■「脳の働き方」という「ソフトウェアのメカニズム」をとおしてこれらの「乳児と母親の愛着」(行動のリズムに、互いがどのように適応するか?の関係のあり方)を見ると、どうなるのでしょうか?
「子どもの行動」も「母親の行動」も「言葉」の『意味』を「学習」して憶えていることになるのです。
「言葉」には、『意味』があることは誰でもよく知っています。「辞書」を開いて調べてみると、まず、「言葉」が先にあって、次に『意味』が書かれています。「言葉」を『意味』といっしょに学習して憶える(記憶する)ときに、このときの「言葉」を『概念』(がいねん)といいます。
『意味』を憶えていないのに、「言葉」をしゃべったり、聞いたり、書いたりするときの『言葉』を「記号としての言葉」といいます。
母親と乳児の「愛着」についての測定の実験と観察のことを『ストレンジ・シチュエーション』といいます。アメリカの発達心理学者の「エインズワース」という女性が考案しました。
この「ストレンジ・シチュエーション」の実験と観察で分かることは、何でしょうか。観察は、成人して「大人」になってからもつづけられています。恋人、親友、友だちづくり、結婚したパートナーどうし、などです。「大人」になっても「愛着の不安定さのタイプ」はそのまま持ちこまれてつづいています。
「相手の人」が不機嫌になると、「自分もまた不機嫌になる」というようにです。「相手の人」の気持ちの不安定さの改善につとめて、「安定した関係」のために働きかけることはない、と観察しています。
しかし、問題の本質は、「人間関係がうまくいかない脳の働き方を身につけている」ということではありません。
「乳児」にとって「母親」の「行動」は「共同指示」といって「言葉」の『意味』のメタファーになるのです。「母親」の「共同指示」とは、「指で対象をさし示すこと」と「喜びの表情」のことです。
人間の「行動」には必ず「言葉」が必要です。この「行動」に必要な「言葉」とは、『意味』のことです。人間は、「言葉」の『意味』によって「行動する」ことはよくお分りでしょう。
《例》
●山に登る(概念)
◎ビルでもなく、家の二階でもなく、地形の高い頂点を目ざして歩いていくこと(意味)
この例でもよくお分りのとおり、「人間の行動」は『意味』によって成り立ちます。「乳児」にとて「母親の行動」は「言葉」の『意味』を学習して記憶するための対象です。この「意味」の学習と記憶が「母親の喜びの表情」とセットになって「右脳の前頭葉」にドーパミンを分泌させます。
「うつ状態の母親」は、「乳児」に何をしていることになるのか?といいますと、「辞書をひいて、意味を調べても、そこに書かれている意味を憶えることができない」という脳の働き方を生成していることになるのです。
人間の脳の働き方は、『記憶のソース・モニタリング』によって「行動」をおこしたり、ものごとを学習したり、短期や長期の「記憶」をおこないます。このことは、すでによくご存知のとおりです。
『記憶のソース・モニタリング』とは、「辞書」を開いて目で見たとすると、目で見ている『意味』(の文章)が「長期記憶」として記憶されていれば、「同じだね」、「少し違うね」「こういう内容だったのか」などというように、「行動」のためにあらためて記憶されるでしょう。しかし、『意味』(の文章ないし、文)が「左脳のブローカー言語野の3分の2のゾーン」と「左脳系の海馬」に全く記憶されていなければ、「なんだ、これは?!」「こういうごちゃごちゃしたことを言ったって、一体、どう動けばいいのか?」と感じるばかりでしょう。何の「喜び」も感じないのです。「愛着のBタイプの子ども」が成長して「大人」になれば「このようなしくみになっているのか!!分かって嬉しい!」「このように取り組めばいいのねっ!!おもしろい!」と感じて、「右脳・ブローカー言語野の3分の2のゾーン」から「右脳・前頭葉」にかけて、快感ホルモンのドーパミンを分泌させます。 |