全日本カウンセラー協会 ポルソナーレ


《 谷川うさ子さんのお役立ちカウンセリング 》

「コルサコフ健忘症とピック病という
脳の働きの記憶障害について」 4


 みなさま、こんにちは。ポルソナーレの谷川うさ子さんです。ポルソナーレがカウンセリングの現場とカウンセリング・ゼミをとおして明らかにした最新の日本人の心身の病理は、男性のコルサコフ健忘症、女性のピック病です。

 いずれも脳の働き方と言語理論をふまえて理解しなければ説明できないものですが、まちがいなく「男性はコルサコフ健忘症」、「女性はピック病」のゾーンで病理症状をあらわしています。

 この二つの病理の特徴は、どちらも「主観」でものごとを考え、そして行動するということです。具体的には、一人称で書いた小説にその「主観」をよく見ることができます。
 綿矢りさの『蹴りたい背中』(芥川賞受賞)や朝井リョウの『何者』(直木賞受賞)です。
 日本語は已然未然を文法の柱にしているために「一人称」とその「主観」を当然としていて、誰もが日常的に話したり、書いたり、考えたりしているので、今では「主観」と「客観」の区別もつかなくなっています。「主観とは何か」「客観とは何か?」と問われて正確に答えられる人はいてもごくごくわずかの人でしょう。

 日本人の心身の病気は、その根本の原因は?というと、この「主観って何?」「客観って何?」ということが正確に説明できないところにあります。そして、「綿矢りさ」や「朝井リョウ」の小説に見るように、日常生活の中で「主観のしゃべり方」だけを病的なくらいに追求して、磨きをかけていることが、さまざまな心・精神の病気を深刻にしています。

 日本人の使う日本語による「主観」をよくあらわすのは「言葉癖」といわれるジャルゴン失語症(ちんぷんかんぷん語)です。
 朝井リョウの『何者』にはこのジャルゴンがひんぱんに出てきます。「ていうか」「みたいな」「とか」「みたいな感じ」「つーか」(というか)「…し」「なんか」などです。

 ジャルゴンは、よくしゃべるけど、しかし意味不明で、何が説明されているのかよく分からないという「失語症」です。朝井リョウの『何者』は失語症の会話でストーリーが構成されているので、場面とか状況とか、プロットの脈絡が非常に分かりにくい話になっています。

 このような意味不明の言葉を話す本人はいいとしても子どもをもつ母親ないし父親が子どもに話すとその子どもの人生は、始まる前から終わっているという悲惨なことになっているケースもあります。
 日本人の心身の病理は、年を追うごとにすさまじく、悪化しています。それが長くつづいていて、自分の病理にも、家族の病気にも、もちろん他者の病気にも関心をもたなくなっているというのが、病気の深刻さをあらわしています。
うさ子
谷川うさ子さん

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