なさを補うために副詞の数を増やしている。
「てくてく歩く」「しっかり歩く」「きちんと歩く」「きっちり歩く」などだ。「省略」は、「主語相当の語句」とともに「動詞」にも及ぶ。
すると、「気遣い」「相手の情意の推測」を求めることになる。これは必ずしも、「省略の語句」の同意に至らないことを意味する。このことは、「内(うち)なる人間関係」の中でも「人間関係の不適応」の原因になる。

③紹介した事例は、「悲しみ」とか「悲哀」にかんする語句が多いとのべられている。なぜ「悲哀か」といえば、「雨」「季節」にかんする語彙(ごい)が多いことの事情と必然から見ても分かるとおり、つねに関心をもって認知の目が向けられているということだ。
恋愛、結婚、家の中の内(うち)なる関係においても、たちまち「遠いものになる」という関係の不安定さがあるということだ。
それは、「省略」にともなって発生する「その省略されている語句の意味とは、何であったか」をあらためて「知的な対象」とするということを消去するということだ。
一例は「よろしく」という日本語の慣用句だ。もともとの語意は、「内(うち)意識」にもとづく。「自分の居る位置に寄って来て、自分に寄り添うような行動、言葉を適当な範囲であらわしてほしい」というものだ。この主意が省略される。すると、人間関係の不適応を防ぐとすれば、「○○をおこなうにあたり、○○の期限まで、○○の水準まで実現してほしい」という主語相当の語句の説明が必要になる。

④大野晋は、日本語の「助詞」の『は』『が』『へ』『に』『の』を解析して、「遠くのもの」を未知と扱い、「近くのもの」を既知と扱う、という意味が「扱い方」の変化にもとづいて使われているとのべる。これは、「誰が」「何が」「どういうものが」という未知の対象は、「省略されない」、「誰は」「何は」「どういうものは」という既知のものは「省略される」ということだ。
大野晋は、このような日本語の文法の成立の事情を「村」(部落・共同体)の中で決まったパターンの行動が反復される、ということに見ている。語源は、そういうものだ。
このような背景を語源の事情とするならば、現実の状況が変化しているという新たな現代の中では、日本語の文法は、現実を静止したものと見る行動意識を強制することになる。
一例は、「転職」だ。そこには「新たな人間関係の輪」がある。この「輪」にたいして、自己は、「ヨソ者」として立つ。ここで「○○です。よろしくお願いします」とだけしか言わないとすれば、「初めてお目にかかります。新参者です。何もできませんが微力を尽してお手伝いさせていただけるよう、お引き回しをよろしくお願いします」という「主語相当の語句」が省略される。省略とは、「内なる人間」としてふるまうということだ。これは、すでに「輪」を形成している人間関係の中で「察せよ」「推察せよ」という発言者になる。「名刺」を持たないで初対面の人に挨拶(あいさつ)するようなものだ。「あなたは、名刺を持たなくても、自分は誰であるのかがよく知られていると自信があるくらい、そんなにエライのか?」と見なされる。「火事だ!!」の「省略文型」が、「○○をせよ」という命令文に変わることと同じ現象が生じる。ここでは、人間関係の不適応と、「仕事」という未知扱いの対象を「既知扱いする」という不適合が発生する。

■このような日本語の文法の乖離性(かいり。省略して説明しない。説明しない内容を相手に推察させることの意)を、より具体的にすると、どうなるでしょうか。

エクササイズ・主観を改善する学習モデル

 『ハーバード流交渉術』に、次のような「交渉」のための話し方があります。
「信用するか、信用しないかは別問題です」

◎ハーバード大学交渉研究所、フィッシャー&ユーリーの解説。

?この質問(問いかけ)は、相手方が、「私の言うことを信じてほしい。あんなにいろいろやってあげたでしょ」という発言、ないし、そのような事実を語ったという局面でのものだ。日本人は、「恩に着せる」という。また、交渉者も過去のそのような恩を意識して「義理を返す」という行動をイメージする。

?交渉は、ここで窮地におちいっていく。日本人は、ここで、「そういうけれども、私は、あなたに○○のことをした。これについては忘れてはいないか」という気持ちになり、相手個人という人間を深追いする。双方ともに相手の人間性に不信の念を抱く。

?そこで、モデルの交渉者はこう言う。
「あなたのしてくれたことには感謝しています。でも、信用するかどうかは、ここでは、問題ではありません。問題は、原則です。あなたは今、○○という支障に突き当っていませんか。それについて、私どもは申し出をしていますが、この申し出を判断するのに、どんな点を考慮に入れるべきだと思いますか?」

?このように、人間を信用するかどうかを別問題と断言します。そして互いに不信の念を抱き合うかもしれない窮地を脱する。そして、どんな点を考慮すべきかを質問して、問題を積極的に原則の問題へと向けている。

ポルソナーレ式ハーバード流交渉術のモデル

■ポルソナーレのアドバイス
◎日本人の「主観意識」の改善の仕方の学習モデル

①日本語の文法は、人間関係を「内」か「外」かに区別することを前提にしています。
「私のことを信用しないの?」という発言は、同時に交渉者の思いでもあります。この「信用するか、信用しないか」の「内意識」から離れることは、「外の人間扱いするか、しないか」の判断の局面です。

②日本語の文法は、「外扱いする」ときに、金田一春彦の紹介する事例に見るとおり、たちまち「わびし」「うし」「あじきなし」「うらめし」「つらし」という心理状態に陥ります。日本人は、交渉にたいして「ほどほど」「しかたがない」「ひけめ」「気がね」「あたりさわりがない」「諦めがよい」「気持ちを飲みこむ」などのような日常の「行動パターン」で臨みがちです。

③「私は、あなたのことを信用しています。あなたは、私に○○のこと、□□のこと、そして、△△のこともしてくださった。この恩は忘れていません。そこで、さらにお世話になりたいと思っていますが、私に、お手伝いできることはありませんか。
微力ですが、何かお力になれることがあれば、ご恩のいくらかでもお返しできて、こんなに嬉しいことはありません。」
このように、相手を「内扱い」(相手の問題を既知扱い)することで、「何か」「お手伝い」「お返し」という「未知のこと」をテーマとして設定します。

■日本人は、現代においてもなお、「省略すること」と「省略しているものごとの中身を知らなくてもいい」と扱っています。ここから「知るべきこと」「知る必要のあること」に不適合を引き起こしています。「2008年の9月」の「リーマン問題」以前は、これは「バブル性の観念」として有用性の錯覚が成り立っていました。しかし、現在は、「行動の対象は何か」を明確に、抽象の名詞・形容詞でとらえきれないところで本格的な「行動停止」が発生しています。まずは、この学習モデルのとおりの対人関係の「適応力」を取り組みましょう。

ゼミ・イメージ切り替え法 NEWSLETTER 第233号 一部掲載

関連
日本型の分裂病の構造 「ハーバード流交渉術」と日本語


連載
前回:客観表現のための日本語の能力とはどういうものか「ハーバード流交渉術」
次回:日本語の主観表現のメカニズムと対策 「ハーバード流交渉術」・III

参考:脳の働き方の学習のご案内

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よくある質問

学校に行くとイジメがこわいんです。私にも原因ありますか?

怒りっぽいんです。反省しても、くりかえしています。治りますか?
脳と心の解説

「仕事・人生・組織に活かすカウンセリング」です。他者の心身のトラブルを解消できれば、自然に自分の心身のトラブルも解消します。

プロ「教育者」向けのカウンセリング・ゼミです。
人間は、誰でも「気持ちが安心」しないと正しく「ものごと」を考えられません。

「脳を最大限に発達させる」が教育の狙いと目的です。「指示性のカウンセリング」とは、 「一緒に考える」「共感し合って共に問題を解決する」カウンセリング術です。ものごとには「原因」(脳の働き方)があるから「結果」(心身のトラブル)があります。

「脳の健康を向上させる」、が教育のテーマと目標です。「指示性のカウンセリング」は、「考えたことを実行し、考えないことは実行しない」 という人間の本質を、最後まで励まし、勇気づけるカウンセリング術です。

脳の働きがつくる「人格=パーソナリティ」を育てる!が教育の方針です。
「指示性のカウンセリング」は社会性の世界(学校・仕事・社会の規範・人間関係のルール・合理的な思考)と正しく関わる!を一緒に考えつづけるカウンセリング術です。

ストレスに強い、元気に働く「脳」に成長させる!!が教育の魅力です。
「指示性のカウンセリング」は五官覚(耳、目、手、足、鼻)を正しく発達させて、言語の能力も最高に発達させるカウンセリング術です。


脳と行動の診断

「心の病いの診断学」が楽しく身につきます。

心の病いの予防と解消の仕方の「人間の理解学」が身につきます。

心の病いに気づける「人間への愛情学」が驚くほど身につきます。

「交渉術」の知性と対話の能力が目ざましく進化しつづけます。

相手の心の病理が分かって、正しく改善できるので心から喜ばれます。「心の診断術」

病気になるということ、病気が治るということが正しく分かる、最高峰の知性が身につきます。


よくある質問

朝、起きると無気力。仕事にヤル気が出ません。うつ病でしょうか?

仕事に行こうとおもうと、緊張して、どうしても行けません。治りますか?
バックナンバーの一部を9期後半分より、随時掲載していきます。
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ポルソナーレのゼミの様子をYouTubeに公開しました。

脳を発達させる日本語トレーニングペーパー 谷川うさ子王国物語

一部公開しました。
トップページ NEW! 年間カリキュラム 学習の感想と学習成果 「日本人の思考」と「谷川うさ子王国物語」と「グローバル化の恐怖」
学習内容(サンプル) 「言葉」 日本語の影響。その仕組みと感情、距離感、人間関係について
「脳を発達させる日本語トレーニング・ペーパー」の役立て方の資料
『分裂病の自己診断表と自己診断』
男性に嫌われない女性の話し方
女性に嫌われない男性のしゃべり方
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ポルソナーレのマスターカウンセリング

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受講生の皆様へ 平成25年冬版 ポルソナーレからの真実の愛のメッセージ
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