「男性と女性の性」の考え方は、「多元的無知」がつくり出しています |
まず、初めに「ロルフ・デーゲン」という科学ジャーナリストが書いた『オルガスムスのウソ』(文藝春秋社、文春文庫、赤根洋子訳)から、「多元的無知」とはどういうものか?からご紹介します。
ロルフ・デーゲンは、国際的に評価の高いジャーナリストです。
「ドイツ出版協会」の出す賞も授与されています。
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「女性の「性」についての「多元的無知」の事情 |
- 二十世紀のセックスシンボルといわれた女性に「マリリン・モンロー」がいる。この「マリリン・モンロー」は、自殺の直前にかかりつけの精神科医ラルフ・グリーンソンに語った告白テープがある。
「私が先生のところに初めて来てお話したことは本当です。私、オーガズム(オルガスムス)を感じたことがないんです。」
モンローは、三度結婚した。
恋人もたくさんいた。セックスの機会にはこと欠かなかったが、死ぬまで「無オルガスムス症」を克服することができなかった。(アメリカのサイエンスライター、ナタリー・アンジェ『woman女性のからだの不思議』より)。
- 女性の「性」というもの自体は、一般的に暗黒大陸と見なされている。中でも「オルガスムス」はまちがいなくその最も不透明な領域である。文化史上、それは、哲学者、神学者、医学者、心理学者の果てしない憶測と議論の的(まと)となってきた。男性のオルガスムスは単調な規則正しさで存在し、大部分はその当事者にとってのみ興味深い。
しかし、女性のオルガスムスは、存在することは確実だが、起こらないことがあまりにも多い。「そのために興味をそそり、数々の議論や論争、イデオロギー、そして俗説を生み出してきた」(カリフォルニア大学・人類学者ドナルド・サイモンズ)。
- マスターズとジョンソンの研究以来、謎はほんの少し解けた。
「現在、通常のセックスでオルガスムスに達しない女性がかなりの割り合いに上ることが分かっている。マリリン・モンローのようにただの一度もオルガスムスに達したことのない女性の割合を、性科学者らは、少なくとも10%から30%であると推測している。しかし、解明されたこのわずかな領域以外は、すべて混沌(こんとん)としている」(エレイン・モーガン)。
「女性にオルガスムスが起こる、ということは分かっている。だが、どれだけの割合の女性に起きるのか?人類の進化の過程のどこで起きるようになったのか?どこで起きるのか?起こらないとどうなるのか?起きるとどうなるのか?そして、起こらないことがこんなに多いのはなぜなのか?こうした問題は、いまだに熱い論争の的(まと)である」(アメリカのサイエンスライター、エレイン・モーガン)。
- 「キリスト教中世」は、「性的快楽は全て、男女を問わず、悪だ」と考えた。「肉には善きことは何もない。神を恐れる者は、禁欲せねばならぬ」(聖クレメンス)。
「生殖を目的としないセックスは全て悪魔の仕業だ」(聖アウグスティヌス)。
これが、数百年にわたってキリスト教の「結婚道徳」の礎(いしずえ)となった。
十九世紀には、「女性の性」への敵意は、一種の歴史的集団ヒステリーにまで高まっていた。
「女性にオルガスムスがあるなどと考えるだけでも精神病者の妄想である。そんなものはありえない」(当時の精神科医の話)
「女性に性的な感覚があるなどという主張は、汚らわしい中傷だ」(当時のイギリスの権威、ウィリアム・アクトン)。
- 次に、フロイトの理論と精神分析が広がった。フロイトは、何世代もの間、女性にひどい自己疑念とコンプレックスを植えつけた。フロイトは、俗説や無数の解剖学の本によって形成された先入観に囚われていた。
「ペニスの相対物はヴァギナである。
女性のセクシュアリティを決定するのはヴァギナのみである。ヴァギナへの挿入のみが純粋な充足をもたらす。即ち、女性のオルガスムスには、ヴァギナ・オルガスムスと、クリトリス・オルガスムスとの二つの異なる形態がある。前者は成熟した形態である。後者は幼児期の代替的充足状態にすぎない」(フロイト)。
「このフロイトの憶測は、医師たちによって事実として成分化された。三世代にわたって、女性たちに、自分は性的に不完全だというよけいな感情を植えつけてきた」(マサチューセッツ大学、生物学者、リン・マーガリス)。
- ケース・ウェスタン大学の心理学者、ロイ・バウマイスターによる文献研究は次のとおりである。
「毎日、セックスのことを考えるという男性は、半数を上回る」「女性の場合は、五分の一にも満たない」。
「平均的な男性は、一日に数回、性衝動を感じる」「平均的な女性の頻度(ひんど)は、せいぜい週に数度である」。
「男性が、性的空想にふける頻度は、女性の二倍である」。
青少年を対象にした「アンケート調査」から「セックスに全く興味がないグループ」と「セックス以外のことが考えられないグループ」を選別した。結果は、「セックスに興味がないグループの四分の三が少女」だった。「セックス以外のことが考えられないグループの97%は少年で占められていた」。
- アメリカの女性心理学者が、実験による検証を試みた。
実験とは次のようなものだ。
「若くてハンサムな男性数人」に、大学の構内で「魅力的な女子学生」に声をかけさせた。「今夜、ぼくとベッドインしない?」。
同時に、「若い女性の数人」に、「ハンサムな男子学生」に同じ誘いをかけさせた。結果は次のようなものだ。
「四分の三以上の男性」が即座に誘いに乗った。その多くは、「今夜どころか、今すぐにでもしたい」と答えた。これにたいして「同意した女子学生は一人もいなかった」。
- ロイ・バウマイスターとそのチームは、一年以上にわたって「男どうし」「女どうし」の「日常会話」を聞き取った。その内容を調べると、男女で必ず顕著な違いがあらわれる話題が二つあった。その話題とは「食」と「セックス」である。
A・食べることについての話題
男性どうしの場合…実用的でデリカシーに欠いている。たいていは、何々を食べるならどこが便利で、早い、というものだ。
女性どうしの場合…食べることに関する女性たちの会話は生々としたディテールに満ちていた。その料理やデザートについて微に入り、細をうがってえんえんと話す。聞き役に回った女性たちは、うらやましそうに聞き入り、その美味を想像の中で味わってうっとりしていた。
B・性についての話題
男性どうしの場合…男性は楽しそうに活発に会話する。互に、詳細で生々しいセックス描写を話し、他人のセックス自慢を喜んで聞く。自分が話す番を回ってくるのを待つ。曖昧なぼかした表現では満足しない。
ストレートに話す。学者でさえ、大規模な会議の席で、知り合いの女性一人、一人の肉体的魅力について詳細に論じて興じることがあった。
女性どうしの場合…セックスの話題については、女性どうしの会話にはめったに登場することはない。話題になっても、曖昧で冗談半分だった。女性たちは、自分の体験した性体験の実例を披露(ひろう)することは、決してなかった。
- 「クリトリス」とは、ギリシャ語で「小さな丘」を意味する。
オーストラリアの産婦人科医、ヘレン・オコネルは、女性の「クリトリス」を調査した。ヘレン・オコネルは、女性の遺体10体の下半身を「3Dカメラ」を用いて検査した。調査結果は、次のとおりである。
- クリトリスは、「氷山」に似ている。外に見えているのは、ほんの先端だけである。体内に埋まっていて見えない部分はかなりの大きさがある。
- クリトリスの目に見える部分の下に、ピラミッド形をした「親指」の大きさの「海綿体組織」が広がっている。
- この海綿体から「二本」の突起(最長9センチ)が体の奥へ向かって伸びている。その先端に新たな「海綿体」がある。その一部は、「膣の前壁」に接している。
- クリトリスは、従来考えられてきたよりも「尿道」に近く、「膣の前壁」のずっと大きな部分を覆っている。「海綿体」の割合は、男性のペニスよりも多い。
- クリトリスは、ペニスとは違って、「尿道」を覆うカバーではなくて、全体が全て敏感な神経の束である。この組織には、8,000もの神経線維が詰まっている。
この量は、男性のペニスの数と全く同じである。しかも、狭い空間に集中的に圧縮されている。
- クリトリスと男性のペニスは、発達生物学的に同種の器官である。「胎児」は、最初、「中立的な前駆器官」をもっていた。これが「男性ホルモン」の影響を受けてペニスとして成熟し、そうでない場合はクリトリスになった。同じ起源をもっている。そのために「相互器官」とも呼ばれている。
- 「ヴァギナ・オルガスムス」は、フロイトの亜流がつくり上げた「多元的無知」がつくり上げた俗説である。その一つに「Gスポット」説というものがある。「Gスポット」とは何か。膣の前壁(尿道口側)に、性的刺激に敏感なクルミ大の組織がある、というものだ。ドイツの産婦人科医の「グレーフェンベルク」にちなんで名付けられた。この「Gスポット」は、きわめて強い性的快感をもたらしここを適切に刺激すると「連続オルガスムス」が起きるという。
「Gスポット」をめぐる専門家の論争はときとして宗教戦争の様相を呈する(『PMマガジン』ドイツの雑誌)と言う。だが、遺体解剖では「Gスポット」に相当する組織は何ら発言されていない。
ペース大学(アメリカ)の医師、テレンス・ハインズは、これまで発表された専門書や論文を徹底して調べた。
「Gスポットは存在しない。これについての科学的説明はあまりにも不充分である。膣中に、結果や神経細胞の集中する個所が存在することを証明した解剖学的ないし、生理学的な研究は一つもない」。
アメリカの性科学者ヘレン・シンガー・カプランはこうのべる。
「女性のオルガスムスはクリトリスへの刺激という生理学的刺激の一種類しかない」。
「一人でハンバーグを食べる時も、恋人どうしなど、好きな相手とディナーをいただく時も、使うのは同じ筋肉である。だが、感じ方は全く違う」(ヘレン・シンガー・カプラン)。
この「感じ方は違う」というイメージをふくらませてきたのは男性の性的妄想だ。だが、この空想は「多元的無知」として一人歩きをさせられている。
「自分はGスポットがない」「自分はGスポットを見つけられない」と感じる女性を多くつくり出してきた。ここには「自分は、女性として不完全だ」とか「こんな自分は病気ではないか」と考えてしまう危険性がある、とドイツの性科学者ヴォルフガング・ベルナーはのべる。
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「多元的無知」とは「知っているフリをすること」です |
ドイツの科学ジャーナリスト、ロルフ・デーゲンによる「性科学」から見た「多元的無知」の実体をご紹介しました。この「性」にかんする「多元的無知」は、歴史的かつ、世界的な規模のものであるとロルフ・デーゲンは説明します。
何が「多元的無知」なのか?についてお話する前に、社会心理学としてよく知られている「多元的無知」の意味をご一緒に確かめます。ロルフ・デーゲンは次のようにのべます。
- 学校の授業で、教師が新しい単元の授業をおこなう。教師は、教科書に書かれている概念を説明する。授業は、当然、系統だてておこなわれている。
- 「何かご質問はありませんか?」と教師が聞く。理解できた生徒は、復習や予習をおこなってきた生徒だ。復習をしていない生徒は質問の手を挙げない。
そして「分かっていないのは自分だけだ」と思い込む。「多元的無知」とは、復習をしていない生徒は誰もがよく分かっていないが、しかし質問の手を挙げようとはしないというように「同じ行動」を示しているのに、「自分の感覚だけが人とは違っている」と誤って信じ込む「ものの考え方」のことである。
- 「多元的無知」に共通する「ものの考え方」は「自分はよく分かっていない」という真実を隠すこと、そして「分かっているようなフリをする」というように、社会的に不正直な行動をとるという点である。この二つのパターン(「分かっていない」ことを隠しつづけること)と「分かっているフリをして、分かっているかのような見せかけの行動をとること」の二つのパターン」は、「分らないこと」を質問したり、調べたり、人に尋ねることは「恥をかくことだ」という動機に根ざしている。
人は、この「恥をかきたくない」いいかえると「社会的に孤立したくない」ことを隠すために「占い」や「宗教」、「有名人」などが「こう言っているから」ということを理由にしてさらに「分からないこと」を多重化する。
- 女性が、「オルガスムス」を感じたフリをするのも「多元的無知」に動機があると思われる。これは、もちろん「男性」にもあてはまる。
若い男性は、セックスをすることは恐れていない。しかし彼らは、ポルノ写真、そのような描写のグラビア、テレビや映画、小説で見たり、妄想したセックスシーンのとおりに女性を激しく、しかも簡単に感じさせることができなかったらどうしよう、と恐れている。一方、女性が「オルガスムス」に達したフリをするのは「幼く幼児的で未成熟な女」「男性にとって魅力的で価値がある」という男性がつくって宣伝している「多元的無知」にもとづくファンタジックなイメージにたいして「否定的な負の印象」を与えないために、世間に流通している「女性の理想像」に適合しようとしているものだ。女性たちは、「自分だけは完璧な性感能力をもつ」という見せかけを構築している。
しかも、女性のこの「多元的無知」にもとづく不安は、「現在ではかなり低年齢化している」(『シュピーゲル』誌による、世論調査機関EMNIDのアンケート結果による)。
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まず「脳の働き方」の「上向システム」と「下向システム」を正しく理解しましょう |
さて、次に「多元的無知」は、「性科学」による記述の全体にも及ぶ、ということをお話します。みなさまは、すでに、脳の働きは、自律神経のメカニズムをとおして「上向システム」と「下向システム」という二つのメカニズムをもつことをよくご存知です。「上向システム」は「上行システム」といわれることもありますが、神経伝達の回路は一様で単一ではないために、ここでは「上向システム」という表現で統一します。
「下向システム」についても同様です。
フロイド・E・ブルームによる『脳の探検、脳から精神と行動を見る』(下巻。講談社BLUE BACKS)に次のような記述があります。
「ある人が奮起しなければならない事態に直面すると、自律神経は1秒か2秒以内に反応する。
たとえば、ハイウェイですぐ前の車が急に停車するのを見た時のことを考えてみよう。0.5秒以内にあなたは自動的にブレーキを踏み、そしてバックミラーで後の車がどれくらい離れているかをチェックするだろう。このことは、感覚受容器から大脳皮質へと伝わる(上向システム)、そして再び末梢神経への階層的な神経路へ伝わる。この神経路はかなり直接的であるために(下向システム)共時的に起こる。メッセージは、網様体、視床を通り、皮質まで行く。同じメッセージは、また視床や視床下部をむすぶ神経路、扁桃核や海馬を中継して、視床下部と皮質の前頭葉領域をむすぶ神経路を通って伝わる。もし、すべての神経系で危険が知覚されたということが一致すると、視床下部が自律神経の中枢の覚醒メカニズムを発動させる。これらは、ごく1秒ほどの時間のうちに起こる」「性」にかかわる行動も自律神経による「上向システム」と「下向システム」の二つのメカニズムで起こります。ロルフ・デーゲンの論考には、このことが抜け落ちています。この考察の脱落によって、性の快感は女性器、男性器の身体的な部位で起こる、という結論へと導きます。しかし、どういう意味でも「性の快感」は「大脳辺縁系」のいくつかの中枢神経がつくり出す神経的な感覚です。A10神経か、A9神経が分泌する「快感ホルモンのドーパミン」が特定の中枢神経からも分泌された時に、「快感」が励起(れいき)されるのです。すなわち、性的な快感とは、ペニス、ヴァギナ、クリトリスなどの器官で発生するのではなくて、「大脳辺縁系」で発生するものです。ここから生じる「多元的無知」とは、ロルフ・デーゲンの批判する「フロイトのウソ。女性の性の快感はクリトリスではなくて、ヴァギナが成熟した女性の快感をつくる、は、オーストラリアの産婦人科医ヘレン・オコネルの解剖学的所見によって完全に否定される」という見解も「多元的無知にしかすぎない」と結論づけます。 |
女性の「性」は「副交感神経」がつくっています |
女性の性の中枢は視床下部の「視索前野」です。ここは、自律神経の副交感神経の中枢です。副交感神経であるということは、「脳幹」からスタートする「A6神経」の中枢でもあるということです。
また「目の視覚神経」の「X経路」のメカニズムもつかさどります。「X経路」とは、「焦点を合わせる」「ものごとの色彩や、こまかいいりくみの形状を認識する」というシステムを内包しています。
「左脳」(言語野。記号、数字を認識して長期記憶する野です)へとつながっています。
また、自律神経の副交感神経は、「下向システム」では、「男性器」「女性器」を「収縮」させるというメカニズムをつかさどっています。副交感神経は、男性器においては勃起と射精をシステムの内容にするのです。女性の場合は、妊娠時と性的な接触の局面で「子宮」や「ヴァギナ」を収縮させるというメカニズムを恒常性(ホメオスタシス)として、副交感神経がつかさどっています。男性はもちろん、女性も、性の接触は、フィードバックとして「脊髄」をとおり「脳幹」のA6神経に至り、ここから「上向システム」の神経回路をたどり、「視床」に到達して「右脳系」か「左脳系」の「大脳辺縁系」に送りこまれるのです。
いわれているような女性の「オルガスムス」は、どこで、何のために発生するのでしょうか。視床下部の「背内側核」からGnRH(アミノ酸10個のペプチド。性腺刺激ホルモンのゴナドトロピンの一つ。別名、性の権化といわれる)が分泌された時に、中隔核より「幸福のボタン押し」といわれる快感のドーパミンが分泌して、オルガスムスが励起(れいき)されます。男性の場合は、「男性の視床下部の中枢神経は背内側核」であるために、男性ホルモンの「テストステロン」がつねに「背内側核」に送りこまれているために、「性の権化」といわれるGnRHが常時分泌して、「性的な空想」や「性的な妄想」を喚起させつづけているのです。女性の場合は「視索前野」と「腹内側核」(食べ物を食べたい欲をつくる中枢)が数ミリの間隔で隣接しています。女性の「性の意識」は、男性のようにストレートに「GnRH」(性の権化のペプチド)の分泌に至るのではなくて、「腹内側核」と「満腹中枢」の二つを経て、次の段階でようやく背内側核に到達して「GnRH」を分泌するというシステムになっています。すると、どのような時に女性は「GnRH」の分泌にともなう「オルガスムス」に達するのかというと、女性ホルモンのTRH(甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン。アミノ酸3個のペプチド。やる気、行動力のホルモンといわれる)が分泌されない状況がつづく時です。TRHは、「視索前野」の特質を形成します。男性の中枢(背内側核)は「空間認知」をつかさどります。目的を見つけて、その場所まで一直線に行動する、という「動き」や「行動パターン」を認知させる動機をつくる中枢です。ここからは「言語能力」と「人間関係の能力」をつくる動機はありません。目に見えて「おもしろいもの」「動いているものを見て自分も動きたくなること」「食べたいので、食べ物にめがけて一直線に疾走する」「性的な対象を目にすると、たちまちファンタジックなイメージか性的な妄想を喚起して、ストレートに行動する」という「空間認知」の動機を励起(れいき)させます。
男性は、「食べること」にかんしては、この「空間認知」の動機にのみ従うので、「空腹の時は、食べることを待つことが、飢餓の不安を喚起させる」のです。したがって、空腹でない状態の時や、空腹であっても「空間認知の対象」が「動くこと」に向けられている時は「食べ物の話題」には喜びを感じることはありません。GnRHを分泌する「女性」は、自らの中枢神経の「視索前野」の人間関係の能力のための言葉や行動の仕方、そして「距離をとって人間関係の価値や意味を喚起するための言葉」(…「いつ」「どこで」「何が」「どのように」のY経路の認知のことです)が「長期記憶」として「左脳系の海馬」に記憶されていない場合の女性です。
「性を今すぐしたい」という「男性」の「行動パターン」を認識して、男性の「GnRH」を動機とする「性的な言葉」や「性的な行動」を「長期記憶」として記憶します。これが「記憶のソース・モニタリング」として「右脳」に表象(ひょうしょう)されます。男性の「GnRH」を動機とする「多元的無知」にもとづく「オルガスムス」を意味する行動パターンをあらわします。その典型が「マリリン・モンロー」であったのです。
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女性の「性」は「左脳系」と「右脳系」の二通りに分かれる |
すると、「女性」にとって「性的な長期記憶」とは「左脳系の海馬」と「右脳系の海馬」の二通りがあることがよくお分りでしょう。
「左脳系の海馬」による「性の長期記憶」とは、女性の「視床下部」の副交感神経のX経路による「認識」にしたがって、すでに認知している「男性の行動パターン」を「どのように」の言語の系で「認識」した場合です。「どのように」とは、頭頂葉の特質の「角度」「方向」「距離」の三つの観点から観察して「自分自身が、男性と同じように行動したとすると、この行動は、どういう未来の価値を生むか?」の内容を分かることをいいます。これは、まず「Y経路」による「行動パターンの認知」がおこなわれます。会話(コミュニケーション)をとおして「ものの考え方」の中の思想や哲学、倫理などが「行動パターン」をとおして記憶されるでしょう。ここでは、「記憶のソース・モニタリング」の法則にしたがって、「男性」に象徴される「社会的な知性」にかんする「秩序意識」が記憶されていることが必要であることはよくお分りでしょう。 |
「左脳系の性」をもつ女性は自分と男性の「未来」を豊かにする |
このような女性は、自分の「左脳」に男性とのコミュニケーションをとおした言葉を記憶します。意味のイメージが「右脳」の「ブローカー言語野の3分の2のゾーン」に思い浮ぶでしょう。性的な接合は、この「意味のイメージ」を「右脳のブローカー言語野の3分の1のゾーン」にクローズ・アップとして明るく、大きく思い浮べるためにおこなわれるのです。
このときの性の快感は、「前頭葉眼か面」と「側坐核」そして「扁桃核」からのドーパミンの分泌として励起(れいき)されます。心臓の心拍の低下が緩和し、無呼吸状態が解消して、さらに「左脳」の「ブローカー言語野の3分の2のゾーン」への言語の学習と記憶が推進されます。
ここまでのご説明でお分りのとおり、女性が性的な快感に達するというのは、フロイトのいうように、「ヴァギナによる快感の享受」がメインなのです。ヴァギナへのペニスの挿入は、「男性の行動パターン」がすでに認知されていて、次に、「X経路」による「男性の行動パターン」の認識をおこなうものであったのです。これは、「Y経路の認知」(「どのように」の言語系のことです)を、「未来に向かう左脳の活動を中心にした行動パターン」の認識として、特定の男性との人間関係が完成します。
いわば、メンタリティを中心にした「性の喜び」としての性の快感を享受するのが女性にとってのヴァギナである、とフロイトはのべています。
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小説や映画に出てくるようなオルガスムスを感じる女性は「負の行動のイメージ」をつくり出す |
女性が「オルガスムス」に達するということがあるというのは、「右脳系の海馬」で「性にかんする多元的無知」を長期記憶している場合です。これは、男性の語る性のファンタジックなイメージや妄想、あるいは俗説の「言葉」を記憶することで可能になります。
日本人の女性は、人間関係を、「自分は右手。相手は左手である」というメタファーで言いあらわされるように、「相手と自分の間には距離がないのが当り前である」という対人意識観を記憶しています。
しかし、どのような人間関係にも距離はあります。性的な関係になっても「心や精神」というものの世界の距離は埋まりません。人間関係を初めから「距離があるもの」と了解している人にとってのコミュニケーションは、「今」と「明日」という未来に向かってどのような関係の可能性があるか?が関心事になるでしょう。この場合は、「会話」をとおして「相手の行動パターン」の中の「どのように」に相当する「ものの考え方」(思想、哲学、倫理、……具体的には、相手の社会的な責任の能力や道義的な責任の能力のことです)が、よく観察されたり、評価されなければなりません。
「私は右手よ。あなたは左手ね」という日本人型の対人意識を記憶している女性は、この「Y経路による認知」の記憶が無いので、「性の関係」の場合では「話せない」「話を聞いても分からない」というオペラント条件づけが起こり、「右脳系の大脳辺縁系の線状体」から「不安の記憶」のイメージが表象(ひょうしょう)します。「私は、マジメな雰囲気の男の人ってダメなのよ」などということを語る女性は、「恋愛の前段階」で「負の行動のイメージ」が喚起して「タイプじゃないのよ、おあいにくさま」と交際をお断りするでしょう。 |
「結婚と性を同義」にする女性は、対人不安、対人恐怖の脳の働き方によって「男性」の脳に負の行動のイメージをつくらせる |
また、「母親が結婚しなさいってうるさいものだから」と「アジア型の母系制社会の遺制」を継承して結婚した女性は、「うちのダンナはね」、と男性を自分の保護者扱いします。「自分を左手の位置」に立たせて、「依存と甘え」の同化の対象にします。女性としてのTRHの「自我」を喪失しているので、自分を滅ぼさせ、同時に相手の男性も滅亡の道のりを歩かせようとします。
人は、長引く「不安」を感じるときに、この不安から逃避するのではなくて、「不安」をバッド・イメージにまで深めて、現実を壊したときに発生する「右脳のブローカー言語野に生じる破壊のイメージ」が分泌するドーパミンによって快感を享受します。日本人の女性と男性の引き起こすトラブルの実体とはこのようなものです。
すでにお分りのとおり、GnRHを分泌させて「オルガスムス」を実感できる十数パーセントの女性(ロルフ・デーゲン)は、「左脳」のソフトウェアのメカニズムを働かせることが出来ていない女性のことです。日本人の女性の「見る、見られる」という対人意識によって対人不安を抱えている女性が該当します。
このタイプの女性は、「A9神経」によって「中隔核」から「幸福のボタン押し」の性的な快感を享受します。しかし、妊娠し、子どもを産むと、否応なしに「左脳の対象」の子どもとの関係から「行動停止」を強いられるでしょう。ここで「負の行動のイメージ」が日常的に表象して「不安の日々」を送ります。同じことは、「初めての性の関係の男性のパターン」は、「左脳系の海馬」「左脳系の側坐核」「左脳系の扁桃核」で認識されるので、「二人目以降の性の対象との関係」の中でこれが「長期記憶」を表象し、「記憶のソース・モニタリングの混乱」のイメージを「右脳ブローカー言語野の3分の1のゾーン」に表象させます。これは、性の関係の局面で、空想や白日夢、もしくは妄想として思い浮べられます。一般的に、男性は、女性のこのような病理のイメージを学習させられ、記憶してつねに「負の行動のイメージ」を思い浮べるようになるのです。原則として、男性は、女性から「言葉」や「人間関係」について学び、学習するものであるからです。 |