今の日本人にとって最大の問題の象徴は「引きこもり」「ニート」「不登校」の子どもと、その親です |
平成20年12月23日付の日経に「自動車クライシス(危機)」という見出しで、「トヨタ自動車」の渡辺社長の発言が報道されていました。
「世界の経済の悪化が、予想を上回るスピード、広さ、深さで進行している」「渡辺社長は『かつてない緊急事態だ』と訴えた」というものです。これは、トヨタ自動車が「赤字転落したこと」を受けとめてのトップニュースの報道です。
このトヨタ自動車の社長の発言は、一体何を意味するのでしょうか。おおくの日本人にとっては、ただ、今の「世界同時不況」の規模の大きさや深刻さの象徴として受けとめられているでしょう。
しかし、ポルソナーレのとらえ方は少し違います。平成20年11月に、日経新聞に次のようなことが書かれています。 |
「脳トレ」を支持する日本の製造業 |
- トヨタ自動車は、任天堂の人気ソフト「脳を鍛える大人のDSトレーニング」で知られる「川島隆太教授」ら、「東北大学のグループ」と、共同研究に乗り出す。
- ドライバーの「判断力の低下」を感知して警告したり、自動制御で安全対策をとる「次世代自動車」の開発を目ざす、というものだ。
- カーナビや空調の刺激で、「脳機能を活性化」して、「判断力」を高める仕組みも想定している。「2015年」か「2020年」の実用化を図る。
「脳の働き」と「心身の状態」を把握して、事故を未然に防ぐ自動車の開発を目ざす。
- 川島隆太教授は、「モビリティ&スマートエイジング研究会」の座長に就任した。
ほかに、日産自動車や日立製作所も参加を打診している。
平成20年「10月」に起こった「アメリカ発の金融システムのバブルの崩壊」とその後の「金融システムのグローバル規模の収縮」のもともとの原因は、1980年代の「アメリカの第二次産業の空洞化」に端を発しています。1930年代に起こって約10年間つづいた「世界恐慌」は、「アメリカの第一次産業の農業」が不振で「生産性」が上がらなかったことが遠因です。
アメリカは、この二つの経済成長の停滞をふまえて、「金融」を中心とする「第三次産業」の市場を創出しました。
日本も、「第二次産業」が空洞化していることは、みなさまもよくご存知のとおりです。この事情は、ヨーロッパ(EU)も同じです。欧州(EU)も、「ユーロ」という「域内単一通貨」をつくって、「第三次産業」にシフトしました。
この「ユーロ」がイタリア、アイルランド、スペインなどの国々にとって「金融資本」となり、「住宅バブル」をつくり出しています。
問題になるのはこういうことです。日本や中国だけは「ドル」を資産化して、「第二次産業」に特化してきています。「第二次産業」と「第三次産業」の二つを日本と中国は、自国の産業構成を「空洞化」させつづけてきたことにあります。そのために「行き場」をなくした「ドル」は、「レバレッジ」をきかせて、巨大なバブルを生み出しました。「行き場をなくした」とは、日本や中国が自国の通貨で、自国のために「投資をしてこなかった」ということです。
「トヨタ自動車」の社長の「訴え」は、「川島隆太」(東北大学のグループも)の「生理的身体と脳の働き方を同一視する」という「人間理解の不在」の象徴です。
「人間についての理解」が無ければ、「スウェーデン型の企業」のように「相手に合わせて、相手の必要のための商品やサーヴィスを研究し、開発する」ということはできません。 |
日本人の問題は「第二次」と「第三次」の産業の空洞化 |
「トヨタ自動車」が象徴する日本にとっての「世界同時不況」は、「第二次産業の空洞化」と「第三次産業の空洞化」の二つの問題の所在を意味するでしょう。
そしてもう一つの問題は、東北大学と、東北大学の教授の「川島隆太」がおしすすめている「脳トレ」を評価していることにあります。
川島隆太がつくって何百冊も売った「脳を鍛える・脳トレ・脳の活性化の大人のためのドリル」は、ただ「言葉を丸暗記すること」だけのテキストです。これは、「ブローカー言語野・3分の1のゾーン」で「言葉」を「記号」としてだけ憶えることを合目的的にとりくませるものです。
すでに、みなさまにはよくお分りのとおり、「ブローカー言語野・3分の1のゾーン」は、側頭葉に位置しています。「触覚」の認知と認識を代行したり、代替えするという働き方をします。視覚の知覚神経の「X経路」が支配しています。「X経路」は、「見ている対象」に焦点を合わせる」「こまかいいりくみを分かる」「色や形象性を分かる」ということを記憶します。また、角度を変えて「X経路」で憶えた「言葉」はどのような行動をあらわすのか?ととらえてみると、「行動は止まっている」というものの考え方をつくり出します。「脳トレ」を評価するということは、「行動は止まってもよい」ということの肯定になるのです。「言葉を丸暗記する」という学習の仕方は、「X経路」を中心に「ブローカー言語野・3分の1のゾーン」しか働かないので、「カイゼン」(改善)とか「品質管理」の号令や指示、命令の言葉だけが強化されることになるのです。 |
日本の企業の中の「いじめ」の「上司の部下へのパワハラ」の意味すること |
日本でも最大級の企業の「トヨタ自動車」に典型される「日本の第三次産業の空洞化」とはどのようなものでしょうか。
日経新聞に、「産業カウンセラー」の調査報告が載っています。
- 企業で相談業務にかかわっている産業カウンセラーの「アンケート調査」がある。(日本産業カウンセラー協会・東京の調べ。平成20年11月におこなった。同協会のホームページをとおして実施した)。
- 「いじめ」と考えられる事例を見たり相談を受けたカウンセラーは80パーセントの354人。内訳は次のとおり。
1.パワハラ……78パーセント
2.人間関係の対立、悪化に起因したいじめ……59パーセント
3.仕事のミスにたいするいじめ……44パーセント
4.セクハラ……36パーセント
- 「いじめ」の形態は次のとおり。
1.ののしる、怒鳴る、威嚇する……68パーセント
2.無視する、仲間外れにする……54パーセント
3.嫌がらせ……50パーセント
(当事者間の関係は、「上司が部下におこなう」が85パーセントにのぼる)。
- 原康長・専務理事の話。
「子どものいじめが社会問題になっているが、大人社会はもっと陰湿といわざるをえない。企業は、まずいじめの実態を把握する努力が必要ではないか」。
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日本人の多くは「書き言葉」を知らない |
■ここにあげられているような日本の企業の中の「いじめ」は、「上司が部下をいじめる」(85パーセント)というところが、「日本の第三次産業の空洞化」をよくものがたります。
「ブローカー言語野・3分の1のゾーン」は「側頭葉・ウェルニッケ言語野・3分の1のゾーン」の「触覚」を中心に人間関係をつくります。
ここには、「話し言葉」と触覚の「意味」はあっても、「書き言葉」とその「意味」はありません。すると「企業で働いている人」はどんなに「仕事の最中の時」であっても「自分の行動(仕事)は終わっている」というイメージが「右脳・ブローカー言語野・3分の1のゾーン」に表象(ひょうしょう)します。すると、次のような「発言」が職場の中で出てくるでしょう。
「忘れました。聞いていません」「もっと、優しく、ていねいに指示してください。ちゃんと分かるように言わないと出来ないじゃないですか」
「仕事の成果とか、成績よりも、わたしなりに情熱をもってやったということをホメてください」
「わたしは、じぶんの気持ちが満足することはやります。満足しないと不安なので、やりません。それでもどうしてもやれというなら、あなたがやれば?と言います」。
これが、「X経路」のメタ言語の特性です。「上司」は、このような「部下」にたいしてやはり「X経路」のメタ言語で対応します。
「上司の自分が言うことは、そのままストレートに行動にあらわすべきだ」。(「右手」意識。擬似「親」の位置の発言です。血縁でつながっているという「メタ言語」が表象されます。大脳辺縁系の扁桃核(好き、嫌い)や、中隔核(トカゲの脳。目先の快感、利益の記憶か、破壊してバッド・イメージの快感の記憶を表象させる)の感情や欲求が「部下」との関係をつくっていることがよくお分りでしょう)。
「トヨタ自動車」が連係した東北大学と、ここの教授の「川島隆太」がおしすすめている「脳トレ」「脳の活性化」「脳を鍛える」ということをとおした「人間理解」とここからのアプローチとは、このような「社会参加の擬似知性」をつくることであったのです。アメリカの「第三次産業の金融システムのサーヴィス」を「外敵の襲来」のようにとらえることは容易ですが、日本の「第三次産業の空洞化状態」はもっと深刻な問題です。
では、なぜ、「トヨタ自動車」など日本の大企業は、「ブローカー言語野・3分の1」のゾーンで「言葉」を丸暗記したり、棒暗記することに同調してここに貴重な資本を投下するのでしょうか。
この問題について吉本隆明氏は、『共同幻想論』の中で「章」を設けて、次のように書いています。 |
『共同幻想論』(「憑人論」(ひょうじんろん) |
日本人は「行動停止」を表象してきている |
- 柳田(国男)の入眠幻覚がいつも、母体的なところ、始原的な心性に還るということである。
そこにみられる恐怖もいわば、母親から離れる恐怖、寂しさというものに媒介されている。
〈気質〉という概念をみとめる精神病理学の立場からすれば、柳田国男の入眠幻覚の性格は、ナルコレプシーのような類てんかん的心性として位置づけられる。
- ここで一様にあらわれるのは、せまくそしてつよい村落共同体のなかの関係意識の問題である。共同性の意識といいかえてもよい。村落のなかに起こっている事情は、嫁と姑のいさかいから、他人の家の「かまど」の奥まで、村民にとってはじぶんを知るように知られている。
そういうところでは、個々の村民の〈幻想〉は共同性としてしか疎外されない。個々の幻想は共同性の幻想に〈憑く〉のである。
- 『遠野物語』いくつかの〈憑人〉譚(たん)をかきとめている。しかし、どれも個体の入眠幻覚が、伝承的な共同幻想に憑くという位相で語られている。だから地上の利害を象徴するものとなっていない。地上の貧困を象徴するとしても。
- ここでは、娘の類てんかん的な異常は、遠野の村落の共同的な伝承にむすびついている。娘の遠感能力はこの日から永続的になったかもしれないが、けっしてじぶんでは統御はできない。
娘の〈憑き〉の能力をほんとうに統御するのは、遠野の村落の伝承的な共同幻想である。
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日本人は「話し言葉」だけで生きてきた |
■この『共同幻想論』の「憑人論」(ひょうじんろん)で説明されているものは、人間の「観念」の中につくられる「幻想」と「共同幻想」です。そして、日本人にだけに固有の「幻想」と「共同幻想」です。
「幻想」とは、「観念」のことですが、ただし、「言葉の意味」を「なになにしてはいけない」「なになにをせよ」というように「ルール化」(規制すること)と合意させられたときの「観念」のことをいいます。この「ルール化」(規制すること)は、「3人以上の人間」の間で合意されたとき、「共同」の「幻想」といいます。
「村落」ということは、必ずしも農業を営む社会のことだけをさしてはいません。日本の場合、たまたまそういう農業を中心とした社会生活の時期があった、ということにすぎません。
「憑く」とか「憑かれる」というのは、「伝承」といわれているとおり、「話し言葉」だけで行動に規制が加えられるとき、自分以外の別の人間の声や言葉が頭の中に響き渡る、ということです。
なぜか?というと、人間の行動は言葉の「意味」によって行動可能になるからです。「話し言葉」がやがて時代をへて「書き言葉」を生成するという脳の働き方をする地域(国)では、原則としてこのような「憑く」だの「憑かれる」といった「幻想」は生まれません。原則として、というのは、「話し言葉」が「書き言葉」を生成する脳の働き方を継承している地域(国)でも、「宗教の話し言葉」を自分の「話し言葉」として学習した人は、やはり、「なになにをしてはいけない」「なになにをせよ」という「言葉の意味」の「規制」の声が、自分の頭の中にどこからともなく響きわたってくるでしょう。
日本人は、漢字を輸入して「書き言葉」にしましたが、しかしそれは、海外から日本に渡ってきたごく一部の人々か、その人たちから教育を受けた特別な人々だけでした。このあたりの事情について、「社会言語学者の鈴木孝夫」はこう書いています。 |
日本人は「漢字」をなくすことを決めている |
- 日本の言語学者は、文字は記憶補助の手段にすぎないと考えている。文字は、言語にとって本質的なものではないと考えてきた。
- そこで、近い将来、「漢字」を全面的に廃止しようととりきめた。いずれ「漢字をなくす日」まで「当座の用を足すための、当用の漢字」を設定した。
- 日本人にとっての言語とは、「音声で意味を伝える」というものではなくて、「漢字の映像」という視覚的な要素が重要な一部になっている。
(「ラジオ型言語とテレビ型言語」『新潮45』2008・11月号より)。
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日本人の「話し言葉」には「言葉の意味」が無い |
■鈴木孝夫は、もともと「漢字」は中国でつくられていたが、その中国の「漢字」は、「意味」をもって、話し言葉として用いられていたとのべています。それが日本に入ってくると、日本の言葉は「音声」がシンプルであったために、いろんな漢字を「一つの読み方」にしてしまった、ということが語られています。「漢字」をまず憶えて、その次に「意味」は後から学習して憶える、というのが日本人の言語観であったと説明されています。
これは、今の日本人の場合も全く同じであることにお気づきでしょう。このことは、今の日本人は、『遠野物語』に出てくるような「話し言葉」の「村落共同体」の中で生きていることになるのです。
鈴木孝夫は、日本人の用いている日本語は、世界でも唯一「例外」的な存在で「話し言葉」(音声)で「意味」を伝えない「テレビ型言語である」と書いています。
「同音語(「化学」と「科学」のケース)というものは、唯一、日本語を例外として、互いの意味が全く無関係のときだけ、その存在を許される」(注・『同音衝突回避の原理』のこと。「音声は同じだが、『意味』は違う」ということを避ける法則のこと)(フランスの言語地理学者H・J・ジェリソンの指摘による)。
「世界の言語は、日本語のように、類似した文脈、混同される恐れのある説明の場面で、同音語が出てくることは、まず絶対にない」(鈴木孝夫)
この鈴木孝夫の指摘は、日本人の脳の働き方に置き換えてみることができます。「ブローカー言語野・3分の1のゾーン」で、「X経路」による「触覚の認知」を用いて「言葉を丸暗記している」ことはよくお分りのとおりです。
鈴木孝夫は、日本語以外の世界の言語は、「ラジオ型言語である」と説明しています。「話し言葉の音声に、言葉の『意味』が表現されて、伝えられる」ということです。このことは、吉本隆明氏が『共同幻想論』の中の「章」の『憑人論』(ひょうじんろん)でとらえている『遠野物語』の「村落共同体」の住人と同じように、『意味』を「ブローカー言語野・3分の2のゾーン」で「知っている人」(集合としての人物)が決めた「禁制」だけを自分の「行動」にむすびつけていることの証明になるのです。
これが「アジア型の共同幻想」の実体というものです。
「言葉の意味」(原義。「イメージスキーマ」・アメリカの認知言語学者のレイコフによる)とは、遠山啓(ひらく)が『水道方式』で具体化してみせた『タイル』に相当します。『水道方式』は、ポルソナーレも、幼児教育の現場で約20年間くらい実践してきています。当時は、ごく当り前の「幼児教育の方法」でした。 |
日本の企業の「上司」は自分の病気を「部下」に注入している |
日本人といえども、「ブローカー言語野・3分の2のゾーン」で『タイル』という「シェーマ」(schema)を中心にして、「タイル」イコール「数詞」イコール「現実の物」という「三者関係」を習得することは可能です。これは、「現実」の中に立ったとき、「現実」がどんなに「世界同時不況」であろうとも「行動停止」に陥ることはないということを意味ています。
日本人にとって「世界同時不況」とは、自らの「ブローカー言語野・3分の1のゾーン」の上に乗せている「ブローカー言語野・3分の2のゾーン」の「タイル」イコール「数詞・概念」イコール「現実の対象」という世界の需要に依存してきたという内省の問題になります。
「輸出主導型」のことです。
これによって日本国内の「製造業=第二次産業」を空洞化させてきました。投資してこなかったということです。
これは、「いじめ」のケーススタディに見るように、「企業」の中の「上司」は、「部下」と「仕事」を媒介にして、仕事の意味となる価値の構成の「利益」「品質」「信用」の言葉でコミュニケーションをおこなう必要の「人間理解」の「自己投資」の欠如にもとづきます。
「日本人は、明治以来、ローマ字礼賛を唱えつづけてきた。文字は、記憶の補助手段と考える言語学者、研究者が醸成(じょうせい)してきた」
「ローマ字は国際性があると彼ら(注・国際審議会や関連の教育審議会で取り上げたこと)は考えて、実行に移した。たいした混乱や反対もなかった。誰もが賛成した」
「近い将来、漢字を廃止することを決めた。そこで、当座の用を満たすためにという限定した目的で、『当用の漢字』(当用漢字)を設定した」(鈴木孝夫)
これが、日本人にとっての「人間理解のための投資不在」の背景です。日本人が『遠野物語』に出てくる「村落共同体」の中の「言葉の意味」をもつ人間を「アジア的専制デスポット」として恐れ、しかし従属の喜びを感じて、同時に「類てんかんという精神病理」(吉本隆明氏『憑人論』の中の「禁制」の幻聴や幻覚のこと)を今もなお抱えていることの論理実証の根拠になるのです。 |
日本人の「親」の病理はアルツハイマー病型 |
これは、日本人の「引きこもり」「ニート」「不登校」を産出する根拠にもなるでしょう。「子ども」をもつ「親」が「タイル」(言葉の意味の原義に相当)イコール「数詞」(書き言葉の概念)イコール「学校」や「仕事」の現実、という「三者関係」を学習していないことが内容です。親と子の「血縁」の関係をとおして、「見る」「見られる」という「X経路」の「行動完結」を表象させる「記号性の話し言葉」だけで「脳が働く」ように育てられています。そのような「親」とは、どのような「脳の働き方」(行動停止をメタ言語とするX経路の表象)を「類てんかん」(吉本隆明氏)としてあらわしているのでしょうか。
「年をとると、誰にも物忘れが起こる。人の名前が思い出せないだけなら、加齢による記憶力の低下が原因の可能性もあるが、食事したことすら忘れるという数分前の出来事も覚えていない人は、アルツハイマー病の疑いもある」
「兵庫県に住む80代の女性。夫と二人暮らし。昔からキレイ好きだった。だが、家の中は散らかり放題で、物忘れもひどい。得意だった料理もうまく作れない。帰省した娘が、異変だ!と気づく。だが、自分はどこも悪くないと言い張る。近くの病院(神戸大学付属病院・物忘れ外来)に連れていくと、アルツハイマー病と診断された」
「アルツハイマー病と診断されるケースは、①同じことを何度も言ったり、聞く。②沈黙する、返事をしない。ものの名前が言えない。③置き忘れ、しまい忘れが目立つ。④以前にはあった知的関心や知的な意欲がなくなった。⑤勉強などの日課をしなくなった。⑥時間、場所の知覚の感覚がハッキリしなくなった、などだ」
「最近は、軽度認知障害という症状に注目されている。アルツハイマー病になる可能性があるというものだ。測定の診断方法は次のとおりだ。
- 時間についての質問…「今日は何年?」「今は何の季節?」 「今日は何曜日?」など。
- 場所についての質問…「ここは、何病院?」「ここは何病棟の何科?」「ここは何市、何町の何区?」
- これから三つの言葉を言う。三つとも憶えられるか?…「サル」「飛行機」「黄色いウサギ」、など。
- 100から順に、「7」を引いた数を言ってください。
- 物を見せる。「これは何ですか?」と問う…「インドリンゴ」「シシャモ」「ブルーベリー」など。
- 「次の指示に従って、同じようにやってください」と言う…「右目を閉じる」「左目を閉じて開ける」など。
- 「何か、文章を書いてください」
- 「これから、短い文章を言います。同じように言ってください」…「ちりも積もれば山となる」など。」
(日経・2008・2月10日『健康』欄より)
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アジア型共同幻想がつくる「うつ病」は「眠り」に陥る |
■ここでいわれている「アルツハイマー病」や「認知機能障害」とは、「認識の能力」のトラブルというべきものです。目で見たり、耳で聞く、人と対応するということが「認知」です。質問や問いかけは成立しているので、「五官覚」を中心とする「認知」は成り立っています。
しかし、「左脳」のブローカー言語野の「認識」が欠落しています。理由は、「Y経路」の認知や認識によって、「言葉」の「意味」が記憶されていないので、「自分ひとりの力」では、「現実」と関わりをもつことができないのです。
『遠野物語』に出てくる「アジア型の共同幻想」では、「入眠状態」とか「ナルコレプシー」(てんかん状態(うつ病のこと)に陥って眠りこんでしまう状態)が起こると書かれています。「行動」を起こすようにと「指示する人」がいなくなると「自分の行動は終わっている」という表象が起こり、という安心とともに、「眠り」が生じます。この「眠り」をさして、「アルツハイマー病」といい、「認知機能障害」といっています。
「引きこもり」「ニート」「不登校」も全く同じ「脳の働き方」で起こっています。「職場」で「部下」に「パワーセクハラ」でいじめる「親」が、自分の子どもに「号令」や「命令」「指示」の言葉のみを向けた結果、「親自身」は、「アルツハイマー病」や「認知機能障害」に陥っているのです。 |
ポスト世界同時不況の史上最強の知性の「学習モデル」 |
日本は、ポスト「世界同時不況」として、まず「第三次産業」から立て直す必要があることがよくお分りでしょう。
日本にとって「世界同時不況」とは、輸出依存(第二次産業の空洞化)が当面のテーマになっています。
アメリカをはじめ、EUは、実需を中心に経済の立て直しにかかっていますから、「輸出依存」の道は「いつかきた道」をたどることになります。日本にとっても、「いかに実需を創出するか?」がテーマになるでしょう。そのためには、「言葉の意味を分かる」という「第三次産業」の確立が不可欠です。それは、次のような「言葉の意味の学習」がモデルになります。 |
エクササイズ
事例・Ⅰ |
- 「以心伝心」(いしんでんしん)
(故事・ことわざ。概念。数の数詞に当る)
- 意味(『タイル』に相当する)(注・「三者関係」の基準。ブローカー言語野・3分の2のゾーンに表象する)
「心をもって、心を伝えること」をいう。
言葉では説明できない深遠、微妙なことを、相手の心に訴えて伝えることをいう。
もともとの語源は「仏教用語」である。
ある日、釈迦(しゃか)が弟子をあつめて、ただ、蓮(はす)の花を示した。
弟子たちは、何のことか分からずポカンとした。ひとり釈葉(しゃば)のみがにっこりして答えたという。
このことをもって「禅」(ぜん)の起源となった。この「以心伝心」がポピュラーになったと伝えられる。
■設問
「以心伝心」の用例として適切なものはどれですか?
■用例
- 恋人どうしは、「以心伝心」の関係になったときが完成形だ。
女性が、男性の表情を見て、「あっ、食事に行きましょうね」と言えるようになれば、互いの関係はうまくいくからだ。
- 会社の上司と部下の関係は、「以心伝心」の関係が望ましい。
いちいち指示しなくても、上司の考えが部下に伝わり、会議の時間が節約できるからだ。
- 母親の子育ては「以心伝心」が理想的だ。子どもは、母親の表情、顔色を見て、母親の気持ちが分かって安心するからだ。「以心伝心型」の新しい「愛着」というものだ。
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事例・Ⅱ |
- 暗中模索(あんちゅうもさく)
(ことわざ、故事。概念、数の数詞に相当する)
- 意味(『タイル』に相当する)
真っ暗な闇(やみ)の中で、何が何だか分からなくなり、手さぐりをして何かをつかもうとしている状態のこと。
「今の世界同時不況の中で、仕事は、どこから手をつけていいか全く暗中模索だよ」と用いる。もともとは、中国の唐(から)の時代から使われていた。最初は「暗闇の中でも、手さぐりをしてみれば、すぐに分かる」という意味だった。日本に伝わって、正反対の意になった。
『隋唐佳話』(ずいとうかわ)に、許敬宗(きょけいそう)という人がいた。「おれのようなあわて者だって、曽植(そうしょく)や謝霊運(しゃれいうん)(当時の有名人)と出会えば、暗中模索したってすぐに分かるよ」と話したとされている。これが、日本に伝わるとなぜか、正反対の意味になった。
当時の日本人は、言葉の学習の仕方を暗中模索していたからだと伝えられる。
■設問
「暗中模索」の用例として適切なものは、どれですか?
■用例
- 元・タレントの飯島愛さんは、恋人探しに暗中模索して、「あー、ガンダムSEEDのアスラン様が好きだ。アスラン様に怒られたい」と「ウェブカレ」にはまりこんで、孤立感を深めて生きることに失望したようだ。
- 元・タレントの飯島愛さんは、「うつ」「円形脱毛症」をブログで公開している。タレントを辞めて、社会参加の仕方を暗中模索していたようだ。
- 元・タレントの飯島愛さん(36歳)は、ノイローゼで抗うつ剤を処方されていた。「凹(へこ)みました」と話していた。
タレント復活がうまくいかなくて、復活の道を暗中模索していたようだ。
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事例・Ⅲ |
- 「画竜点睛」(がりょうてんせい)(故事・ことわざ)
- 意味(『タイル』に相当する)最後の仕上げをすることを「画竜点睛」(がりょうてんせい)という。
九分どおり出来上っているのに大事な一点が不足している場合を「画竜点睛を欠く」という。
中国の南北朝時代、有名な画人がいた。彼は、安楽寺という寺から「竜の壁画」を頼まれた。いかにも昇天しそうな竜を描いた。しかし、睛(ひとみ)が入っていない。なぜか?と問われた。
「睛(ひとみ)を入れれば、この竜は天に昇ってしまうだろう」と言った。「そんなことはないでしょう」と文句を言われた。睛(ひとみ)を入れてくれとせがまれた。
しぶしぶ睛(ひとみ)を描き入れた。すると竜は、たちまち天に昇って行ってしまった。
ここから、ワンポイントで完成度が増すことを「画竜点睛」というようになった。
■設問
「画竜点睛」(がりょうてんせい)の用例として適切なものはどれですか?
■用例
- 引きこもりの子どもをもつ親は、子育ての「画竜点睛」を欠く。
- 道路で「財布」を拾った人がいる。彼は、その財布を交番に届けた。彼の行動は「画竜点睛」だ。
- 下山芳晴判事は、部下の女性職員が別の男性と交際を始めたのでストーカー行為をして罷免(ひめん)判決を受けた。下山芳晴判事は、「元どおり、私と付き合ってください」と発言する「画竜点睛」を欠いた。
正解
事例・Ⅰ…(2)
事例・Ⅱ…(1)(2)
事例・Ⅲ…(1) |
「仕事」の中での活用法を教えます |
■「ブローカー言語野・3分の2のゾーン」で言葉を憶える学習のモデルをご紹介しました。
このモデルにしたがって、「仕事の中の言葉」の「意味」(原義)を調べて、仕事の具体的な場面をいくつか想定してください。この想定した具体的な場面の中の言葉を用いて、「短い文章」を書いてみましょう。最低、三つくらいの用例が望ましいといえます。仕事の上司や、同僚の人に「短い文章」を聞いてもらい、チェックしてもらうと表現力が増します。毎日、少しの時間を用いて実践してみましょう。するとこの「世界同時不況」の中で、高く評価される投資の能力が身につくように脳の働き方がイノベーションされつづけることが期待できます。 |