事例・1
- 「気の毒」(概念)(数称に相当する)。
- 意味(「タイル」に相当する)
他人の突然の苦痛や辛い状態に対する同情をあらわす言葉。
もともとは、自分の心が痛むことや当惑する意味で用いられていた。「気の毒」は「気の薬」がルーツになっている。
「気の薬」とは、精神衛生上、有利になることをいう。
「喰(く)ふよりも気の薬かな鹿の声」という句がある。ここから精神衛生上よくないことを「気の毒」というようになった。
もともとは自分自身への言葉だったものが、「他人の困りごと」も「自分の心を痛める」ということから「他人への同情」をあらわすようになった。「同情」とは、他人の苦悩を自分の苦悩であるかのように感じ取ることである。思いやり、あわれみともいう。
- 意味の展開(数(かず)の実物に相当する)。
(認識)
次の「意味の展開」の例の中には、間違っているものがあります。どれでしょうか?
- 元福田首相は、自分が立ち上げた「社会保障会議」の中で、「わたし、辞職することになりましてね」と言い、うつむいて、ふふっとひとり笑いした。
首相を辞めるとは、気の毒だ。
- 「特別養護老人ホーム」(特養)の介護現場の人手不足が深刻化している。あるヘルパー女性(36歳)は、夜勤の時は一人で40人をみるという。「いつでも辞めたい」と言っている。この苛酷な労働状況は、なんとも気の毒だ。
(認識)
正しい「意味の展開」に習ってあなたも「気の毒」の意味を表現してください。
◎あなたの表現
(レクチャア)
ブローカー言語野の「3分の2」のゾーンは、「意味」を学習して憶えることができます。学習の仕方は、「概念」(数称に相当)と「意味」(タイルに相当)と「実物」(状況や場面)の三つを、「三者関係」として「対応させること」です。
遠山啓(ひらく)はこの「対応の仕方」を「推移律」といっています。「推移律」とは、
A=B
B=C
ならば
A=C
のことです。この「推移律」ということのしくみを目で見て確かめます。
「気の毒」という言葉は、「精神的な苦悩のことだ」という情景を想像しましょう。もともとは、自分自身の心の苦悩をさす言葉だった、ということです。これは、「自分の心の苦悩」とその具体的な状況や場面を思い浮べることができる、ということです。
これにより、「気の毒」という言葉とその「意味」の「二者関係」が記憶されます。次に、「意味の展開」では、「自分自身の心の苦悩」の場面や状況と同じ位置に立っている「他者」を思い浮べます。
もし、「自分」が、「ひとりで苛酷な労働の現場をになった体験」があって、「いつでも辞めたい気持ちと背中合わせ」という意識をもったことがあれば、?の「ホームヘルパー」のニュースは「気の毒」に思えるでしょう。これは遠山啓(ひらく)の教える「水道方式」の「三者関係」が、「推移律」のメカニズムによって記憶されたことになるのです。
ブローカー言語野の「3分の2」のゾーンは、頭頂葉の野(や)に入りこんで位置しています。頭頂葉は、「空間性」を記憶する中枢神経の分布域です。「空間性」とは、「距離」「角度」「方向」の意識のことです。このような「具体的な言葉」にむすびつく人間の意識のことを「メタ言語」といいます。「メタ言語」とは、分かりやすくいうと、「入眠状態」の「行動」のことです。あなたも真夜中にトイレに起きたことがおありでしょう。
ぐっすり眠っている状態を「睡眠状態」といいます。
「あ、もうこんな時刻だ。起きなくっちゃ」と目が覚めたときは「覚醒状態」です。「入眠状態」とは、「眠っているのではない、しかし起きているのでもない」という状態の意識のことです。このときの「行動」は言葉による思考ではなくて、五官覚(眼、耳、皮ふ、味覚、嗅覚)の知覚の刺激を中心に「記憶を思い浮べている」(表象・ひょうしょう)ということによって成り立っています。ここでは、「トイレまで何歩の距離かな」「トイレまでの方向はどっちかな」「トイレに行くまでにはどこで曲がって進むのかな」という距離、角度、方向が「右脳・ブローカー言語野の3分の2のゾーン」に思い浮びます。このように、遠く離れている対象を分かるのが「ブローカー言語野」の「3分の2」のゾーンでの学習と記憶です。頭頂葉の記憶の中枢神経が「認知」と「認識」に関わっていることがよくお分りでしょう。
事例・2
- 「すみません」(概念)(数称に相当する)
- 意味(「タイル」に相当する)
辞書には「謝罪」と「感謝」の両方の意味をあらわす「あいさつ語」と書かれている。
しかし、もともとは「謝罪」の意味がルーツになっている。
江戸時代の歌舞伎狂言『毛抜』(けぬき)では、「それではお上にすみそもない」と語られている。「いいわけをしても心がすまない」(自分の気持ちがすっきりしない、晴々しない)という意味で使われている。「すまない」は、「澄む」(すむ)の打ち消しの言葉である。
「心が澄みきらない、晴々しない」という意味だ。
この「すまない」を、ていねいに言うのが「すみません」である。現在のように、「すみません」に「感謝」の意も含むようになったのは、「終戦後」あたりからではないかといわれている。
最初は、「お礼を言ったくらいでは、気持ちがスッキリしないよ」という意味で使われたのではないかと思われる。
- 意味の展開(数(かず)の実物に相当する)
(認識)
次の「意味の展開」の例の中には、間違っているものがあります。どれでしょうか?
- 「社会保険庁」で「厚生年金」の算定基準の標準報酬月額(月給水準)の「改ざん」が報道された。そこで、同庁に問い合わせた。「すみません、私は厚生年金をもらえるかどうか知りたいのですが」。
- 新幹線の「座席指定」の席に座っていると、「そこは私の席ですが」と言われた。確かめてみると違っている。「すみません、間違えたようです」と言った。
(認識)
正しい「意味の展開」に習って、あなたも「すみません」の意味を表現してください。
◎あなたの表現
(レクチャア)
ブローカー言語野の「3分の2」のゾーンは「Y経路」が中心になって支配しています。「Y経路」とは、眼の「視覚の知覚神経」のことです。「自律神経」の交感神経のことでもあります。「Y経路」は、色やこまかい線や形象性は認知しません。「ものごとの動きのパターン」を認知します。
ブローカー言語野の「3分の1」のゾーンは、「X経路」が支配しています。「X経路」は「ものごと」に焦点を合わせる、色や形象性を認知する、というメカニズムをもっています。
この二つの視覚の知覚神経が「学習」と「記憶」にかかわります。
「Y経路」は自分の身体に直接にむすびつかない対象について記憶します。
すると、ブローカー言語野の「3分の2」のゾーンだけが、「言葉の意味」を学習して憶えることが可能であることがお分りでしょう。なぜ、「言葉の意味」の学習が重要なのかというと、人間は、「言葉の意味」によって、独力で、未来に向かって「行動する」からです。このことの根拠は、「Y経路」の「パターン認知」が「推移律」(空間性の中の離れている物どうしの三者関係の認知と認識)の記憶を可能にすることで明らかです。
ブローカー言語野の「3分の2」のゾーンを働かせる学習法のエクササイズは、子どもだけでなく、大人にも役に立つ学習法です。お仕事、生活、人間関係、学校の勉強の中の「言葉」を採り上げてお試しになってください。 |