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ポルソナーレ式イメージ切り替え法 NEWSLETTER 第203号
10期11回め平成20年7月12日
脳の働き方と言語の学習回路/浅見鉄男「井穴刺絡・免疫療法」

脳の働き方のメカニズム
日本人の鬱病の脳の働きの起源

「鬱の力」
(五木寛之、香山リカ)

はじめに

 ゼミ・イメージ切り替え法、中級クラス、スーパーバイザーカウンセラー認定コース、Aクラス、№13のゼミをお届けいたします。
 今回の本ゼミは、前回の「東京・秋葉原無差別大量殺人事件」は、「うつ病」の「うつ破り」によって引き起こされたことにつなげて、「日本人のうつ病」の起源についてお話します。
 ケーススタディは、五木寛之(いつきひろゆき)と香山リカの対談『鬱(うつ)の力』です。
 本ゼミでは、香山リカの語る「日本人のうつ病」の現状をとおして、なぜ、日本人は、かくも多くの人がうつ病に失墜していくのか?の実体をご説明します。日本人の対人意識が「うつ病の脳の働き方」を生成しつづけていることをご説明します。

ポルソナーレ代表田原克拓

本号の目次

  1. 日本人の心の病いは、「うつ病」がトレンドです
  2. 日本の社会の変化と人間関係の変化について
  3. メールの文と言葉に「社会性」が無いとどうなるか?
  4. 日本人は、「言葉」によって「うつ病」を生成している
  5. 「社会性」が不足すれば「うつ病」になる時代に変わった
  6. メールの言葉と文に「社会性がある」とはこういうものです
  7. 日本人の「非社会意識」とはこういうものです
  8. 「東京・アキバ事件」は、日本人の「うつ病」の象徴です
  9. 「香山リカ」の病理学
  10. 「そして、病理学の前から誰もいなくなった」
  11. 「五木寛之」の「うつ」についての「肯定性バイアス」と「認知バイアス」
  12. 「肯定性バイアス」のメカニズム
  13. 「五木寛之」の「脳の働き方」とはこういうものです
  14. 日本人の「愛着」がつくる脳の働き方と「うつ病」の起源
  15. ポルソナーレ式イメージ療法(プログラム) 「うつの気分」を消すイメージ療法
脳の働き方のメカニズム
日本人の鬱病の脳の働きの起源

「鬱(うつ)の力」
(五木寛之、香山リカ、幻冬舎新書・刊よりリライト、再構成)
日本人の心の病いは、「うつ病」がトレンドです

 前回の本ゼミでは、「東京・秋葉原、無差別大量殺人事件」(平成20年6月8日)をケースにとりあげました。「誰でもいいから人を殺す」という容疑者の発言に注目しました。「誰でもいいから人を殺す」という言葉は、どのような動機をもつのか?を明らかにするためです。脳の働き方のメカニズムをたどってつきとめると、「誰でもいいから人を殺す」という言葉は「うつ病」の脳の働き方が生成する言葉でした。

日本の社会の変化と人間関係の変化について

 今の日本は、この事件の容疑者がそうであるように、インターネットによって人間関係をつくる時代と社会になっています。

 このことは、ケータイやパソコンが普及する前までは、心の病いの人も、直接、人と会って話したり、自分の姿を相手に見せて関係をとりきめざるをえませんでした。この現実の体験を対象にして、心の病いの改善の仕方や自己改革の社会教育をおこなうことを否応なしに強いられていました。

 自分のどういう話し方や態度が不都合だったのか?が内省的にとらえらえていました。このときにとりあげられる「言葉」は『対象言語』として教育の対象になりえました。

 しかし「ネットの時代と社会」になると、メールの文章は、直に相手に会って顔を見て話さなくてもよいという関係意識を成り立たせます。会わなくてもいい、という「コトバ」だけで人間関係をつくると、ここで交わされる「メール」なりの「コトバ」は『対象言語』としての「意味」(価値)が縮小します。「社会的な有用性」をもつ範囲を厳密に限定する表現能力が要求されます。

 「じかに人と会って話す」という「社会的な有用性」をメールの文章に表現できなければ誰とも接点をつくれない、という新しい時代と社会になっています。高度化しているのです。すると、「心の病い」の人はいかにメールを駆使しようともこの「社会的な有用性」を「表現できない」という一点において「ネットの世界」や「メール」などの通信による交流からもかろうじて持っていた「社会性」を脱水させて「脱水症状」におちいります。もともとの心の病いの濃度がもっと濃くなっていくということです。

メールの文と言葉に「社会性」が無いとどうなるか?
 「誰でもいいから人を殺す」という言葉は「いつ」「どこで」「何を」「どのように」という『対象言語』の成立要件はありません。

 目的、必要性、理由などの『意味』が見当らないということです。しかし、「誰でもいいから人を殺す」という「行動」を成り立たせる『意味』は表象(ひょうしょう)されています。『対象言語』の成立要件が無いコトバのことを「表現」とはいいません。コミュニケーションが成り立たないからです。「誰でもいいから人を殺す」と考えた人間の「右脳」に漠(ばく)としたイメージが思い浮べられているだけです。このようなイメージの思い浮べ方のことを表象(ひょうしょう)といいます。すると、「誰でもいいから人を殺す」と考えてそのとおりに実行した人間が思い浮べる表象(ひょうしょう)世界とは一体、どういうものか?が関心の対象になるでしょう。

 まず分かるのは、「社会性」が無いコトバが思い浮べられます。日本人は、もともと誰もが、どんな言葉でも「マル暗記」して、その言葉の『意味』を知らないことが共通しています。明治以来の日本人の「言葉の学習の仕方」の特性です。言葉の『意味』を「知らない」ということに気がついていない人が多いのです。なぜかというと、「言葉」の『意味』を広辞苑で調べても、そこに記述されている「意味の文」を憶えることができないからです。

 調べて学習しても、記憶できなければ、自分が『意味』を知らないことそのものを自覚できません。「知らないこと」を指摘されると、その瞬間はわずかに緊張しても、「認知バイアス」の脳の働き方が作用して改善や再教育に向かうこともできません。

日本人は、「言葉」によって「うつ病」を生成している

 これは、日本人に特有の「うつ」(やがて鬱(うつ)病になる)というものです。「言葉」の『意味』を知らない、憶えられない、ということは必ずしも健全とはいえません。「社会と適合している」とはいえないのです。「社会との不適応や不適合」のことを心の病気といいます。どのように適応できていないか?(適応不全)の内容を別にすれば、これは「うつ病」のことです。言葉の『意味』が分からないのに「行動する」(手足を動かす、話す、聞く、読む、書く、が「行動」です)ことが「うつ病」です。

「社会性」が不足すれば「うつ病」になる時代に変わった

 「社会性が不足している」というと、「いや、自分は社会性はある」と考える人もいます。理由は、「働いているからだ」「学校に行っているからだ」というものです。働くにしろ、学校に行くにせよ、「行動」は成り立っていることが理由になっています。「脳の働き方」から検証するとどうなるでしょうか。「行動」には「言葉」が必要です。

 「言葉」は、(1):記号としての言葉、(2):概念、(3):意味の要素で成り立っています。

 (3)の『意味』は、独自に、別個の労力をついやして学習されて記憶されるというものです。この(3)の『意味』を習得したときの言葉のことを『概念(がいねん)』といいます。言葉の『意味』を独自に、別個の労力をついやして学習したことがない、しかし、その「言葉」を暗記して「行動」する場合、このときの「言葉」のことを『記号としての言葉』といいます。『記号としての言葉』で「行動する」ことは可能です。「命令されて行動する」「号令をかけられて行動する」「認知バイアスでつくった認識バイアスの言葉(解釈でつくり上げた意味)で行動する」のいずれかが可能にします。このどれかの「負の意味」で「行動すること」も「うつ病」です。形式としての「形」(かたち)は成立しています。だから「広義のうつ病」です。なぜ「うつ病」なのでしょうか?「脳の働き方」の『記憶のソース・モニタリング』から見ると「半行動停止」の「行動」だからです。ここでは、「仕事をしている」「学校で授業を受けている」などの「行動」の中で「不安」や「恐怖」のイメージが「右脳のブローカー言語野」(3分の1のゾーン)に表象(ひょうしょう)されつづけています。「人の目が気になる」「人から嫌われている」などのイメージが思い浮んでいます。「言葉」の『意味』を正しい学習の仕方で、正しい記憶として完成させていない場合は、「半行動停止」の『行動』しか成立しません。「半行動停止」は「負の行動のイメージ」を思い浮べさせます。「負の行動のイメージ」とは「自分は楽しくない」か「自分だけが損をしている」という内容のことです。

 したがって、「仕事をしている」「学校に行っている」という『行動』だけに「社会性」があるとはいえません。「社会性がある」とは「言葉」の『意味』を正しく学習しているか、もしくは、正しく学習する仕方を分かっていることをいいます。

 このことは、「メール」によるメッセージ通信にもあてはまります。「メール」の言葉を「書き言葉」としてとらえるか「話し言葉」としてとらえるかは、「言葉」の『意味』を正しく学習することについて「社会的な意識」の自覚があるかどうか?で違ってきます。「行動」に「社会性」が欠如している人は「メールの言葉」を「話し言葉」としてしかあらわせないでしょう。表現ではなくて、表象(ひょうしょう)させたコトバが「メールの文」になるのです。

メールの言葉と文に「社会性がある」とはこういうものです

 「メールの言葉」に「社会性がある」とは、どういうことをいうのでしょうか。「相手とじかに会って相手の顔を見て話す」という「行動」のメタファーが表現されていることをいいます。「相手と会って、直接、話す」という関係意識が無いことを「非社会意識」といいます。なぜでしょうか。「行動」とは、何か?をここでも考える必要があります。脳の働き方のメカニズムから見た「行動」は、「自分に得することがもたらされる」か、「自分に楽しいことがやってくる」かのどちらかが正常な「快感報酬」のシステムでした。「左脳」で言葉を『概念』(がいねん)として記憶する、そして、「右脳」で『概念』(がいねん)の『意味』(メタファー)のイメージを「二・五次元」か「三次元」の内容として想起(そうき)する、ということが「正常な脳の快感報酬のメカニズム」です。

 「じかに会って相手と話す」ということをコミュニケーションといいます。コミュニケーションの言葉は、「目的を話す」「結論を話す」「理由を話す」「相手か、自分にとっての効果(利益)を話す」ことでなければなりません。この4つの要件が言葉で言いあらわされるとき、相互に「信用」や「信頼」という価値が記憶されます。

 「メールの言葉」に「社会性」を表現できる人は、「直接、相手と会って、顔を見て話す」ことが、何度もくりかえされることに耐えられるように表現する人のことです。

日本人の「非社会意識」とはこういうものです
 「非社会性の意識」とは何のことでしょうか。

 「家の中だけで成り立つ意識」のことです。「家の中」とは「非社会性の世界」のことです。

 「性」を中心にした「血縁関係の意識」によってつくられる世界のことです。「血縁関係の意識」とは、「相手は右手、自分は左手」「相手は左手、自分は右手」という意識のことです。

 「生理的身体が地続きにつながっている」という意識のメタファーです。「自分の欲求や欲望は、黙っていてもすぐに伝わるべきだ」「相手は、自分の思っているとおりに、すぐに行動すべきだ」という『意味』が表象(ひょうしょう)して相互に交流されます。「社会性が欠如している」とは、「家の中」で「家の外の人間と直(じか)に会って話し、正当なコミュニケーションをおこなう」ための「言葉の表現の仕方の学習」がおこなわれないことをいいます。

 インターネットの普及で、非社会意識はバーチャル化に拡大しました。「インターネット」の「マトリックス」を「社会化」している人だけが「バーチャル化によるうつ病」への傾斜を踏みとどまっています。

「東京・アキバ事件」は、日本人の「うつ病」の象徴です

 「東京・秋葉原無差別大量殺人」は、日本人の「心の病い」が「うつ病」を共通の病気にしていることを象徴しています。「言葉」を「記号として憶えていた人」は「社会性」を欠落させていました。それは、おそらく「メールの言葉」の、「直接、会って会話をする」というときの「社会性」の欠落が「うつ病」を表象(ひょうしょう)させています。「心の世界」とは、ちょうど「クモの巣」にたとえることができます。木の枝や家のひさしの下に巣を張っている「クモの巣」です。この「クモの巣」の一部に指をひっかけて引っ張ると、「クモの巣」の全体がズルズルと壊れます。人間の心の世界も、「メールの言葉」に「直接、相手と会って話す」ことを想定した「社会性」のある表現がなければ、「クモの巣」のようにズルズルと壊れます。「相手と直接会って話をする」ときの「社会性」の基盤は「あいさつ」です。「自分勝手に、一方的に、親しみをこめてあいさつをする」ことが「社会性」です。「メールの言葉」は、「あいさつ」の「社会性」も欠落させて「うつ病」を噴出させています。

 このような日本人の「うつ病」の状況について、「香山リカ」は、「五木寛之」との対談(『鬱(うつ)の力』幻冬舎新書)で次のように話しています。

「香山リカ」の病理学

 「私が学生の頃は、うつ病になった人は人口比で1パーセントから2パーセントだった。今は、生涯有病率といって一生のうちに一回うつ病になる率が15パーセントといわれている。

 しかも、女性は5人に1人がうつ病になる。男性は、10人に1人だ。10代から20代の若い人や子どもの間で、うつ病がものすごく増えている。」

 「精神科医として治療する中で、うつ病と鬱(うつ)っぽい感じの境界をハッキリさせなければならないと思っている。あなたの場合、うつ病ではない。こういう悲しいことがあれば誰だってしばらくは憂うつになる。時間がたてば回復する、と話すことがある。

 多くの人は、ここで、じゃあ、私のこの憂うつな気分は何ですか?と逆に不安になっている」

 「大塚明彦が『その痛みはうつ病かもしれません』という本を書いた。体のあっちこっちが痛い人が、内科などで検査をしてもらった結果、正常だと言われる。ここで、痛いんです、いや正常です、というくりかえしになる。

 疲れ果てて、実は、あなたはうつ病でした、と言うと、本人も心からナットクするという。
 うつ病ではないと言われると、自分の考え方とか生き方の問題に直面する。自分でとりくまなければならない。

 しかし、あなたはうつ病です、と言われると、病人になる。病人は何もしなくてもいい。お任せします、と言えばすむ。受け身の立場で手当てされたい。ケアもされたい。流行の言葉でいえば、癒(いや)されたい、ということであるようだ」

 「一九八○年代から、アメリカ的な精神医学が急速に日本に入ってきた。一九八○年にアメリカ精神医学会が発表した『DSM‐Ⅲ』というアメリカ式の診断基準をつかうようになった。今は『DSM‐Ⅳ』(第4版)が世界中でスタンダードに使われている。

 この『DSM‐Ⅳ』は、鬱(うつ)の背景を、一切、問わないことになっている。失業して鬱(うつ)になっても、脳に問題があって鬱(うつ)になっても、貧困などの社会的要因で鬱(うつ)になっても、その症状が2週間以上つづけば鬱(うつ)病ということにする、というシンプルな診断の仕方になった。

 私たちが学生のころは、うつ病は、心因性、内因性、外因性としっかり区別しろ、と言われた。

 内因性のうつ病は、きっかけが何もなくてもうつになる。体の中に目覚し時計があって、時間になるとジリジリと鳴るように鬱(うつ)になるというものだ。外因性とは、アルコールだとか、頭を打ったとか、などの原因で起こる鬱(うつ)のことだ。心因性というのは、失恋したなどの悲しさが心因性の鬱(うつ)の反応を起こしているにすぎない、というものだ」

 「今、精神科医は、自分で自分の首を絞めている状態だ。これまでの病因法から、DSM‐Ⅲの診断に急に変えたから、朝青龍(あさしょうりゅう)や安倍前首相も、鬱病になる」

 「二○○六年、日本では自殺者が3万2千人を超えた。9年連続で3万人を超えている。これまでの8年をふりかえると、自殺の原因は、やはり経済的な理由だといわれていた。

 ところが、二○○六年は、一応、不況は脱したことになっている。格差はあるにせよ、景気はいい状態だった。

 にもかかわらず日本人の自殺者は減っていない。」

「そして、病理学の前から誰もいなくなった」

■ここで香山リカが五木寛之に語っていることは、「うつ」や「うつ病」の病気としてのメカニズムを明らかにする学的な努力は、放棄されているということです。日本だけではなく、グローバリゼーションとして世界中が同じような傾向になったと説明されています。その理由は、どこにあるのでしょうか。うつ病の病理の典型は「自殺すること」です。香山がのべているように「経済的な問題が自殺の原因だ」と考えられていたものが、景気が良くなって「高い自殺率が10年もつづいている」という状況にみられるように、必ずしも因果が一致しないことが分かったからです。失業した人に職を与えれば自殺しないか?というと必ずしも期待したとおりの結果にはならない。失恋した人が、結婚すればうつ病にならないのか?というと、必ずしもそのとおりの結果にはならない、という事態がつづいたからです。

 これは、「うつ病」ないし「うつ的な不調感を訴える人」の話す言葉や行動パターンを対象にして「原因」を見つけ出そうとしてもどこまでも「原因」や「根拠」が明らかにならない、ということを意味しています。『対象言語』としての「語られた言葉」や「説明された言葉」を病理学の対象にしても、「うつ病」の実体が見えない、ということです。アメリカの精神医学は、ここで「うつ病とは何か?」「なぜうつ病になるのか?」ということの学的な追究を放棄した、ということです。それが「DSM‐Ⅲ」や「DSM‐Ⅳ」の「診断基準」の世界的な普及です。

 おそらく、このことの背景には、薬物療法を前面に押し出していく、という行政的な意図があると思われます。「薬」によって「うつ病は治るはずだ」という「うつ的な目先の利益観」です。

「五木寛之」の「うつ」についての「肯定性バイアス」と「認知バイアス」

 なぜ、このような状況になったのでしょうか。
 五木寛之の次のような発言があります。

 「鬱(うつ)という言葉は、広辞苑には、草木の茂るさま(様子)、ものごとの盛んなさま(様子)とある。エネルギーと生命力にあふれているにもかかわらず、時代の閉塞(へいそく)の中で、エネルギーと生命力が発揮できないことだ」

 「鬱蒼(うっそう)たる樹林、鬱然(うつぜん)たる大家、鬱没(うつぼつ)たる野心によって明治の大業はなった、などと言う。これは、全部、肯定的な表現だ。鬱(うつ)というのは、肯定的な言葉だ。だから、僕は、無気力な人は、鬱(うつ)にはならないと言っているんだ」

「肯定性バイアス」のメカニズム

■ここで五木寛之がのべていることは、「鬱(うつ)」という概念を「肯定性バイアス」ととらえた解釈による『意味』のことです。

 「肯定性バイアス」とは、一方の事実だけをとりあげて証拠にするというものの考え方のことです。

 「占い」や「予知夢」などで用いられる思考のパターンです。

 テレビで、野村克也(監督)が「ぼくは、縁起(えんぎ)をかつぐ」と言っていました。あるデザインの下着を身につけたら野球の試合に勝った、次の日もその下着をつけて行ったらやっぱり勝った、だから10日間くらい同じ下着をつけっぱなしにしたら、臭いがひどくなって困った、という話でした。野村は、試合に負けたら、「肯定バイアス」の下着を中止します。そして以前、試合に勝った時に身につけていた物を思い出して、それを身につける。勝ちつづけるとその物をずっと身につける。負けると、また、以前、試合に勝ったときに身につけていたものを探す、ということでした。ここでは、意図的に、「否定的な事実」を見ない、という「肯定性バイアス」が語られています。

 五木寛之が「鬱」(うつ)についてのべていることは、野村克也監督が話している「縁起かつぎ」と同じ内容です。

 野村克也は、試合をする選手の力量や能力という現実の実体を、あえて見ないという「意図的」な「認知バイアス」をおこなっていることがよくお分りでしょう。

「五木寛之」の「脳の働き方」とはこういうものです

 しかし、五木寛之は、どうでしょうか。

 「ぼくの場合、締切りが近づくと、とくに十二指腸が必ず痛む。いわば、締切り製疾患ですが、いちばん敏感にそこに出るんです。作家の多くは十二指腸潰瘍ですよ。でも、そうやって緊張して、心理的にプレッシャーを感じるのは当りまえでしょう」

 「ぼくは、30代の後半と、40代の後半に一度ずつ、鬱病(うつ病)になった。本当にもう本気で自殺しようと思うぐらい落ちこんだ。今は、現行の〆切りが近づいても、編集者は命まで取りにこないと分かったからわりと平気だ。親鸞(しんらん)や蓮如(れんにょ)に関心が向いたのはこれがきっかけだ。西田幾多郎(にしだきたろう)は、娘を亡くして、すごく落ちこんで人生の悲哀ということをとことん考えた。哲学者が人生の悲哀なんて、よく恥ずかしげもなく言うと思うけど、ここから仏教的な回心が芽生えている。哲学的思考もまた、そこからスタートするかもしれないという。おいおい、それで哲学者かいと思うけれども鬱の時代の視野からすると、そういう西田幾多郎(にしだきたろう)が見えてくる」

 香山リカ「私たち精神科医は、よく了解可能とか了解不可能という言い方をする。こういう辛いことがあったからこの人は鬱(うつ)になった、が了解可能だ。了解不可能というのは、こんなことぐらいで、あんなに鬱(うつ)になるわけがない、何も困ったことがないのに、ストレスもないのに鬱(うつ)になったという場合のことだ。 こういうときは、かなり脳の働きの問題が多いと見ている」

 五木寛之が「うつ」を肯定的にとらえているのは、「うつ」というものの『意味』を「不可避的なものだ」と了解しているからです。それは、香山リカがのべているように、「脳の働き方」がつくり出す「行動」を変えることができないからです。

 「鬱(うつ)」を「エネルギーや生命の発揮の状態」と「認知バイアス」でとらえる「脳の働き方」のことです。

 「うっそうたる樹林」というのは、「青木が原」のような、人が入りこんで快適にすごすことができない原生林のことをいいます。また「うつぜんたる大家」というのは、五木寛之のように、「落ちこんで自殺するくらいのことを考えた」という作家のことを形容する表現です。また、「うつぼつたる野心で明治の大業は成った」というのは、徳川幕府と、その反対勢力との政治闘争によって成り立つときの表現です。利害関係が介在しています。敗北すれば全てを失う、ということを「敗退した徳川幕府の勢力」がよくあらわしています。徳川幕府を追いつめた政治勢力のグループは、「うつぼつたる野心」に燃えたのでした。「鬱(うつ)」に共通するメタファーとしての『意味』は「生きていく現実生活に孤立する」ということです。

 現代社会では、「社会性の世界から孤立すれば生きられない」というのが「鬱(うつ)」という「行動」の『意味』になるのです。

 このような「鬱(うつ)」は、香山リカがのべているように、「失業したから」「失恋したから」という直接的な現実との関わりや理解の仕方からは生まれません。どのような現実の中でも「不適合に陥らざるをえない」という「行動停止」の脳の働き方がつくり出します。

 恋人とうまくいかない人は、その恋人が目の前にいても、その恋人のイメージを右脳に思い浮べることができません。結婚して「うつ病」になる人は、結婚した相手の前に自分が居ても、「自分は、この人の前に立ってはいない」というイメージが「右脳」に表象(ひょうしょう)されるのです。このような脳の働き方を『記憶のソース・モニタリング』といいます。現に今、見ているのだけれども、その見ている対象が「右脳」のブローカー言語野(3分の1のゾーン)に表象(ひょうしょう)されることがない、という『記憶のソース・モニタリング』です。

 これは、「母子関係」の「愛着」(あいちゃく)がつくり出す脳の働き方です。

日本人の「愛着」がつくる脳の働き方と「うつ病」の起源 

 「愛着」は、イギリスの精神科医ボールビーが発見しました。アメリカの発達心理学者の「エインズワース」がより徹底した実験によって観察しています。

 エインズワースによれば、「不安定な愛着」を身につける乳児のパターンがあります。

 次の三つのパターンです。
Aパターン…母親を回避する乳児
Bパターン…安定した愛着の乳児
Cパターン…母親にたいして怒ったり、さからったり、拒否する乳児
Dパターン…母親がいても緊張し、恐怖心をもつ。混乱して、敵意を向ける乳児

 日本人の母子関係は、「見る」「見られる」という対人意識で成り立っています。すると、「言葉」ということについて正しく学ぶ、ということが脳の働きの中に記憶されていません。つねに、「言葉」を「マル暗記するしかない」という脳の働き方を身につけているのが明治以降の日本人です。試験のためにはいっしょうけんめいに暗記する、しかし、試験が終わったら、どんな言葉も憶えたくない、という脳の働き方です。みなさまも、「お母さんが喜ぶから試験勉強をがんばった」という体験をおもちの方がいらっしゃるかもしれません。

 「この試験に合格すれば、この場面とこの場面で、優越感を感じるかもしれないぞ」ということを耳にしたことがあるかもしれません。このパターンの人は「Aパターンの愛着」を脳の働き方のメカニズムにしている人です。

 しかし、「自分のこの暗記によっての合格を、誰も喜んでくれない」と思う人もいるでしょう。その人は「Cパターン」の人です。「せっかくこんなにがんばったのに、ぜんぜん喜んでくれないじゃないか」と怒ります。この「Cパターン」の「不安定な愛着」を脳の働き方に記憶している人は、「仕事」や「現実の社会」の中で「言葉を暗記すること」もどこかで諦めます。

 「記号としての言葉」も憶える気持ちがないので、変化する経済社会の状況から「自分は見離されている」という「行動停止」におちいるのです。結婚した女性が、「夫」に、「ポルソナーレのゼミを勉強してもいいかな?」と問いかけるという状況を想定します。「宗教だろ?」「お金が高いよね」「何を書いているか、分からないよね。何にも役に立たないんじゃないの?」と言われることもあるでしょう。ここで、「あ、ポルソナーレのゼミって、勉強しちゃいけないんだ」と思う人は「Cパターン」の「不安定な愛着」を脳の働き方のメカニズムにしている人です。「夫氏」の「表情」と「母親の喜びの表情」とが一致するので、「言葉」を「記号として憶える」、そして「勉強しなさい」という「号令」や「命令」の『意味』をひたすら求めつづける、という「行動」もあらわせないのです。

 すると「現実の社会」の「言葉」(概念)から果てしなく孤立して「うつ」になりつづけるでしょう。

 「Dパターン」の場合が「五木寛之のタイプ」です。現実を不問にして自分だけの快感のイメージを追い求めて、自殺するか、もしくは「東京・秋葉原大量無差別殺人」のように「バッド・イメージ」の「快感報酬」の脳の働き方だけを働かせつづけるのです。


学習に役立つ書籍


ゼミ・イメージ切り替え法 NEWSLETTER 第203号 一部掲載

連載
高村智恵子と倉橋由美子の恋愛と結婚
脳の働き方のメカニズム・死に至らしめる病「うつ病」
「東京・秋葉原、無差別大量殺人」の病気の脳の働き方
日本人の鬱病の脳の働きの起源 「鬱の力」
脳の働き方・病気の言葉の『意味』と行動 『鬱の力』
子どもの崩壊の起源「母の叱り方・父の叱り方」

参考:うつ病を治すカウンセリング

「第20期」(平成30年・2018年)ゼミ、開講中!
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ゼミ・イメージ切り替え法

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カウンセラー養成ゼミ

脳と心の解説

教育方針は「教える・育てる・導くカウンセリング」です 。
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女性の「脳を健康を働かせる」!安心と安らぎを分かち合う、が教育のテーマと目標です。「気持ちが安心する。だから、知的に考えられる」という女性の本質を支えつづけるカウンセリング術です。

女性の脳の働きが伸ばす「人格=パーソナリティ」を目ざましく発達させる!が教育の方針です。 女性が社会性の世界(学校・仕事・社会の規範・人間関係のルール・合理的な思考)と、知的に関われる!を一緒に考えつづけるカウンセリング術です。

ストレスを楽々のりこえる女性の「脳」を育てる!!が教育の人気の秘密です。女性は、脳の働きと五官覚の働き(察知して安心。共生して気持ちよくなる)とぴったりむすびついて、一生、発達しつづけます。


脳と行動の診断

人の性格(ものの考え方)が手に取るように分かる「心の観察学」

心の病いに感染させられない「人間の関係学」がステキに身につきます。

心の病いを救出する、心と心をつなぐ「夢の架け橋術」

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よくある質問

学校に行くとイジメがこわいんです。私にも原因ありますか?

怒りっぽいんです。反省しても、くりかえしています。治りますか?
脳と心の解説

「仕事・人生・組織に活かすカウンセリング」です。他者の心身のトラブルを解消できれば、自然に自分の心身のトラブルも解消します。

プロ「教育者」向けのカウンセリング・ゼミです。
人間は、誰でも「気持ちが安心」しないと正しく「ものごと」を考えられません。

「脳を最大限に発達させる」が教育の狙いと目的です。「指示性のカウンセリング」とは、 「一緒に考える」「共感し合って共に問題を解決する」カウンセリング術です。ものごとには「原因」(脳の働き方)があるから「結果」(心身のトラブル)があります。

「脳の健康を向上させる」、が教育のテーマと目標です。「指示性のカウンセリング」は、「考えたことを実行し、考えないことは実行しない」 という人間の本質を、最後まで励まし、勇気づけるカウンセリング術です。

脳の働きがつくる「人格=パーソナリティ」を育てる!が教育の方針です。
「指示性のカウンセリング」は社会性の世界(学校・仕事・社会の規範・人間関係のルール・合理的な思考)と正しく関わる!を一緒に考えつづけるカウンセリング術です。

ストレスに強い、元気に働く「脳」に成長させる!!が教育の魅力です。
「指示性のカウンセリング」は五官覚(耳、目、手、足、鼻)を正しく発達させて、言語の能力も最高に発達させるカウンセリング術です。


脳と行動の診断

「心の病いの診断学」が楽しく身につきます。

心の病いの予防と解消の仕方の「人間の理解学」が身につきます。

心の病いに気づける「人間への愛情学」が驚くほど身につきます。

「交渉術」の知性と対話の能力が目ざましく進化しつづけます。

相手の心の病理が分かって、正しく改善できるので心から喜ばれます。「心の診断術」

病気になるということ、病気が治るということが正しく分かる、最高峰の知性が身につきます。


よくある質問

朝、起きると無気力。仕事にヤル気が出ません。うつ病でしょうか?

仕事に行こうとおもうと、緊張して、どうしても行けません。治りますか?
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